防災・減災企画の2回目は、「備蓄」と「非常時に持ち出すもの」。

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これもまた、大きな災害が起こるたびに、気持ちの手綱を引き締めて見直すのに、だんだんとホコリをかぶりがち・・・。また、コロナ禍だからこそ、非常用持ち出し袋に用意しておく方がいいものがあるという。皆さんの備えは、万全ですか?ぜひ一緒に、見ていきましょう。

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佐々木アナ:
ハッチー、木村くん、今回は、防災への備蓄について考えてみようと思うの。木村くんは、どんな備蓄をしている?

木村アナ:
水は2リットルのものを20本。日持ちする缶詰、特にサバ缶などは普段も使いながら、買い足していますねぇ。乾パンは、2年に一度見直しています。それから、緊急時に持ち出すものは、通販で「防災セット」を家族の人数分買って備えていますね。簡易トイレや、ラジオ、バッテリーやスリッパ、懐中電灯、アルミのブランケットなど・・・が一式入ったものです。

佐々木アナ:
さすが。聞かれてすぐに答えられるのは、日頃から意識しているから!ね。私は、水や缶詰、麺など、日常日持ちするものをストックしているくらいで、特別、何か非常時用には買っていないのよねぇ・・・。あとは、カセットコンロのカセットのストックや、お風呂に水を必ず溜めておくのは意識しています。これは、被災した方に話を伺うと、皆さん口を揃えておっしゃるの。「お風呂に水を溜めておけばよかった」と。それは実践しています。

非常時の持ち出し袋は寝る部屋に置いていて、履き物、懐中電灯、笛、ラジオ、あとは、子どもたちの防災頭巾、などは入っているけれど、簡易トイレは同居の両親も含めると6人分・・・。すべてはそろっていないのが本当のところ。

ハッチー、いざという時のための備え、何をどのくらい準備すればいいのでしょう?

防災ハッチー:
まず、その「お風呂に水をはっておけばよかった」という声は、切実だね。みんな飲料水は意識するけれど、なかなか生活用水までは考えられないことが多い。風呂に水のためおきがあれば、それは生活用水として使えるね。断水時に、配管に損傷がないと確認された後ならば、トイレ用の水にもなる。ただ、小さなお子さんのいる家庭には、風呂水を溜めるのは勧められない。風呂場で溺れる危険性があるからね。だから、ポリタンクを用意するなど、どうやって生活用水を確保するかを考えておく必要がある。

官邸HPにも指針があるように、「災害に備えて家庭で備えておくべくこと」として、「飲料・食料の備蓄」と、いざ避難を迫られたときの、「非常用持ち出しバッグ」の二つに分けて考えてみよう。まずは、「飲料・食料の備蓄」を見ると、「3日分」生きられる分を用意することが具体的な目安になっている。

総理官邸のHPより
総理官邸のHPより

木村アナ:
なぜ、目安が3日間なの?

防災士ハッチー:
それは、人命救助において、最初の3日間がとても重要だからなんだ。一般的に、人が飲まず食わずに生存できる限界は「72時間」つまり「3日」といわれている。過去の災害の例でも、3日を過ぎると、生存率は急に下がってしまうそうだ。だから、災害が起きて最初の3日間は、救出活動・救助活動が最優先に行われ、、ガスや電気、水道などライフライン復旧などの支援はその後になる。だから、3日間は、なるたけ移動せず安全な場所にとどまって、自分たちで命をつなげるよう、食料や飲料を備蓄しておくことが大事なんだ。ただ、大規模災害ともなると、3日ではなく、1週間は自分たちで生活できる分の備蓄が必要になってくるよ。

佐々木アナ:
1週間・・・となると、かなりの量になりますねぇ。昨年の千葉での大規模停電でも、取材したお宅ではみなさん、冷蔵庫が使えなくて冷蔵庫の中のものがことごとくダメになってしまった・・・乾物などの保存のきく備蓄が大切だ、とおしゃっていたましたねぇ・・・。それがないと、車を持っている方は、走り回って食料調達されていたんですよね。

日常備蓄 ローリングストックで「いつもある」状態に

防災士ハッチー:
せっかくお金を出して備蓄用に食料や飲料を買っても、品質保持期限が近づいて慌てて消費するという経験、ないかな?しかも、定期的に見直さないと、まず家に何があるかもわからなくなってしまう。

だから、災害時のため特別に何かを用意するというより、普段も家庭で利用している食料品や日用品などを少し多めに買い置きして、、古いものから普段の生活の中で使い、なくなる前に補充して買い足す。それを生活に習慣として組み込んでおくといいんだね。主食になるものや、(お米、パスタ、餅)、レトルトの食品や調味料なども。お菓子(チョコレート、煎餅)や、赤ちゃんがいる場合は粉ミルクや離乳食なども必要になるね。

これも家族の人数によって準備する量や好みも違うから、まず自分の家で3日間(生鮮食料品を除き)どのくらいのものがあればいいのか、把握することから始めたい。

日用品は、トイレットペーパーなどの衛生用品、女性は生理用品、赤ちゃんや介護用のおむつ、洗剤、歯磨きグッズや化粧品など、なくなる直前に買い足すようなものも、余分があるだけでいざという時違ってくるね。

