ある意味本格派?「墓石屋さんのピザ窯」
「副業」が盛り上がっている2018年。
個人だけでなく、最近では銚子電鉄がスナック菓子「まずい棒」を売り出し空前の大ヒットを叩き出すなど、企業のサイドビジネスも面白い。
「なぜ、その会社がこんなものを?」とついつい興味をひかれてしまう“変化球アイテム”だが、たまたまお彼岸の週末、Twitterでこんな投稿が話題になっている。
墓石屋さんがピザ窯を受注する時代になった
40万そこらか…人によっては安いかも…人によってはですよ
ニーズなんて、どこにあるか分からんものだしなぁ。 pic.twitter.com/u8fuupPBO3— 鏡(かがみ) (@kagami08140) 2018年9月16日
「墓石屋さんがピザ窯を受注する時代になった」
鏡(@kagami08140)さんが投稿した写真は、とあるピザ屋さんに置かれていたパンフレットを撮影したものだという。
一見、普通の家庭用のピザ窯のようだが、その販売元は「一休さんのナイガイ」とある。
「一休さんのナイガイ」は今年3月に社名を変更し、現在「終活設計NAIGAI」となっているが、その名の通り、墓石販売や終活サポートを手がける会社なのだ。

ピザ窯といえば、レンガ造りの丸いフォルムをイメージする人が多いだろう。
しかし「一休さんのこだわりピザ窯」は、そのイメージに反するカッチリした四角さや名前のインパクトのせいか、大変失礼だが、どことなくお墓っぽさを醸し出しているように見えて仕方ない…
ある意味“和洋折衷”のシュールさにSNS上では「ピザ窯型のお墓かと思ったらガチのピザ窯だった」「お墓の代わりにピザ窯建てよう」と興味津々の声が挙がる中、「お寺にピザ窯あった」との報告も飛び出すなど、話題となったこの投稿。
冷静に考えれば、石材のプロが作るピザ窯は不思議なものではない上「むしろ本格派?」なのだが、どうにも違和感がある組み合わせの「墓石」と「ピザ」。
なぜピザ窯を販売しようと思ったのか?「終活設計NAIGAI」を運営する株式会社ナイガイにお話を聞くことができた。
ピザ専門店からオーダーも!
――なぜピザ窯を売り出すことに?
当社は建築石材製造の会社として50年前に設立したのですが、設立後間も無く、墓石の需要の高まりを機に、墓石の製造卸をメイン事業へとシフトしました。現在でも売り上げの8割は墓石卸です。
ここ15〜20年ほどの間に、墓石の新規建立件数と単価は年々減少基調にありまして、石材メーカーとして墓石以外の石製品を商品化できないかと社内アイデアを募ったり、地元の芸術大学とコラボレートしたり様々な試みを行ってきました。そのアイデアの中の一つがこのピザ窯です。
株式会社ナイガイは墓石の卸売がメインの会社でそのアンテナショップとして墓石小売の「終活設計NAIGAI」があります。位置付け上、企画商品はまず「終活設計NAIGAI」で扱うようにしているためです。
――実際に購入された方はどれくらいいる?
小売店舗のある狭いエリアでのセールスですので、微々たるものです。個人がほとんどですが、一件ピザ専門店にオーダーで納入させていただいたこともあります。
山形県を拠点とするエリアのため受注数はそれほどではないというが、ピザ窯を作るきっかけは、単なるサイドビジネスではなく、社会的な背景をふまえてのものだった。
お墓を建てない人が増えている現代で、石材のプロの技術と素材を生かす新たなビジネスが、「墓石」と「ピザ窯」の不思議なコラボレーションの正体だったワケだ。
――使っている石は墓石と同じもの?どんな石がピザ窯に向いている?
大谷石は、凝灰岩という属性の石材です。耐火性・保温性・保湿性からピザ窯としては国産材で最適と思われます。
今現在は墓石材として使用されることはほぼありません。
素材に使われている「大谷石(おおやいし)」はやわらかくて加工しやすく、耐火性に優れるため、石窯にピッタリの石なのだという。
かつては墓石にも使われていたが、やわらかい分強度に欠けることや、吸水率が高く経年変化してしまうため、最近はほぼ使われなくなっているのだという。
代わりに墓石には、硬くて丈夫な「花崗岩(御影石)」や「ハンレイ岩」が使われるのが主流となったが、こちらは耐火性が低いため、石窯には使えないという。
ざらりとした大谷石でなくつるつるの御影石の、いかにも「墓石!」テイストなピザ窯はできないようで、ちょっと残念だ。

――デザインにどことなくお墓っぽさを感じるような…
意識していません。一般の方の目には、「一休さん」と「お墓」と「ピザ窯」の取り合わせが面白く感じられたのかもしれませんが。
“純国産”ピザ窯は「焼き上がり良し!」
――こだわりポイントはどこ?ピザのお味は?
国産の大谷石ですが、耐火レンガに比べてやはり価格が高くなりますが、据付のものですので、まずエクステリアとしてルックスの高級感が全く違うという点。石材の保湿性と保温性がよく、焼き上がりの味も美味しいような気がします。気のせいかもしれませんが。

値段は2段式のものが税込39万5000円、1段式のものが税込31万5000円。
フタと土台は別売りになっていて、2段式のものをフルで揃えると45万6000円になるが、本体のみでも使用することは可能だそうだ。
現在「終活設計NAIGAI」の公式サイトに商品紹介ページは存在せず、店名変更に伴って「一休さんのこだわりピザ窯」から「終活設計NAIGAIのこだわりピザ窯」に名前も変わってしまったが、販売は変わらず行っているという。
東日本限定の販売となっているが、購入を希望する方は、電話で問い合わせてほしいとのことだ。
(電話:023-646-1919、FAX:023-646-1921、email:info@naigai-st.co.jp )