反日大統領の誕生

大統領選を戦う文在寅氏
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「日本に対して慰安婦合意が間違いだと言う!」

ちょうど1年前の今ごろ、韓国の大統領選挙で声高にこう叫んでいたのは、選挙レース独走状態だった文在寅氏その人。
“この人が大統領になったら日韓関係はさらにこじれそうだ”
現場で取材をして率直に感じたことだ。

「反日大統領の誕生」…そう騒がれた時から5月10日で1年。
大統領就任前と​その後の言動を読み解くと「ある思惑」が見え隠れする。​

釜山の慰安像設置も応援

文大統領は就任前、反日運動を助長する有力政治家の1人だった。

2016年7月、当時、すでに次の大統領の有力候補でありながら、日本固有の領土「竹島」に上陸。
さらに2017年1月には、釜山の日本総領事館前に不法に設置された慰安婦像を訪問するなど、“反日パフォーマンス”は過激さを増していた。

反日だけど経済協力はやろう!

大統領就任後、掲げたのは「ツートラック外交」。

日韓の歴史問題にはとらわれず、安全保障や経済協力などでは対話を続けるというもの。
「反日運動は続けるけど協力はしましょう」とも捉えら​れ、​都合の良い話にも聞こえる。
そんな言葉を象徴する事態が2017年11月に起きた。

アメリカのトランプ大統領を韓国に招いて開かれた晩餐会で振舞われたのが、「独島(ドクト)エビ」。(※独島は竹島の韓国側の呼称)

独島エビ

さらに、その席に元慰安婦の女性を招待し、トランプ大統領と抱擁までしてみせた。
まさに、外交舞台の場に「反日」を持ち込む徹底ぶり。

慰安婦問題の溝は埋まらず

「日韓合意で問題が解決できないことを改めて明確にする」
文大統領は、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的解決を確認した2015年の日韓合意について、このような見解を示した。
日本政府は当然ながら合意の着実な履行を求め、両者の隔たりは依然として埋まっていない。

ツン→デレへの転換!?

しかし、南北融和が進むにつれて若干の変化が…。
4月の日韓電話首脳会談で、安倍総理は文大統領に、南北首脳会談で日本の拉致問題を取り上げるよう要請した。
「南北には直接関係ないことから、取り上げる可能性は低いのでは…」(外交関係者)
こんな指摘もあった中で、文大統領は日本の要請通り、金正恩委員長に拉致問題を提起した

さらに、同月開かれた韓国メディア社長との懇談会の場で、文大統領は以下のような発言をした。
「南北間の対話がうまくいくだけでは南北関係を解くことはできない。米朝関係も日朝関係も解けなければならない。皆一緒に解けてこそ南北関係も発展できる」

北朝鮮へのすり寄りを指摘された時からは想像できない、冷静な発言だ。

さらに注目すべきは「日朝関係」にまで言及したこと。
文大統領はなぜ、急に日本への配慮を示したのだろうか?

「仲介役」をアピール!その裏では?

南北首脳会談を「成功」として捉える文大統領は、6月上旬までに開催が見込まれる米朝首脳会談の「仲介役」を担いたい考えだ。
今後の南北の発展には各国との連携は欠かせないとしていて、日本も例外ではない。
さらに、国政運営で重要な統一地方選挙(6月13日投開票)を控えている。
自らの外交手腕を一つの実績として、アピールしたいという思惑も見え隠れしている。

驚異の支持率80%越え!ちょっと余裕も?

さらに最近、日本への配慮を象徴するようなことを目の当たりにした。

5月1日、韓国の労働者団体が、釜山の日本総領事館の前に、日本の植民地時代に朝鮮半島から動員された「徴用工」を象徴する像の設置を強行しようとした。
総領事館前には、別の市民団体により慰安婦像がすでに強行設置されている上、この労働者団体は文大統領の支持基盤であるため、「今回もなし崩し的に設置されてしまうのでは?」…そんな恐れもあった。
しかし、蓋を開けてみると、3000人もの警察官が動員され、激しい衝突の末、設置は阻止されたのだ。

徴用工像設置を強行する労働者団体と警察が衝突(5月1日)

予想に反して韓国政府は「在外公館前に像を設置することは国際条約に違反し、外交的な摩擦を招く」と、至極まっとうな意見を述べて反対の立場を貫き、​現在(5月10日)まで像の設置は阻止されている。

なぜ文大統領は、警察を動員してまで設置を阻止したのか?
その背景には、驚異的な高支持率があると思われる。
世論調査(5月4日韓国ギャラップ)によると、文大統領の支持率はなんと83%!
この高い支持率があるからこそ、支持層の意向を過剰にくみ取るのではなく、日韓関係のこれ以上の悪化を避けるという道を選べたのかもしれない。

5月9日に行われた日中韓首脳会談

とはいえ、​韓国もタダで日本に配慮するわけではない。
北朝鮮核問題での連携以外に、日韓通貨スワップの再開や、日韓漁業協定の妥結…​、経済面でも何らかの利益を日本から得るために、「ツートラック」で交渉してくることが予想される。

強い反日の「ツン」から日本へすり寄る「デレ」へ…、若干の路線変更があったこの1年。
残りの任期4年でどう変わっていくのか?
低支持率にあえぎ、竹島に上陸することで9%も支持率をアップさせた元大統領は、​先日逮捕された。

今は高支持率に喜ぶ文大統領だが、支持率低下とともに反日色を強めていった歴代大統領のようにならない事を祈る。

(執筆:ソウル支局 川村尚徳)