ナゾ1.わずか2時間後の「背後関係なし」 

中国・北京で26日午後、爆発が起きた。

しかも、その場所はアメリカ大使館前の路上だ。

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白煙が上がる映像はすぐさまネットに掲載され、テロの疑いもあったことからニュースは瞬く間に世界中に伝わった。

地元警察は内モンゴル自治区出身の26歳の男を、爆竹のような爆発物を爆発させた疑いで、現場で身柄拘束したことを明らかにした。

男は手にけがをし、現場には血痕(上の写真)が残っていた。
また目撃者によると男は全身真っ黒になっていたという。

しかし命に別条はなく、この26歳の男のほかにけが人はいなかった。

現場は日本大使館を含む各国の大使館が集まる地域で、アメリカ大使館前はいつもビザ申請の人たちで長蛇の列が出来ており、事件当時、周囲は一時騒然とした。

中国外務省は、発生からわずか2
時間後の記者会見で「背後関係のない治安事件だ」と述べ、組織的背景はないとの見方を強調した。

確かに事件後の警備状況などを見ると、すぐにほぼ普段通りの様子に戻ったことから、当局が関連した次のテロ事件を警戒している様子はない。

しかし、肝心の男の動機が不明だ。

ビザ発給を巡る不満という説や、米中貿易戦争をめぐるアメリカへの反発などさまざまな臆測を呼んでいる。

中国では、このような事件で容疑者の供述が明らかになることはほとんどない。また、国内メディアも発生の一報は伝えるものの、動機や背景を伝える報道はほぼ皆無だ。
つまり、わずか2時間後に「背後関係はない」と断言できる根拠が全く分からないのだ。


ナゾ2.相次ぐ「精神トラブル男」の爆発事件

地元警察のその後の発表によれば、男は2年ほど前から、幻聴幻覚などの症状で入院歴があり、精神的なトラブルを抱えていたという。

爆発といえば、去年、江蘇省の幼稚園前で、園児と迎えの親が多数死傷した事件が世の中に衝撃を与えた。

地元当局が容疑者として断定した22歳の男子学生は現場で爆死した。
この事件でも動機は不明だが、当局の発表によれば男子学生は精神的なトラブルから学校を休学し、自宅の壁には「死」などの文字が書かれていたという。

「精神的トラブルを抱えた男」による爆発事件が相次いでいるのは単なる偶然だろうか?


共産党一党独裁を掲げる中国ではデモや抗議活動ですら即座に取締の対象となり、当局は体制への不満を動機とした犯罪に神経を尖らせている。犯行の動機が明らかになることで、それに呼応するような新たな事件の発生を恐れているようにも見える。

「精神的トラブルを抱えた男」による犯行であることを強調することで、事件の“矮小化”を図っているのではないかとすら疑ってしまう。

ナゾ3.周到すぎる「巨大爆竹」

また、現場で回収された爆発物に関しても疑問が残る。

地元警察は、現場からライター、爆竹の燃えかす、直径3.5センチ×長さ19.5センチの爆竹3本を回収したことを明らかにした。

一般的に中国の爆竹は日本でイメージされるものよりもだいぶ大きいが、こんなに大きいものは少なくとも北京では入手困難だ。

中国では、爆竹や花火の販売は厳格に管理されている。北京では基本的には春節前の限られた時期に、指定された専門店でしか購入できない。

また列車や飛行機で都市間の移動をする場合は、手荷物検査があるため、地方から爆発物を持ち運ぶのも難しい。

つまり、爆竹と言っても、簡単に用意出来るような代物ではなく、北京中心部への持ち込みが簡単でないことを考えると、強い計画性すら伺わせるのだ。

アメリカ大使館前は平静さを取り戻していた

しかし、中国では日本のように自由な取材は許されず、警察発表の検証取材はほぼ不可能。

我々のインタビューに応じていた目撃者の女性ですら、目の前で警察官に車に引きずり込まれ連行されていった。記事冒頭のもみくちゃにされた女性の写真は、その様子をとらえたものだ。

体制維持のためには公然と行われる情報統制。
このため、中国人でも、政府の「公式発表」をそのまま信じる人はほとんどいない。
中国メディアも勝手な報道は許されないため、こうした社会問題の真相を知るのは非常にハードルが高いのが現状だ。