“日本の恥”は世界に報道された

The Guardianより
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「東京医科大学が“女性排除目的で試験結果を操作”」
“Tokyo medical school 'changed test scores to keep women out'”

 ネットで英字ニュースをチェックしていたら目に飛び込んできた見出しである。
イギリスの新聞・ガーディアン紙の3日付けのウェブだったのだが、中身をチェックしたら、アメリカの世界的通信社・APが配信したものだった。
内容的には、通信社の配信ということもあり、日本での報道を比較的淡々とまとめたものだったのだが、それだけにかえって強く我が国における女性の地位向上と社会進出の遅れを印象付ける結果になっていた。

言うまでも無いことだが、これは日本の恥である。
勘違いしないで欲しいのだが、筆者は海外で報道されたことを恥と言っているのではない。

大学側の正式な発表はまだなのを承知の上で言うのだが、このような女性“差別”が罷り通っていたらしいことを日本人として恥じるのである。
 

アメリカなら集団訴訟

 
 

全く別の医科系私立大学で教鞭をとる関係者に訊いたところ、彼も「一律な点数操作というのは、聞いたことがない。一部の男性医師(特に外科系)の中には、女性が多いと自分の医局の医師を確保するのが難しくなると主張する人もいるが、共感できない。

女性の医学部志望者は増えていて外科系に進む女性医師も増えている。もしも、女性医師の定着率が低いのであれば、支援体制を充実させるべきであり、東京医大のやり方は許されるものではない」と大変手厳しかった。当然である。

 同様のことが、万が一、アメリカで行われていたら、落とされた女子学生らが集団訴訟を起こし、大学は天文学的な額の損害賠償を請求されるに違いない。そして、場合によっては、大学や病院の身売りに発展しても不思議ではない。

まともな神経ならすぐにもわかるはずの悪行が我が国の教育機関で行われたのにはまさに呆れる他無い。本来なら合格となるべきところを落とされてしまった女子学生達は救済されて然るべきである。
 

「水清ければ魚棲まず」?

東京医大は、文部科学省の局長(当時)の逮捕・起訴にも発展した贈収賄事件の一方の当事者でもあった。噴出した一連の不祥事を見て、先程ご登場いただいた医大関係者は「上に立つ者の資質の問題ではないか。日大や日本ボクシング連盟などの組織が抱える問題と共通する部分が感じられる。自分が築いた組織でもないのに、たまたま頂点に立つとそれを私物化して構わないと勘違いしてしまうのではないか」とも述べていた。

「水清ければ魚棲まず」等と嘯かれ、清濁併せ呑むのがトップの度量と評される時代が我が国で長年続いてきたのは事実である。望ましい結果を出す為には多少のルール違反・倫理違反も許されると多くの人間が考えてきたのも一面の事実であろう。

しかし、もはやそんな時代ではない。
もう、そんな時代は終らせなければいけない。

古い感覚のままの人間には退場してもらう必要があると筆者も思うのである。
 

(執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎)

 

記事 147 二関吉郎

生涯一記者""がモットー
フジテレビ報道局解説委員。1989年?ロンドン特派員としてベルリンの壁崩壊・湾岸戦争・ソビエト崩壊・中東和平合意等を取材。1999年?ワシントン支局長として911テロ、アフガン戦争・イラク戦争に遭遇し取材にあたった。その後、フジテレビ報道局外信部長・社会部長などを歴任。東日本大震災では、取材部門を指揮した。
ヨーロッパ統括担当局長を経て現職。