家庭にいる児童・生徒と学校をつなぐ「ICT教育」

新型コロナウイルスの影響で懸念されているのが学習の遅れ。
国は今後、新たな感染の流行がきても家庭で十分な学習ができるよう、2020年度中に小中学生1人1台のタブレットを整備する方針だ。

新潟県内でも、臨時休校中にICT(情報通信技術)を使った学習の支援が行われている。
今、大きな変革の時にある学校教育の現場を取材した。

松村道子キャスター:
長岡市立南中学校では、オンラインで質問教室を行っています。奥から1年生、2年生、3年生の質問に先生が答えています。(先生の)隣に座っているのは、オンライン授業をサポートする先生。チームで授業に臨んでいます

理科の先生:
心臓から肺に向かう血液は酸素が少ないので、静脈血ですか動脈血ですか

生徒:
静脈血

理科の先生:
静脈血です

長岡市では5月の休校中、ウェブ会議システムを活用し、家庭にいる小中学生と学校をつないで、朝の学活や学習の疑問に答える質問教室に取り組んだ。

長岡市立南中学校 土田宗明先生:
しっかりと話が伝わっているかどうかが、普段は表情で分かるんですけれど、画面を(ボードに)切り替えて説明している時に生徒の表情が見えないので、この時伝わっているかどうかが心配になりました。ただ、「わかった」という人からマークをもらった時に、全員が反応してくれたのを見て、ちょっとうれしく思いました

松村道子キャスター:
教員歴は何年くらいになられますか?

長岡市立南中学校 土田宗明先生:
20年ちょっとですかね。(オンライン授業は)初めてです。頑張って対応していきたいなと思っています

コロナ対策でつけた力を“GIGAスクール構想”にも

長岡市教育委員会は、2020年3月の最初の休校を受け、全ての家庭を対象にネット環境に関するアンケート調査を行った。

松村道子キャスター:
4月8日にICT環境のアンケートをされたということで、非常に早い対応だったと思うんですけれども

長岡市教育委員会 佐々木潤指導主事:
3月の長期の休校があった時に、子どもたちが学校にいけない状況が続いて。学校への所属意識がだいぶ下がってきていて、ちょっと意欲が低下していると、学習意欲の低下が一番怖い。そこで何かできることはないかと、学習環境をどう整えられるかということで調査をさせていただいた

全ての家庭にネットワーク環境や端末がそろっているわけではなかったが、長岡市は学習意欲を維持するために、オンラインでの学活や質問教室の実施を決断。
端末のない家庭には、パソコンを貸し出した。

長岡市教育委員会 佐々木潤指導主事:
(長岡市の)先生方は、全員がこの機能(ビデオ会議システム)を使ってやるということになります。今後「GIGAスクール構想」などで、1人1台端末がくるとなったときにも、長岡の先生方は、そういった使い方も力をつけてくれたので、生かせるかなと考えています

GIGAスクール構想。
小中学生に1人1台の端末を整備し、ICT教育を推進する文部科学省の一大プロジェクトだ。

新型コロナウイルスを受け、文科省は、学びを保証するための緊急対策として、GIGAスクール構想に2,292億円の予算を計上。当初、2023年度を目指していた1人1台の端末配備を2020年度中に前倒しするという大きな決断を下した。

NST新潟総合テレビが県内の各市町村に取材したところ、今回の臨時休校中にICTを活用した学習サポートを行ったのは、長岡市のほか、動画配信を行った新潟市・三条市・燕市・聖篭町などに限られた。

しかし、日本デジタル教科書学会の会長で、富山大学大学院の長谷川春生准教授は、現場の教師は今後 環境が変わっても、子どもの力を引き出す十分な能力を持っていると話す。

富山大学大学院 長谷川春生准教授:
具体的な1時間1時間を、どう使ったら子どもたちが興味を持って、どうしたら子どもたちに分かりやすいのか。そういった授業のあり方を考える力は、教育現場の先生の力が一番ですので。ICTの活用についても、ぜひ進めていただきたい

動画学習で生まれる新しい学校教育の形

新潟県立教育センターは、休校による学習の遅れをサポートしようと、4月から県内の小中学生に向け授業動画を配信している。

この日は、中学3年生の英語の授業に即し、教科書の中の「make」を使った構文の学習動画の撮影が行われていた。

県立教育センターが作成した動画の数は200本にのぼり、制作は現在も続いている。
動画は全て教科書に沿った内容で、児童・生徒が家庭からアクセスし、学びを進めることができる。

新潟県立教育センター 泉田雅彦次長:
まず緊急的なこととしては、(新型コロナの)第2波・第3波に備えるという意味がありますし。そのほかの、例えば不登校で学校に来られない、病気で欠席をしている場合の対応であるとか、そういったことも考えられます

動画学習には、対面での授業にはない利点があるという。
その1つが、「とめてボタン」の活用。

新潟県立教育センター 泉田雅彦次長:
授業の中では、どうしても(問題を解き終わった子どもが)待たされたり、急いでやらなくてはいけない部分(子ども)が出てくる。画面をいったん止める、その間に自分のペースにあわせて学習を進めることができるということを配慮して、この『とめて』ボタンがついています

今後、1人1台の端末が整備されれば、動画教材で授業を進め、教師は、児童・生徒1人1人のフォローに専念するという新しい学校教育の形が生まれる可能性がある。
教える側は、魅力的な動画づくりに懸命。

松村道子キャスター:
先生、実際 目の前には生徒さん、児童さんはいらっしゃいませんけれども、どんなことを工夫してらっしゃるんですか?

先生:
できるだけ生徒がいると思って、視線を生徒がいる目印の方に合わせたり、生徒とのやりとりを想像しながら話をするようにしています

水筒を児童・生徒に見立て、ライブ感のある授業を目指していた。

新潟県立教育センター 泉田雅彦次長:
これまで、「物(端末)がないからやらない」とか、「通信環境がないから…」といった形でできなかった部分が、今回の(文科省の)施策で一気にできるようになってくるということなので。今度はわれわれが、どういうふうに(端末を)活用していくかを考える番なのかなと思っています

富山大学大学院 長谷川春生准教授:
今までだと、学校で使う物というと、鉛筆とかノートとか、そういったイメージだったと思うんですけど。端末についても、文房具と同じような感覚で使えるようになっていくことが望ましいと思っています

1人1台の端末が生み出す、教室の新しい景色…。
新型コロナウイルスが引き寄せた教育の大変革期は、今 私たちの目の前に来ている。
富山大学大学院の長谷川准教授は、これからの時代は「調べたいことを決めて、どう調べるかを考え、情報を分析し、まとめて人に伝える力が必要とされる」と話していた。
1人1台の端末が整備されれば、そういった学習も可能になると話している。

全国一斉の取り組みで、今後に向けては端末の確保など懸念材料もあるが、未来を担う子どもたちにとって、1台の端末が楽しく頼れる相棒になる日は近そうだ。

(新潟総合テレビ)