9月9日の北朝鮮の創建70周年に合わせ、平壌で6日間に渡り軍事パレードなどの記念イベントや、市内の施設などを取材した。 

平壌市内の様子

筆者が前回北朝鮮を訪れたのは、2017年の4月、金日成主席の生誕105年を記念する軍事パレードなどが行われた時だった。当時は、アメリカの空母が朝鮮半島近海へ向けて進むなど、トランプ大統領と金正恩委員長が激しい舌戦を繰り返しながら日に日に緊張感が増す情勢下。約1年後に、米朝首脳会談が実現する気配などまるで感じられなかった。

この1年半、北朝鮮を巡る情勢は大きく変化したが、それは、各イベントや街の風景の中にも現れていた。

本当に消えた?反米ムードはどこへ…

象徴的だったのは、軍事パレードでアメリカが射程距離に入るICBM=大陸間弾道ミサイルを始めとした弾道ミサイルが披露されなかったこと。非核化を巡る協議が難航する中、アメリカを刺激しないよう配慮したかたちだが、トランプ大統領もこれを賞賛した。

実はこうした“配慮”は、軍事パレードに続いて行われた市民のパレードでも続いていた。以前は核開発を前面に押し出していたため、市民によるパレードにも弾道ミサイルとみられる模型が登場していた。しかし今回は、以前ミサイルの発射実験時に称していた、人工衛星用のロケットすら出てこなかった。

軍事パレード ハリボテのミサイル(2017年4月)

ところが、実は軍事パレードをよく見てみると、軍事車両の前面に「朝鮮人民の天敵である米帝侵略者たちを消滅せよ」の文字が。この標語、以前から書かれていたものではあるが、これだけ徹底しているのにも関わらず何故消されていないのか… 軍内部では、依然標語として掲げられているのだろうか。

反米標語が書かれた軍事車両

激変した中国との関係

冷え切っていた中朝関係も大きく変化した。軍事パレードでもマスゲームでも、中国の習近平国家主席の特使・栗戦書全人代常務委員長の席は、常に金正恩委員長のすぐ左側で、会場への入退出時には親しげに話すなど、その蜜月振りを内外に何度もアピールしていた。しかし、北朝鮮のアピールはこれだけではなかった。

5年ぶりの開催となったマスゲーム。数万人の市民が参加した約2時間に渡る公演の終盤、国際親善をテーマにした演目の時だった。朝鮮語で「国際関係の多様化」とマスゲームで書かれた文字は、次の瞬間、同じ意味を表わす中国語と英語に切り替わったのだ。

マスゲームで書かれた朝鮮語
次の瞬間、英語に
そして、中国語に切り替わった

各国からの招待客を前にして、演目のテーマから英語はまだ理解できるが、中国語の併記は中国側へのもてなし以上の意味合いを感じざるを得ない。北朝鮮では、1954年を最後に新聞に漢字が掲載されなくなったというのだから、こうした公式行事で使われれば尚更である。

小学校から英語教育、経済発展の鍵となるか?

英語についても驚いたことがある。今回、小学校などの教員を育成する大学が公開されたのだが、そこで紹介されたものの1つが、小学生への英語の授業の練習だったのだ。しかも学生の話す英語は非常に流暢。もちろん、成績優秀な生徒が実演したのであろうが、北朝鮮では以前より小学校から英語は必須科目だという。

平壌教員大学での英語授業

前回訪朝した際には、小学校の授業の様子が公開されたが、その時はアメリカを悪いオオカミに見立て退治する内容のアニメが教材として使われ、反アメリカ姿勢の徹底振りをアピールしていた。当然、英語の授業は公開されなかった。

小学校での反米教育アニメ(2017年4月)

今年4月、経済発展に総力を挙げるという新戦略を打ち出した金委員長。とはいえ資源に限界のある北朝鮮にとって、国連の制裁は避けては通れない問題だ。グローバルな人材の重要性が増す中、教育現場でもしたたかに準備を進めていたことが垣間見えた。

アメリカと中国の思惑に挟まれながら、少なくともこうした見た目は変化してきている北朝鮮。

数年後には、どのような変化を見せているのだろうか。

(執筆:FNN北京支局 岩月謙幸)