6人に実刑判決…“最大規模”のカンニング事件
受験戦争の過熱ぶりから例年発覚する中国の不正入試。スパイ顔負けの機器が使われるなど、摘発されるカンニング事件の手口は、組織化、専門化の一途をたどっている。
8月7日、大学院入試で33人の受験者のカンニングが摘発された事件で、北京の裁判所は、6人の被告にそれぞれ懲役4年から1年8か月と、罰金4万元から1万元(約68万円から約17万円)の判決を言い渡した。中国中央テレビによると、北京で起きたカンニング事件で最大規模だったという。

判決によると、被告はそれぞれ教育コンサルタント会社を立ち上げるなどして、研修などの名目で受験生を募った上で、電波送信器や受信機などを用意し、「模擬試験」として予行演習を行うなど周到な準備をしていた。
受験生が受験した大学は北京師範大学や中国伝媒大学などの名門校。2016年12月の受験日当日、被告らは大学近くのホテルに陣取り、送信機を設置し無線を通じ受験生に解答を伝えていたところ、警察に摘発された。
スパイ顔負け…仰天ハイテク機器
驚かされるのはその通信機器のハイテクぶり。たとえばこうだ。
1.一見消しゴムのようで、裏返すとディスプレイがついている受信機

2.スカーフに取りつけられ、柄の迷彩色を施された受信機
3.耳の穴の中に入る極小イヤホン

まさに、スパイ顔負けの機器が使われていたことが、捜査の過程で明らかとなった。
さらに調べによると、銀行の取引記録などから、組織的カンニングは今回が初めてではないと見られるという。

「ドローン」まで登場…ハイテク化する“イタチごっこ”
カンニングの巧妙化に伴い、対策も厳格化の一途を辿っている。受験会場周辺に不正電波を妨害する特殊な車を配備するのは、もはや当たり前のように行われている。
中国版センター試験「高考(ガオカオ)」の前には、市民向けに通信会社から「高考の日は一部電波がつながりにくくなります」と、一斉にショートメールが届く。また、最近では試験会場付近でドローンを飛ばし、不正電波を監視しているという。
会場では一人一人手荷物検査を徹底し、顔認証機器を使って替え玉受験対策をするなど、カンニングのハイテク化に伴い対策もハイテク化しており、壮絶なイタチごっこが行われている。
判決によると、今回の事件では、こうした電波妨害をすり抜ける技術が使われていたという。「カンニング技術」も日進月歩で進化しており、当局による対策は後手に回っているのが実情だ。
超学歴社会の中国、受験の結果が人生を左右するとも言われ、そのプレッシャーは半端ではない。悪徳カンニング業者の存在もあり、こうした不正行為が後を絶たないのだ。
中国メディアによると、2016年以来、北京の裁判所でカンニング事件を扱ったのは34件に上り、そのうち、組織的カンニングが4件、替え玉受験が29件、試験問題の違法提供1件で、大学や大学院受験のみならず、教師資格試験、運転免許試験などでも行われていたという。
中国当局は徹底した対策や、厳罰によってカンニングの防止を図っているが、“カンニング用ハイテク機器”は次々とヤミで出回っており、ルール無用の戦いはまだまだ続きそうだ。
(FNN北京支局長 高橋宏朋)