木村アナ:
できるだけ少ないモノで暮らしたい、最小限もので生活したいと思いがちなのですが・・・、それだけでは心もとないですね。

佐々木アナ:
使い切れないほど買いだめする必要は全くない。でも、使い切れる範囲で一定以上をいつも置いておく、この心がけが備えにつながるのですねぇ・・・。

非常用持ち出し袋に今すぐ入れておきたいもの・マスクと消毒液、体温計

木村アナ:
次に、非常用持ち出し袋について考えていきましょうか。僕は通販で一式のセットを買っているのに、正直なことを言うと、それで少し安心してしまったところがあるんです・・・。全ての中身を把握し切れていないなぁ、と。

佐々木アナ:
私も、子どもの防寒着を入れているけれど、見直さないと、もう小さくなっていて着られないかも・・・。いざという時に使えないと、意味がないよね。ハッチー、非常用持ち出し袋も、コロナ禍で意識しておくことはありますか?

防災士ハッチー:
官邸のHPや、前回の記事でも紹介した内閣府の避難の指針を思い出してみてほしい。マスクや消毒液、体温計は携行してほしい、と明記されているね。万が一、非常用持ち出し袋を持って避難所に行くとなった場合、感染の予防策として、一人一人の体調管理がとても重要になってくる。だから、持ち出し袋に体温計を入れておくといいね。

総理官邸のHPより
総理官邸のHPより

マスクや消毒液は、できるだけ家で行なっている衛生環境を避難所でも実施できるよう、心がけてほしいということなのだが、そのためにたくさん買いだめるという意味ではないんだよ。もしなくても、バンダナやハンカチなど、お互いの飛沫が飛ばないよう工夫できるもので非常時は代用してもいい。

木村アナ:
セット一式にもマスクと消毒液、入っていたはずだけど、枚数も確認して足しておこうと思います。

佐々木アナ:
あと気になるのは簡易トイレ。非常用持ち出し袋にも家にいて避難するときにもある方がいいとはわかりつつ・・・いったいどのくらいあればいいのか?

防災士ハッチー:
一般的には人の排尿は4〜6回、排便は1〜2回といわれている。なので、家族4人として、トイレが回復するまで1週間かかるとすれば、7日分あると安心だとして計算すれば、排便ごとに交換するなら60枚ほど、排泄ごとに交換するなら200枚ほどの備蓄が必要になる。

多いようにも思うが、生きていくためには食べることと排泄は同じように大切に考えて用意しておかなくては、ということだね。

佐々木アナ:
これまで被災地を取材していても、「トイレ」の問題は、避難者にとって大きなストレスの原因になっていたのを実感しますね。仮設トイレが設置されるまでどう排水するかという問題、設置されたあともすぐに衛生状況が悪くなる⇒行きたくない⇒トイレを我慢する⇒水分を控える、⇒体調不良になる、、、という悪循環が生まれやすい状況になる。

防災士ハッチー:
まさに。せっかく命が助かっているのに、トイレの衛生状況が保てないがために、感染症のリスクが上がる、栄養状態の悪化や、脱水症状、エコノミークラス症候群などの健康被害を引き起こすことにもなるんだ。

佐々木アナ:
簡易トイレは長期の保存ができるものも多いので、まず家の中を整理して、ストックする場所を確保するところから始めてみます。

木村アナ:
日常の中で備蓄しておくもの、と、いざ避難生活の時に必要になってくる専用のもの、分けて考えながら、「備えあれば憂いなし」という準備をしておきたいですね。

佐々木アナ:
あれもこれも・・・と考え出すと、どうしても気が重くなってくるけれど、何がどこにどれくらいあるか、を把握することから始めてみます。あとは、何はともあれトイレ問題。せめて家族1週間分は備えておこうと思います。

【執筆:フジテレビ アナウンサー 佐々木恭子】
【監修:フジテレビ 気象庁担当記者 防災士 長坂哲夫】
【表紙デザイン・図解イラスト:さいとうひさし】

佐々木恭子
佐々木恭子

言葉に愛と、責任を。私が言葉を生業にしたいと志したのは、阪神淡路大震災で実家が全壊するという経験から。「がんばれ神戸!」と繰り返されるニュースからは、言葉は時に希望を、時に虚しさを抱かせるものだと知りました。ニュースは人と共にある。だからこそ、いつも自分の言葉に愛と責任をもって伝えたいと思っています。
1972年兵庫県生まれ。96年東京大学教養学部卒業後、フジテレビ入社。アナウンサーとして、『とくダネ!』『報道PRIMEサンデー』を担当し、現在は『Live News It!(月~水:情報キャスター』『ワイドナショー』など。2005年~2008年、FNSチャリティキャンペーンではスマトラ津波被害、世界の貧困国における子どもたちのHIV/AIDS事情を取材。趣味はランニング。フルマラソンにチャレンジするのが目標。