メーカー VS 環境団体

「ウォーカーズ宛のポテチ空袋を投函しないでと英王立郵便がアピール」
”Do not post crisp packets to Walkers, says Royal Mail”

 一見すると、質の悪いジョークが新たに流行り始めたのかと訝らざるを得ない内容のタイトルだが、イギリスのBBC放送のニュース・ウェブから引用したものである。同様のニュースが彼の地の報道を、先週、かなり賑わせたのでご紹介したい。

そもそも、どういう訳でポテトチップスの空き袋を投函するなというアピールが大真面目になされたのか説明すると、ウォーカーズはイギリスのポテトチップの有力メーカーの名前で、その袋の裏を見ると、製品に問題等がある場合はウォーカーズの私書箱に郵送してほしい旨の記載がある。それを逆手にとって、とある”環境”団体が意図的に空袋をそのまま送り返す運動を始めたというのである。

ウォーカーズのポテトチップスの袋はリサイクルが難しい素材でできているらしく、”環境”団体はこれに抗議する為、空袋の返送という行動を取ることにしたのである。

困ったのは郵便局

しかし、これに先に音を上げたのが、抗議行動の標的になったメーカーではなく、ロイヤル・ポスト(Royal Post)と呼ばれるイギリスの郵便局で、この”投函しないでアピール”になった。

ペラペラのプラスチック製の袋は郵便局の仕分け用機械を通らない。局員にとっては面倒この上無いのだが、可哀そうに、宛名がきちんと貼ってある場合に限るようだが、受取人払いの私書箱への郵送は法律の規定で断ることができないのだそうである。

捕鯨の話を持ち出すまでもないと思うが、イギリスを始め欧米には、尖がった行動に出る環境団体は珍しくない。
ウォーカーズは2025年までにリサイクル可能か自然分解される素材に置き換えるという公約をしているらしいので、この抗議行動も、やはり尖がった団体の尖がった行動なのかと思わざるを得ない。

この記事がイギリスで掲載された時点で王立郵便が取り扱った空き袋は30程だそうだから大した実害があったわけではないのだろうと推察する。よって、空袋郵送運動はシンボリックな宣伝目的の行動と思えばそれだけのことなのだが、念のため、更にBBCの関連記事を読んでみたら問題はそんなに単純ではないらしい。

プラスチックの功罪

リサイクル先進国であるはずの日本の関係者や意識の高い消費者には周知の事なのかもしれないが、例えば、プラスチックで密閉するのとしないのでは食品や食材の保ちが全然違い、最終的に無駄になる食品廃棄物の量に大きな差が出るという。代わりに瓶や缶詰を使うといってもプラスチック製品ほど汎用性が高くない上、重くなるため輸送や保管のコストやCO2排出量は増える。分解性の高いプラスチック素材はコストが上昇するだけでなく、リサイクル効率が悪くなるケースもあり、現時点では万能とは言えない、等々、課題は多いという。

マイクロ・プラスチックと呼ばれる極小化したプラスチック粒子が食物連鎖に乗って様々な生き物・ひいては人間に害をなすのは避けるべきことである。この点で、プラスチック・ストローの使用を控える動きが拡がり始めたのは良い兆しで、これを期に、なんでもかんでもプラスチックという考えが修正されるとすれば歓迎すべきである。しかし、問題は複雑、課題は多岐に亘る。これらを一挙に解決する画期的な発明が出ないものかとも思うが、結局、当分は地道な努力を積み重ねるしかないと、改めて考え至る次第である。

イギリス人が大好き! フィッシュ&チップス

最後に余談になるが、イギリスでポテチは冒頭の英文にあるように(ポテト)クリスプ(crisp)、もしくは複数形でクリスプス(crisps)という。イギリス人はこのクリスプスが大好きで、ランチにサンドイッチと小さなクリスプス一袋という組み合わせは極めて普通である。有力メーカーのウォーカーズの袋が注目される所以でもある。

因みにチップスを欲しいとイギリスで言うとフライド・ポテトが出て来る。フィッシュ&チップスのチップスはこの英国英語のチップスを指す事を蛇足ながら付記する。

(執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎)

(サムネイル:さいとうひさし)