薬物事件で有罪判決を受けた9日後に、また覚醒剤事件で逮捕・起訴された、元アイドルの田中聖被告(36)の裁判が、午後2時から、千葉地裁松戸支部で開かれた。検察側は、論告で、懲役2年を求刑した。一方、弁護側は、執行猶予付きの「寛大な判決」を求めた。

閉廷前の最終意見陳述で田中被告は、「改めて、自分の考えの甘さや弱さからこのような事件を起こしたこと、誠に申し訳ございません。これ以上、親や大切な人を泣かせないように2度と再犯しないことをここに約束させていただきます」と述べて、頭を下げた。判決は今月27日に言い渡される。

去年9月、千葉県警柏署から保釈される田中被告
去年9月、千葉県警柏署から保釈される田中被告
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田中被告は、去年6月29日、千葉県柏市の柏駅で覚醒剤を所持していたところを現行犯逮捕された。パトロール中の警察官に対して、目をそらすなど不審な態度をとったことから、職務質問を受けたところ、覚醒剤が見つかったという。

さらに、尿鑑定の結果、覚醒剤の陽性反応が出たため、覚醒剤使用の疑いで再逮捕された(千葉事件では、覚醒剤所持・使用罪で起訴)。

田中被告をめぐっては、去年1月、名古屋市のホテルで覚醒剤を所持するなどして逮捕・起訴された(名古屋事件)。6月20日、名古屋地裁で、懲役1年8カ月・執行猶予3年の判決を受けた9日後に、今度は、実家のある千葉県で逮捕されたことになる。

千葉事件の初公判で起訴内容を認めた田中被告。11月27日に行われた被告人質問では、弁護士から「裁判で、もう二度と使わないと約束したのに、なぜまた使った?」と問われると、「社会復帰を目指していたのですが、ネットなどで覚えのない記事が出され、多くの誹謗中傷があり、それによる不安やストレスからです。薬物をやめなくてはと思っていたが、甘さと弱さから、自発的にやめられなかった。自身の愚かさを感じている」と答えた。

田中聖被告の論告求刑公判は、午後2時から、千葉地裁松戸支部で開かれた。
田中聖被告の論告求刑公判は、午後2時から、千葉地裁松戸支部で開かれた。

また、病院で治療を受けていることを明らかにした上で、「違法薬物をやめることを安易に考えていました。想像以上に大変なことで、専門的な治療を受けたいと考えました」と述べた。さらに、家族に対する思いを問われると、「情けなく、申し訳なく、安心させていきたい」などと話した。

田中被告をめぐっては、名古屋事件で、主張通り、執行猶予付きの判決を受けたにもかかわらず、控訴した。このため名古屋事件は刑が確定しておらず、今回の千葉事件の審理では、再犯としては扱われないという。

千葉地裁松戸支部を出る田中聖被告(午後2時半ごろ)
千葉地裁松戸支部を出る田中聖被告(午後2時半ごろ)

この点について、弁護側は、きょうの最終弁論で、「まだ、名古屋高裁は判決を言い渡していない。推定無罪の原則から、被告は罪を犯していない人として扱わなければいけない。将来への不安から覚せい剤を使用したもので、嗜好とは異なる。薬物依存から脱却する意思は強固で、再犯の恐れはない」と主張。執行猶予付きの判決を求めた。

これに対して検察側は、論告で「執行猶予付き判決の2日後には、薬物の使用を再開している。常習性は顕著で、再犯の恐れは大きい。厳重な処罰が不可欠」と強調し、懲役2年を求刑した。

判決9日後に逮捕された田中被告が、「薬物再犯」として裁かれ、実刑判決となるのか。それとも、執行猶予付きの判決が選択されるのか。地裁松戸支部の判断が注目される。

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社会部

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