じりじりと暑さが続く日本列島。
毎日通勤ラッシュにもまれ、日差しにさらされ…会社に着くころにはすでにヘトヘト。昼食後にはついウトウト…なんて人も多いのではないだろうか。

そんな中、日本電気株式会社(NEC)とダイキン工業株式会社が、空調を活用して眠気を抑える新技術について発表した。

眠気スッキリには「気温を下げる」がベスト

今回、2社による共同実験で明らかになったのは「オフィスなどの執務空間での知的生産性向上には、空調による温度刺激が特に効果的」ということ。
つまり、ウトウトしかけた時に室温が変化すれば眠気スッキリ、仕事の能率がアップする、というのだ。

2社が実験したのは、27度の部屋で2ケタの足し算(暗算)をし続ける被験者に、実験開始10分時点から

(1)気温を3度下げる「気温の刺激」

(2)明るさを上げる「照明の刺激」

(3)覚醒作用のあるローズマリーのアロマを噴霧する「匂いの刺激」


を与え、覚醒度(眠気からの目覚め度合)の変化を調べるというもの。

この実験の結果、照明や匂いの刺激に比べ、一時的に部屋の温度を下げるのが、眠気を覚ますのに効果的かつ持続性があるということがわかったのだ。

暖かい部屋にいるとついウトウトしてしまったり、眠い時に冷たい風にあたると頭がスッキリした、という経験はないだろうか。
実は、そういった感覚は誰もが経験で知っていても、そのメカニズムは解明されておらず、快適性を保ちながら効果的に眠気を解消する方法は明らかになっていなかったのだという。

では、この結果を何に生かせるのか?
NECとダイキンは「まぶたの開度から眠気の兆しを検知して、空調・照明を組み合わせた刺激を与える制御システム」を作ったという。
つまり、居眠りしそうな人をカメラで発見したら、自動で室温を下げたり、照明を明るくしたりしてくれるシステムということらしいのだが…

ひとりがウトウトしたら、連帯責任のようにオフィス全体が冷えてしまう?
そもそもどうやって「眠そうな人」を発見するのだろうか?NECによると、実験にも用いられたカメラは「まぶたの揺らぎ」を感知するのだというが、気になるシステムについて、まずはNECの担当者にお話を伺った。

"眠くなりはじめ"に警告!

――「まぶたの揺らぎ」とは?

左右のまぶたの動きのばらつき(差)が大きい点と、まぶたが開いている状態での開き度合の時間変化が大きい点、の2点を特徴としています。


――ちょっと目を閉じただけで反応したりはしない?

「少しの間」が数秒を想定されているとしますと、それだけでは「眠気を感じている」とは判断できません。
現状は1分間のまぶたの動きを見て覚醒度を推定しています。その覚醒度がどのように時間変化した時にどう刺激を与えると、快適性と適切な覚醒度の両方を保てるのか、についてさらに検証を進める予定です。


――眠ってしまった人を起こすシステムも?

眠っている人や眠気を強く感じている人に対して強い温度刺激を与えて無理に起こすシステムは想定していません。強い眠気を感じている人はパワーナップ(短時間の仮眠)を取る方がその後は適切な覚醒度を保てると考えています。
今回のシステムは上述の通り、あくまでも生産性向上を目的とした空間づくりを主眼に置いています。快適性を保つという条件を満たしつつ、眠気の兆しを検出した時に刺激を与えることで適切な覚醒度を保てるシステムの開発を目指しています。



今まで、覚醒度の推定は「まばたきの回数」「目を閉じている時間」を基準にしていたが、まばたきと同精度で眠気を感知でき、かつ動きの遅い「まぶたの重さに耐える動き」を基準にしたという。
その結果、高速の画像処理がいらなくなり、比較的低スペックなコンピュータでも覚醒度がわかるのだという。

パソコンに取り付けた小型カメラが目の動きを感知してエアコンと連動(画像はイメージ)

ネット上では「無理に起こすより仮眠を取った方が…」という声も挙がっていたが、それについてはNECも否定していない。
あくまで"眠くなりはじめ"の時点で室温をコントロールすることで、いかに不快感を覚えずスッキリできるか、ということを重視しているのだ。
続いて、ダイキンの担当者にも聞いてみた。

個人"狙い撃ち"も検討中

――眠気を感知して室温を下げたら、ずっとそのまま?寒くなりすぎてしまうことは?

下げた室温は数分で元に戻します。
たとえば27度の室温で眠気を感知したら、数分間24度に下げたのち、また27度に戻します。
元の室温に戻して再度眠気を感知したら、もう一度室温を下げる、と繰り返し刺激を与えるのが、快適性を損なうことなく、効果的です。


――眠気を感じた人にピンポイントで冷たい空気を当てないと、周りに迷惑なのでは…

個人に冷風を当てるシステムも研究・検討しています。
また、1人ずつでなく、たとえば6人程度のグループ内で数人が眠気を感じている、となった時に室温を下げるなど、現在様々なパターンを検討中です。


――実用化はいつごろ?どんな実験を重ねていく?

2020年をめどにしています。今回の発表は、2016年から続けている研究の途中経過といったもので、現在も研究開発を続けています。
たとえば、今回の実験では眠くなりやすい作業として被験者は暗算をしましたが、7月からは事務作業をするなどのよりオフィスでの環境に近い実験も行っています。


この"居眠り監視システム"、ネット上では「冷風で眠気が飛ぶならありがたい」「ずっと監視されているのは嫌だ」と様々な意見が飛び交っているが、「自動車には必要かも」といった、交通事故防止に役立ちそうなアイデアも挙がるなどしている。

自動で頭をスッキリさせてくれる、ついウトウトしてしまいがちな人にはありがたい新技術。
仕事の効率アップのため「お昼寝タイム」を導入する会社もあるが、そういった習慣のないオフィスでは大活躍するかもしれない。