部活中に熱中症で死亡する生徒の4人に1人は野球部員

記念すべき第100回全国高校野球選手権で、連日、球児たちが甲子園で熱戦を繰り広げている中、気になる調査結果が発表された。

高校や中学のクラブ活動中に熱中症で死亡する生徒の4人に1人は野球部員であることが、日本スポーツ振興センター(JSC)がまとめた調査結果で分かった。

1975年から2017年の間、クラブ活動中に熱中症で死亡したのは146人。
このうち37人が野球部の活動中で最も多く、全体の約25%。
次いでラグビー部17人、柔道部16人、サッカー部14人、剣道部11人、山岳部9人などだった。

提供:日本スポーツ振興センター

野球部の人数が多い原因は、「競技人口の多さ」と「練習時間の長さ」ではないかとみられている。

一方、ネット上には「野球は危険」「暑い中、ダラダラ練習しているから当然」、昔は「“水飲むな”の指導があったから」など、さまざまな意見が挙がっている。

夏の甲子園については、開催時期や暑さ対策などが論じられているが、今年のような“危険な暑さ”のもとでの部活動は他のスポーツも含めて危険度が増している気がする。
この調査結果を専門家はどのように分析するのか。
部活動の問題に詳しい、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良准教授に話を聞いた。

ラグビーや柔道の方が死亡率は高い

――野球部が最多だった原因は?

競技人口が多いからだと思います。
ただ、ラグビーや柔道の方が死亡率は高いので、野球という競技が危険なわけではありません。
競技人口が多い分、対策を立てれば、多くの子どもが救われる可能性が高いとも言えます。

日本スポーツ振興センターが公表している資料『学校の管理下の熱中症の発生傾向』によると、競技者100万人あたりでの熱中症死亡事故の発生頻度は、「ラグビー」12.78 人、「柔道」2.81 人、「剣道」1.81 人、「野球」1.64 人。
野球の発生割合は意外にも低いことが分かる。

2000年代以降、「水を飲む」という指導は広がっている

――昔は「水を飲むな」と指導し、選手が倒れることはザラだったという声もある。こういった古い指導法が熱中症死につながった可能性はある?

野球に限らず、「水飲むな」の指導はありましたので、かつてはこういった指導によって熱中症で死亡したケースがあったと推察できます。
一方で、2000年代に入ってからは「水を飲む」という指導が広がっているという印象はあります。

――野球部の部活動中に熱中症で亡くなる生徒を減らすためにはどのような対策が必要?

甲子園のベンチにはクーラーが付いているなど熱中症対策がされているのですが、甲子園以外の地方大会には対策が行き届いていません。
地方大会のベンチにクーラーを付ける、水撒きを徹底するなどの対策が急がれます。
また、甲子園のアルプススタンドには屋根もなく、応援する側も過酷なので、応援する側の熱中症対策も重要かと思います。

中学や高校の生徒たちが、部活動に一生懸命打ち込むのは、ある意味当然の姿。だからこそ、学校や指導者がしっかりケアし、年々暑くなる夏の対策を講じることが急務ではないだろうか。


内田良
名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授。博士(教育学)。
専門は教育社会学。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社),『教育という病』(光文社新書)など。ヤフーオーサーアワード2015受賞。