弁護士役のシンシア・ニクソンがNY州知事候補へ?

2018年3月 ニューヨーク州知事選への出馬会見

アメリカの超人気TVドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」でお馴染みの女優シンシア・ニクソンさんに間もなく『審判の時』がやってくる。13日に行われるニューヨーク(NY)州の民主党予備選で、シンシアさんが11月の中間選挙で民主党のNY州知事候補となるかどうかが最終的に決まるのだ。

セックス・アンド・ザ・シティ〔ザ・ムービー〕 [DVD]

今年3月19日、シンシアさんは民主党からNY州知事選への出馬を目指すと表明。しかし、5月のNY州民主党大会では必要な支持(選挙人の25%)を集められず、民主党の候補者は三選を目指す現職州知事のアンドルー・クオモ氏に決まった。

だが、彼女はあきらめなかった。一般の有権者1万5千人分の署名を集めて予備選に出る道に挑んだのだ。そして、7月半ばまでにNY市のブルックリン地区だけで6万5千人分を集め、予備選への道を拓いた。

署名集めには3500人以上のボランティアが協力したという。この経緯は、伊達や酔狂で出馬してみせたのではないことを物語っている。

出馬の動機は「NYを変えたい!」

もともとアメリカでは俳優が政治家になった例は少なくはない。
売れない俳優だったロナルド・レーガンは、カリフォルニア州知事を経て合衆国大統領にまでなった。
オーストリアから移民してきたアーノルド・シュワルツェネッガーもカリフォルニア州知事に。
クリント・イーストウッドはわずか1期2年間だがカリフォルニア州カーメル市の市長を務めた。
特定の政党や候補者に対し公に支持を表明をするといった政治的発言はごく普通に行われている。

シンシアさんは生まれも育ちもNY市という生粋のニューヨーカーだ。自身が公立学校を卒業しただけでなく、子供たちも(金持ちが行かせる私立学校ではなくて)公立学校に通わせてきたことを誇りに思っている。幼少時は貧しかったけれどNYの人たちは皆、希望を持っていた。それが今ではNYは全米で貧富の格差が最大の州になってしまった。これを変えなければならない!というのが出馬の動機だという。NYへの思い入れは強い。進歩的市民活動に長く携わっていて、2012年には同性パートナーと結婚するなど、バリバリのリベラルでもある。
こだわりの政策として教育とNY地下鉄の再生をあげる。

トランプ共和党とも民主党主流派とも断固戦う

2018年8月 クオモ・ニューヨーク州知事との討論会

批判の矛先はまず現職のクオモ州知事に向いている。民主党の政治家でありながら、これまで2期8年の金持ち優遇策が格差の拡大を招いた。儲け至上主義の大企業やトランプ大統領との結びつきがあっては『反トランプ』を旗幟鮮明にできないと一刀両断にする。

返す刀で民主党主流派(中道派)もバッサリ。共和党と似たり寄ったりの政策では民主党の再生は覚束ない。民主党らしさを取り戻すためにもリベラル化をためらってはならない!という。
一方でクオモ氏は、8月末に行われた一対一の討論会で、シンシアには政治経験がなく、NY州の政策についてもろくに知らないなどと指摘した。

この主流派クオモVS進歩派シンシアという党内分裂の構図、2016年の大統領選の民主党予備選での、主流派ヒラリー・クリントンVS民主社会主義者バーニー・サンダースの再現のように見えてならない。ちなみにヒラリーはクオモ支持だ。

そして、大統領選予備選の際は、民主党全国委員長が「候補者はヒラリー・クリントンであるべき」と肩入れするメールが暴露され大スキャンダルとなったことをご記憶の読者も少なくないだろう。今回もまた、投票前の最後の週末になってNY州の民主党委員会が「シンシアは反ユダヤ主義」などと貶める選挙チラシをばらまいていたことが発覚。猛烈な非難の嵐が巻き起こっている。

選挙の行方は不透明

最新の世論調査では、クオモ氏が40ポイントもの大差でシンシアをリードと出たが、調査が行われたのは選挙チラシのスキャンダルが発覚する直前のこと(9月4~7日)。その影響は数字に反映されていない。

クオモ候補陣営は、過去3週間で8500万ドル(約94億円)の選挙資金を投下。1日平均の40万ドルがシンシア陣営が3週間で使った総額と同じだという。選挙戦最終盤で圧倒的資金力にものを言わせる作戦だが、知名度のあるシンシアのゴール前の大逆転を警戒している表れでもある。

リベラルとの軋轢は進む一方。あくまで主流派の意思を押し通そうと懲りずに画策までする民主党に対しNYの党員はどのような審判を下すのか。女優で進歩派活動家のシンシア・ニクソンの政治キャリアはこれからどう進むことになるのか。13日の予備選の行方がにわかに興味深くなってきている。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)