静岡市の桜ヶ丘病院が移転問題に揺れています。

市役所清水庁舎の駐車場への移転が有力ですが、病院側は移転に医師不足の解消という条件をつけました。院長が描く桜ヶ丘病院の形、そして清水区の医療構想とは?

◆老朽化ー新任の院長も愕然「昭和40年頃の病院ですよ」

静岡市清水区の桜ヶ丘病院。

内科や整形外科など8つの診療科があり、入院や手術が必要な患者を受け入れる「二次救急」病院です。

しかし、今年4月に赴任した内野直樹院長は病院の中を見て愕然としました。

桜ヶ丘病院・内野直樹院長「廊下がせまい、せまい廊下を待合室に使っている。真ん中をストレッチャーが通らない。病室もせまい、エアコンが24時間稼働しない、トイレが汚い、水回りが悪い。これは昭和40年頃の病院ですよ」

築60年を超え、老朽化が深刻。

一部の建物は、現在の耐震基準を満たしていません。

◆移転 しかし、移転先は・・・

JCHO・尾身茂理事長「我々の病院は地域のための病院で、JCHOのための病院ではないです。地域のニーズがどこにあるか。選んだ理由はたくさんの地域住民に利用をしてもらいたい」

病院を運営する「JCHO」は2017年、清水庁舎の跡地などを購入して移転することを決めました。

しかしここに来て、新型コロナの影響で市が庁舎の移転を凍結。

杉村祐太朗記者「庁舎から道路を挟んで北に40メートルほど進んだ、こちらの第3駐車場も今回市が新たに提案しました」

代わりに、庁舎の3つの駐車場を新たな移転先として提案しました。

静岡市・田辺信宏市長「市民にとって最良の結果を導き出すために、熱意をもってJCHOと対話をしていきたい。”桜ヶ丘病院を静岡市内に存続をさせる”、ここが最大の目的」

市が病院の存続を強く希望する理由。

清水区では、人口に占める高齢者の割合が3人に1人となっています。

現在清水区には3つの総合病院があり、桜ヶ丘病院はベッド数で2番目に大きな病院ですが、清水区の夜間や休日の内科の救急の7割の日数を受け持っています。

周辺の住民は・・・

地域住民「すぐに行けて治療してもらえるのはすごくありがたい」

別の地域住民「3つ、体の不安がある人が3カ所いくのは大変なこと。1つの総合病院の中で健康を見守ってもらうのは大切なこと」

◆「医師不足の解消」が条件

病院側も早期に実現できる駐車場への移転に理解を示していますが、条件を示しました。

桜ヶ丘病院・内野直樹院長「内科医を最低3人確保できない限りは、たぶん建て替えはしません。できないと思います」

桜ヶ丘病院の常勤医師は現在8人。

患者が最も多い内科でも2人しかいません。

医療法の規則では、桜ヶ丘病院の規模では15人程度の常勤医師がいる必要があり、病院は非常勤の医師で補っている状態です。

医師不足の現状について、県の医療アドバイザーである小林さんは・・・

地域医療構想アドバイザー・小林利彦さん「葵区に圧倒的に医療資源が集中している。人口当たりのベッド数、医師数は(清水区は)圧倒的に少ないです」

人口10万人当たりの医師とベッドの数です。

葵区 :ベッド数1723床・医師429人

清水区:ベッド数 705床・医師135人

医師は、清水区は葵区の3分の1、ベッドの数も半分以下です。

地域医療構想アドバイザー・小林利彦さん「葵区に固まっているものを清水区に分散・スライドできるのか。どのようにすれば市内で解決できるのかを考えて、それでも厳しければ県がリーダーシップを発揮すべき」

◆地域での連携も必要

近隣の市立清水病院、清水厚生病院との連携も必要。

そう訴えるのは、桜ヶ丘病院の内野院長です。

桜ヶ丘病院・内野直樹院長「連携というのは”すみ分け”。たとえばAは何をやる、Bは何をやる、Cは何をやる。”すみ分け”をするから人的資源をつぎ込むことができる、医療機器も。”すみ分け”さえしていけば、もっと救急体制は良くなると思います。経営統合して一括運営していけば、”すみ分け”がすごく簡単にできます。究極、清水区の医療を立て直すのなら、そこまでもっていかないと立て直せないだろうと思っています」

◆再編統合の検証で名前も

国は去年、公立病院や公的病院のうち、診療実績が類似し所在地が近いなどとして、再編統合の検証を必要とする病院名を公表。

清水区では桜ヶ丘病院と清水厚生病院が指定されました。

病院の移転問題が映し出す地域医療の現状。

「あすの医療のため、いま何をすべきか」、それぞれの立場で知恵と決断が求められています。

<内野院長が提案する「寄付講座」>

どうしたら医師が確保できるのか。

内野院長が静岡市に提案しているのが大学の医学部に資金を提供して講座を開設し、代わりに医師を派遣してもらう「寄付講座」の開設です。

しかし、県のアドバイザーの小林さんは「寄付講座は1講座あたり2000万~3000万の費用がかかる上、大学側も人員不足で医師の派遣には限度がある」としています。

一方、住民が懸念している津波浸水想定区域への移転について、内野院長は「JCHOはこれまでも津波浸水想定区域に病院を建てている。設計・建築会社があの場所は厳しいと言ったら従うが、建て方など工夫すれば大丈夫だろう」としています。

ただ、「医師が確保できないという最悪の想定になった場合、病院の建て替えそのものを白紙に戻して検討しなおす」と田辺市長に早期の決断を迫っています。