保冷剤と何が違う?手のひらを冷やすアイテム

梅雨が明ければ、いよいよ本格的な暑さが訪れる季節。

すでにムシムシとした気温の中、マスクを着用することにうんざり…という人も多いはず。

水で濡らして使う冷感マスクや、首かけ型のエアコンなどの“ひんやり系”グッズが続々登場しているが、そんな中、スポーツメーカーのデサントジャパン株式会社がこんなアイテムを発売した。

この記事の画像(5枚)

その名も「CORE COOLER(コアクーラー)」で、手のひらに装着して使うアイテム。

電機メーカー・シャープが社内ベンチャー「TEKION LAB(テキオンラボ)」で独自開発した蓄冷材をグローブ型のアタッチメントで固定して使うというもの。手のひらを冷やすことで体の中心部の温度が上昇するのを抑制し、クーリング(冷却)効果が得られるという。

コアクーラーはクラウドファンディングサイト「Makuake」にて、目標額10万円で開発プロジェクトを開始したが、結果はなんと、515人のサポーターから210万8700円(標達成率2108%)の支援を受けて成立した注目のアイテム。6月19日に一般販売を開始したところ人気となっているという。
 

しかし、一見「普通の保冷剤を使うのと何か違うの?」と思ってしまう点もあり、また、暑いときには「首や脇の下を冷やすと効果的」と聞いたことがある人も多いだろう。

本当に手のひらを冷やすだけで、今後訪れる厳しい暑さに対抗することは出来るのだろうか。 デサントジャパン株式会社にお話を聞いてみた。

「冷えた血液の循環」がポイント

――コアクーラーを開発したきっかけは?

シャープ様・ウィンゲート様と「各社の技術を使い、手のひらを適温で冷やす新たな暑熱対策を」ということになり、その中で陸上界を筆頭に注目度も高まりつつあったので、スポーツメーカーとして、ランナー向けに何かグローブのような操作性を妨げないものができないかと考え、開発を進めたのがきっかけです。

――首や脇より「手のひら」を冷やすことが有効な理由は?

手のひらの血管(AVA血管)を12℃前後で冷やすことで、身体の中心部の体温である深部体温の上昇を抑制します。保冷剤などを首や脇下にあてて太い血管を冷やすと、冷えすぎてしまう可能性があります。


――コアクーラーにはどのくらい体温を下げる効果がある?

運動開始前の30分間、手のひらを冷却した際、約0.4℃程度の深部体温の上昇抑制効果が実証されました(シャープ調べ)。

デサントによると、従来では首や脇の下などを冷やすのが良いとされてきたものの、最近では脳に近い部分を冷やすよりも、脳から離れた部分を冷やすことが効果的なのだという。

実際にシャープと独立行政法人 労働安全衛生総合研究所の共同検証によって、手のひらを適切な温度で冷やすことで深部体温の上昇を抑えることができるという実験結果が出ているのだ。

その理由は、手のひらにある「AVA血管」という特殊な血管。体温を調節するこの血管を冷やすことで冷えた血液が体内を巡り、体の中心部の体温(深部体温)が下がることで暑熱対策になるのだという。

一方で、ただ氷などを手のひらに押し当てるのでは、冷えすぎた血管が収縮してしまい逆効果なのだそう。同じく、シャープと労働安全衛生総合研究所の共同検証によって12度が適温という検証結果が出ている。

そのため「冷たすぎず快適な温度」であり、体を冷やすのに効果的な12度を保てる蓄冷材を使用しているというのが、コアクーラーのポイント。

スポーツの後など、汗をかいた体は思いきり冷やしたくなってしまうかもしれないが、しっかりと体の内側を冷やすことが大切なのだ。

スポーツマンだけでなく日常の熱中症対策にも

そんなコアクーラーだが、装着後は約20分間の冷却効果が持続するということで(周辺温度35度、手のひらの温度が34度の場合)、運動をする人だけでなく、ちょっと買い物に行く際など日常生活の中に取り入れることで、一般人もこれからの熱中症対策として使用することができるという。

――「こんなシチュエーションで使ってほしい」という場面は?

・スポーツ観戦中や日常での移動シーン(買い物の行き帰りなど)
・寝る前に体温を下げ、リラックスタイムを演出する(一般的に体温が下がり始める際=下降期に眠りにつくと、質の良い睡眠を得られやすいと言われています)


――長時間の運動をする人はどのように使えばいい?

氷水に浸し、冷やした「コアクーラー」を2セット用意し、30分ごとに交互に使用し、片方は冷やしておく。こうすることで長時間の屋外での運動時でも冷却効果を持続させることができます。

――どんなところに注意して使えばいい?

・使用前に冷凍庫あるいは氷水でしっかり冷やすこと。
・握った際も手の操作性は妨げにくい仕様にはなっていますが、ものを掴むのが強すぎると蓄冷材が破れてしまう可能性があります。

※同社サイトでは、蓄冷材の凍結時間の目安について「氷水で1時間以上、冷凍庫(-18℃以下)で2時間以上、冷蔵庫(5℃以下で)で9時間以上で凍結します」と紹介している。


――反響について…

完売の可能性はあると考えておりましたが、1週間で即売するほど反響があるとは思わず、驚いています。クラウドファンディング効果で企業様やメディア様からも多くの問い合わせをいただいています。


コアクーラーは税込3,960円(両手用)で、クラウドファンディングや直営店での一般販売などにより、これまでの展開数は約7,000点。デサントの公式オンラインショップでは販売開始日に取り扱い予定数が完売していたが、7月3日現在は再入荷し購入ができる。

デサントは「ランナーやスポーツを楽しむ方はもちろんですが、お年寄りや子供、スポーツ観戦を楽しむ方に対しても、暑い夏を快適に過ごしていただくため、デサントとシャープは『手のひら』を適温(12℃)で冷やす暑さ対策を提案していきます」と話している。

熱中症のリスクが高まる夏本番。続々登場する「ひんやりグッズ」を上手く使って安心・安全に過ごしてほしい。

【関連記事】
濡らして絞って振ったら「冷感持続」…水着メーカーが開発したマスクの仕組みを聞いた
首に掛ける“エアコン”が快適そう…なぜ涼しくなる?仕組みを聞いた

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。