トランプ大統領の“アサド暗殺命令”

「彼(アサド大統領)をぶち殺そう!やろう。奴らをどんどんぶち殺そう」
“Let’s f**king kill him! Let’s go in. Let’s kill the f**king lot of them.”

ワシントンの超大物記者、ボブ・ウッドワード氏の最新著書の内容を複数の米英紙が現地時間9月4日に報じた。

それによると、2017年の4月にシリアのアサド政権が一般市民に対して毒ガス攻撃をしたのを受け、トランプ大統領はマティス国防長官に電話を掛け、上記のように命じたという

マティス長官はこの命令を引き取ったものの、部下に「そんなことは我々はやらない。もっと慎重にやる」と述べ、トランプ氏の命令を事実上握りつぶしたという

実際、その後、アメリカ軍はシリアに限定的なミサイル攻撃を仕掛けたもののアサド大統領や高官は狙わなかった。

マティス国防長官
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朝鮮半島での情報収集にも関心なし?

報道によれば、北朝鮮を巡ってのエピソードはこうだ。

今年1月19日に開催された国家安全保障会議で、トランプ大統領は、韓国にアメリカ軍を配備し、様々な手段・資産を使って現地の動きの情報収集にも当たっていることに疑問を呈し、その必要性を問うたという。

これに対し、マティス長官は「我々は第3次世界大戦を防止する為にやっています」と応じたという。

そして、トランプ大統領の世界情勢に対する理解レベルの幼稚さに憤激したマティス長官は、その後、部下に「トランプ大統領は小学校5・6年生並み」と評したということだ。

米韓FTAからの一方的離脱を阻止…

さらに、今年春まで経済担当補佐官を務めていたゲーリー・コーン氏は、アメリカが米韓FTAから一方的に離脱するのを阻止する為、離脱を宣言する大統領令にトランプ氏が署名する直前に、必要書類を大統領のデスクから抜き取ったという

コーン氏が後に部下に語ったところでは大統領は書類が無くなっていることに気付かないままだったという。また、コーン氏はトランプ大統領を“嘘つきのプロ”と評しているらしい。

トランプ政権内での悪口合戦

首席補佐官を務めるケリー氏

「彼は馬鹿者だ。彼を説得しようとしても無駄だ」
"He’s an idiot. It’s pointless to try to convince him of anything."

「我々は異常な場所にいる。何故、こんなところにいるのか理解に苦しむ。人生で最悪の仕事についてしまった」
"We’re in Crazytown. I don’t even know why any of us are here. This is the worst job I’ve ever had."

と毒づいたことがあるという。

もっともトランプ大統領も悪口では負けていない。記事によれば…

プリーバス前首席補佐官を「彼は小鼠のようだ。ちょこまか走り回るだけだ」
とこき下ろしたり、

マクマスター前安全保障問題補佐官を「ビールのセールスマンみたいだ」
と小馬鹿にしたり、

ロス商務長官に面と向かって「君は信用しない。もう交渉はしなくて良い。君は盛りを過ぎた」
と罵ったり、言いたい放題である。

超大物記者の暴露記事の真偽は?

もちろん、トランプ氏側は、暴露内容を即否定している

トランプ大統領はツイートで
「マティス将軍とケリー将軍が反駁したように、彼らの発言とされるものはでっちあげである。他も同様である」
等と反撃している。

ケリー主席補佐官も声明で
「私が大統領を馬鹿者呼ばわりしたというのは真実ではない」
「私は大統領と彼の政策目標、そして、国家に一身を捧げている」
などと発表したし、

マティス国防長官

「ウッドワード氏の著作で私が口にしたとされる大統領に対する侮蔑的な言葉が私の口から発せられた事は決して無いし、私の前で他の人間の口から発せられたことも無い」
と全否定している。

ご存知の方も多いと思うが、ボブ・ウッドワード氏は、ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の報道で名を成し、以来、歴代政権の内幕を定期的に暴露してきた名物記者である。その手法はオフレコ(情報源の秘匿)を約束して、多数の関係者・当事者から詳しく証言を聞きまとめるというもので、その内容に対する世の信頼度は高い。

もちろんオフレコ取材のまとめ故、第三者がその真偽を確認するのは不可能に近いのだが、ウッドワード氏の最新著作の内容が、少なくとも、当たらずとも遠からずだとすれば、対北朝鮮を含むトランプ大統領の外交は、やはり、かなり危ういということになる。これによって取り返しのつかない事態が生じないよう切に願う。

(執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎)