7月27日、群馬県高崎市が新たにインスタグラムアカウントとウェブサイトをオープンした。
その名も「#インスタグンマー高崎」

若者を中心に世界中で大人気の画像投稿SNS、インスタグラムで注目されるのは、見た人が自分も体験したいと思うような見栄えのするスポットやグルメなど…いわゆる「インスタ映え」する写真だ。

しかし、「ウチにもあるよ!ふぉとじぇにっくが」というキャッチコピーを掲げる「#インスタグンマー高崎」が投稿するのは、どこにでもありそうな“映えない”風景ばかり。
覗いてみると、お店のような民家のような建物や看板、ダンディなスーツ姿の男性、高崎市の名産品・だるまなどの写真が並んでいる。

「instagunmer」アカウントページ

「映え」の基準であるカラフルやオシャレとは程遠いように思えるが、それで正解なんだという。
このアカウントの目的は、高崎市内にある「よくよく見るとなんだかじわじわとおもしろい “じわジェニック” な風景」を発信することなのだ。

ただ、投稿写真にはハッシュタグを付けたひと言コメントが添えられていて、それを読むと、何でもないように見える風景から、高崎市ならではの良さをじわじわと感じることができる。
笑いや驚きを引き起こすその写真の数々をさっそく見てみよう!

ハッシュタグがくすっと笑える

記念すべき初投稿は、高崎市のシンボルとして街を見守っている「高崎白衣観音」の写真。
投稿文には「#めっちゃ猫背  #手前の銅像との差」とある。

確かに、比べてみると観音像の背中がゆるやかに湾曲しているのがわかる。
手前にある背筋をピンと伸ばして直立する銅像の正体は、観音像を建立した実業家の井上保三郎氏だ。

「instagunmer」投稿より

他にも、「栃木屋」という名前のお土産を扱うお店には「#ここは群馬や」というコメント。
屋根の付いた建物の中に祭られているだるまには「#封印されしラスボス」。
自然風が流れ「高崎観音山で一番涼しい店」という看板を掲げるお食事処には「#そうでもなかった」など、くすっと笑える投稿が盛りだくさん。
(ちなみに、「#彼氏とデートなうに使っていいよ」と書かれたスーツ姿で微笑む男性は、高崎市の富岡賢治市長だ)

ウェブサイトより

実際に高崎市を訪れなければ気が付かない風景ではあるが、なぜインスタグラムの常識「映える」スポットではなく、日常風景を紹介するのか?
また、それらの情報はどうやって収集しているのか?

「#インスタグンマー高崎」を運営する高崎市の担当者に話を聞いた。

インスタ「萎え」からの脱却で「若者離れ」を食い止める

ーーインスタ開設のきっかけは?

観光資源の発信は全国的に行われていますが、他の地域とは違う高崎市ならではの取り組みをということで、2017年から「絶メシリスト」という高崎市の絶品ローカルグルメを紹介するグルメサイトを公開しています。
今回はそれに続く第2弾として、一見どこにでもありそうな、見落としてしまっているような風景にスポットを当て、街全体を盛り上げることにしました。

企画の背景には、若者の地域離れ問題を解決したいという思いがあります。
総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告(2017年)」によると、東京圏への転入者が転出者を上回る「転入超過」は22年連続しており、深刻な社会問題となっています。
中でも、特に進学・就職を機にした若年層の「転入超過」が目立っており、群馬県および高崎市でも人口は年々減少しています。
そういった若者たちに、埋もれてしまっている地元の魅力を再発見してもらうことで、地元を見つめ直し、「残りたい・戻ってきたい」と思えるような場所にすることを目指しています。


ーーなぜ世界遺産の富岡製糸場や伊香保温泉などのメジャースポットを選ばなかった?

最近は「映え」ならぬ「萎え」という言葉も聞くようになり、みなさんインスタグラムの華やかな投稿に疲れてきている時期なのではないかと。
キラキラした写真もいいけれど、至って平凡な何気ない風景にも良さがあります。
高崎市内には、「よく見ると何だかおもしろい。冷静になってみると、じわじわくる」スポットがたくさんあります。
そんなガイドブックには載っていない情報を届けていきたいと思っています。

地元高校の新聞部の学生がスポットを発掘

「インスタグンMAP」(ウェブサイトより)

ウェブサイトには、投稿された「じわジェニック」スポットの位置を名産品のだるまのアイコンで地図上に表示。
さり気なく群馬をアピールする名前の地図「インスタグンMAP」が、だるまで埋め尽くされる日も遠くないかもしれない。


ーー「インスタグンマー」や「じわジェニック」という言葉はどこから?

インスタグラム×群馬ということで、すでにある言葉に群馬の要素を取り入れました。
「じわジェニック」は写真用語の「フォトジェニック」からきています。インパクトがあって親しみやすいものを目指しました。
行政らしくない取り組みとして、共感を得られたらと思っています。


ーー情報収集はどうやっている?

群馬県立高崎高等学校の新聞部の学生15人が、高崎市らしいスポットを発掘し、プロのカメラマンがそれを撮影しています。
写真に付けるハッシュタグは、学生とライターが意見交換しながら考案しました。
プロの方々の外部からの視点はもちろん、学生たちの大人とは違う柔軟な発想によって、見慣れていた高崎市の風景が「映える」ものなのだと気が付かされました。
新聞部ということで、短くても伝わるおもしろいハッシュタグになるような工夫に力が入り、笑いも起きる楽しい会でした。

写真は、運営側だけでなく誰でも投稿することができ、「@instagunmer」に向けて「#インスタグンマー」「#高崎」のハッシュタグをつけて投稿すると、ウェブサイト内に表示されていく仕組みになっている。
すでに一般ユーザーから、お祭りやSLを撮影した投稿が届いていた。

「インスタグンマーの心得」5ヶ条

ーー高崎市出身や在住でなくても「インスタグンマー」になれる?

もちろんです!
投稿の中から特にじわじわくる作品を選考し、勝手に表彰する「インスタグンマー・オブ・ザ・マンス」を毎月実施していきますので、ぜひ高崎市にお越しいただき、グンを抜いて映える1枚を撮ってみてください。
選ばれた方には、賞品として背中にインスタ映えするものをデザインした「映えだるま」をプレゼントいたします。
絵柄は毎月異なり、8月は「パンケーキだるま」です。

「映えだるま」をゲットせよ!

今後も随時「じわジェニック」な写真を公開していき、夏休み期間中には、製作委員会の高校生たちも街に出て、自ら写真撮影を行う予定だという。
同じく高崎ツウのインスタグンマーを目指す人は、委員会が掲げている以下の「インスタグンマーの心得」を肝に銘じてほしい。

その1:カラフルで、キラキラで、オシャレなものに惑わされないこと
その2:一見平凡な風景でも、少し見方を変えて対象を見つめ直すこと
その3:写真は「盛らず」に、ありのままの素材で勝負すること
その4:写真を撮影する際には周りに迷惑をかけないこと
その5:撮影した食べものは全て美味しくいただくこと

心得その1については、「『惑わされない』とありますが、そういったものが高崎市に無いというわけではありません(笑)」ということだ。
夏休みのお出掛けに、あなたも高崎市の新たな一面を探してみてはいかが?