日本以外では見られない“エビ”

その見た目から名前が付いている魚といえば、「チョウチンアンコウ」や「ウマヅラハギ」などがあげられるが、「ムギワラエビ」という魚がいるのをご存知だろうか。

珍しい種類ということで、麦わら帽子を被っているわけではないだろうが、どんな姿形をしているのか、写真を見てみると…


ムギワラエビ
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えっ?エビ?
“麦わら”感はあるといえばあるが、いつも見慣れているエビのフォルムと、あまりにもかけ離れたその姿に、本当にエビなのかという疑問がまず頭をもたげる。

直径約1cmほどの小さな体から、細長い手足が伸びていて、まるでアメンボやクモなど、どちらかといえば昆虫色の強いルックスをしているムギワラエビは、日本の国土以外では見ることが出来ない生物・日本固有種で、主に東京湾・浦賀水道・相模湾・南紀・日向灘の水深50~70m程、ヤギ類(サンゴの仲間)の上に生息しているという。

実は、現在、ムギワラエビのような、地球上で日本にだけ暮らしている、珍しい種類の生物だけを集めた展示「日本の固有種展」を、東京・品川区しながわ水族館が9月マンスリー企画として30日まで開催している。
ニホンザリガニやサワガニなどの淡水の生き物や、タカアシガニ・ヒゲダイ・ムラサキハナギンチャクなどの海水の魚介類合計45種類を一堂に展示しているが、その目玉とされているのが、希少な「ムギワラエビ」なのだ。

ただ、冒頭の疑問のように、その細い手足からは、ぷりぷり食感に定評のあるエビの身をまったく感じさせない…本当にエビなのか?
国内で唯一展示しているという、しながわ水族館の担当者に話を聞いてみた。

ムギワラエビはエビではない!

ーームギワラエビは分類上、エビなのか?

カニの様にも見え、名前にはエビと付いていますが、ヤドカリの仲間で、小さな体に細長い手脚が特徴です。
関節に特有の模様があるのが特徴です。

ーーこんなに手足が長くて“エビ”という名前が付くのは他にいる?エビの足の数って何本?

エビが歩く為に使っている、いわゆる足は通常8本ですが、テナガエビの仲間は2本が鋏脚になっているので6本で歩いています。エビではありませんがカニの仲間には、体に対して足が長いムギワラエビの様な体型の種がいます。

また、ムギワラエビと同じクモエビ科(ヤドカリの仲間)のオルトマンワラエビも、ほぼ同じ体型でよく似ています。当館では、このオルトマンワラエビも展示しています。両種は関節の色で区別できます。

ムギワラエビの関節は赤・白に対して、オルトマンワラエビは黒・白・黒です。

左:ムギワラエビ、右:オルトマンワラエビ

ーームギワラエビという名前の由来は?

分かりません。

ーー食べることは可能?味は私たちが知っているエビと同じ?

今のところ、有毒という情報はありませんので、食べる事は可能だと思いますが、食べた事はありません。
甲羅の大きさが7mmほどしかなく、足も針金のような細さなので、食べるのには向いていないと思います。


ーー発見することは難しい?

明治13年に東京湾で新種として発見されて以来、その後長い間、見つかっていませんでした。最近では、2015年に東京湾で135年ぶりに生息が確認されました。


ーー他に「日本の固有種展」で、見られる珍しい生き物は?

絶滅危惧種のムサシトミヨは、野生ではまず見ることができないのと、見ることができる施設も数少ないので、珍しいと思います。

絶滅危惧種・ムサシトミヨ

タラバガニもカニではない!

しながわ水族館でも分からなかった“ムギワラエビの名前の由来”について、専門家に話を聞いてみたところ、図鑑にも名前の由来については語られていないそうだ。

ただ、専門家いわく「足の形と細さが麦わらに似ているため、ムギワラエビと呼称したのではないか」ということだ。

やはり見た目から名前がついたのが有力のようだ。
ちなみに、専門家から教えてもらったトリビア情報として、ムギワラエビが生物上はヤドカリに分類されるように、実はカニでも同じようにヤドカリに分類されているものがいるそうだ。

その代表格となるのが、高級なイメージの強い「タラバガニ」だという。通常、カニは足が10本だが、タラバガニは8本なのでヤドカリに分類されるという。


実はヤドカリに分類される「タラバガニ」

しながわ水族館で開催されている、「日本の固有種展」は9月30日までだが、ムギワラエビは常設展示となっているため、9月以降でも展示しているそうなので一度足を運んでみてはいかが。