2020年東京五輪・パラリンピックのボランティア募集が9月中旬から始まる。

必要なボランティアは、「大会組織委員会」、「東京都」の募集分を合わせて11万人以上。
主力は学生とされ、文部科学省とスポーツ庁は全国の大学と高等専門学校に対し、大会期間中の授業や試験の日程を柔軟に変更するよう求める通知を出していたのだが、これに対し、ネット上では「学業よりボランティアを優先させること」を疑問視する声が挙がるなど物議を醸していた。

東京五輪のボランティア募集を“褒め殺し”…

こうした中、「東京五輪学生ボランティア応援団」というウェブサイトに掲載された文章がTwitterを中心に話題となっている。

このウェブサイトを制作したのは、早稲田大学の2年生、松本海月さん。

サイトの冒頭で松本さんは、「東京五輪組織委員会の皆さんは、私たち学生に、やりがい溢れるボランティアの機会を与えてくださろうとしています」と、東京五輪・パラリンピックの学生ボランティアを賞賛。

「同じ学生の立場から、学生の皆さんにボランティアの意義や魅力を伝えるため、このウェブサイトを制作しました」としたうえで、ボランティアで得られるものは「やりがい」「感動」「絆」だと主張している。

東京五輪・パラリンピックの学生ボランティアを賞賛するだけのウェブサイトのようにも思えるが、読み進めるうちに、賞賛する言葉はすべて“皮肉”であることが分かってくる。

たとえば、ボランティアになるにあたって、「足を引っ張ってしまうのではないか」という不安を抱いている学生に対しては、以下のようにアドバイスしている。

「大丈夫です。オリエンテーションや研修に、最低でもそれぞれ各1回ずつ参加することになっています。それらの参加に掛かる費用も、なんと無料です!もちろん、交通費程度は出す必要がありますが、東京五輪という素晴らしい大会に参加できる上に、組織委の方がボランティアのために念入りな研修まで行ってくださるのですから、それくらい、安いものですよね」

なぜ今、このタイミングで、このような皮肉が込められたウェブサイトを制作したのか?

「東京五輪学生ボランティア応援団」を制作した松本海月さんに理由を聞いた。

根底にあるのは東京五輪に対する「失望」

――どのような思いでこのウェブサイトを制作した?

以前より大学や社会での時事的な問題をネタにして、友人たちにジョークとして見てもらうような感じで、ちょっとしたコラージュやウェブサイトを制作することが時々ありました。

今回もその一環だったのですが、東京五輪の開催が決定したときはそれを楽しみにしていたのに、エンブレムや競技場の問題に始まって色々な問題が起こるのを見て、だんだんと失望してしまった、という気持ちが根底にはあると思います。

――具体的にはどのような点に失望した?

日本が本当に先進的な国家ならば、もっと素晴らしい大会運営ができてしかるべきなのに、と感じていました。その上、大学や高等専門学校の授業期間を大会と重ならないよう暗に指示した、というようなニュースが流れました。

そのような指示は、大学の自治の精神に反していることもさることながら、2020年大会の際にはまだ大学に在学しているはずの当事者として、2年前の段階でそういった指示を出すのであれば、やがてボランティアを強制しかねないのではないか、という危惧もありました。

そのような強制はあり得ないというか、あってはいけないことだと思いますが、中高生にまで枠を広げるなどというニュースもありますし、今回の大会運営を見ているとやりかねない、という気がしました。

ボランティアは有意義ではあると思いますが、それは個人の自発的な参加によるものであるべきだと思います。

大会組織委員会に対する皮肉をしたかった

「東京五輪学生ボランティア応援団」より
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――直接批判するのではなく、風刺というかたちで自分の思いを伝えようと思ったのはなぜ?

勢いと思いつきで制作したので、そこまで色々なことを考えたわけではないのですが、もともと風刺が好きだからというのもあると思います。
また、散々使い古された聞こえのいい言葉でボランティア募集の宣伝をするであろう大会組織委員会に対する皮肉をしたかった、という心情もある気がしています。


――サイトに大きな反響があり、話題になっていることをどのように受け止めている?

純粋に驚いています。
多くの方が東京五輪、あるいはボランティアに対して問題意識を持っているという証拠であると思います。

それ相応の対価が支払われるべき

――「東京五輪学生ボランティア」のどういった点を変えてほしい?

過去の五輪でもボランティアに対して金銭的な対価は伴わなかったと聞きますので、絶対に報酬が金銭で支払われるべきだ、とまでは言いませんが、交通費や宿泊費程度は最低でも負担すべきと思いますし、語学やテクノロジーのスキルがある方にはそれ相応の対価が支払われるべきだと思います。

例えば、私の通う大学の学費は年に約120万円で、奨学金を借りている学生もたくさんいますし、経済的に多額の仕送りなど望むべくもない学生も多いです。
そのような状況で、多くの学生はアルバイトをしていますし、ボランティアと同じだけの時間をアルバイトに回せば10万円程度は稼げるのです。

そういった中で、ボランティアによって得られるものは、予想される猛暑の中、10日間にわたって無報酬で働くことに見合うのか、という判断を学生はするでしょうし、もし応募が予想より少ないのであれば、対価の方を調整すべきだろうと思います。

現在、開催中のジャカルタ・アジア大会では、ボランティアに30万ルピア(約2300円)の日当が支給されるのだという。
日本ではボランティアは「無償」というのが当たり前だったが、東京五輪・パラリンピックはこうした考えに変化が訪れるきっかけになるのかもしれない。