大手ドラムメーカーが「消毒液スタンド」を発売

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、手洗いやうがいなどの基本的な対策が引き続き重要視されている。

多くの施設が営業を再開する中、自由に使える消毒スプレーが設置されていることも増えた。

そんな中、打楽器・フルートの製造・販売を手掛けるドラムメーカー大手のパール楽器製造株式会社が「ペダル式消毒液スタンド」を発表し、大きな話題となっている。

この記事の画像(6枚)

「ペダル式消毒液スタンド」は、シンバルをペダルの踏み込みで鳴らす「ハイハット」のスタンドをベースに、マレット(ばち)などを置くテーブルを組み合わせたもの。

ドラムを演奏するようにペダルを踏むと、テーブルに乗ったプッシュ式ボトルが押され、消毒液が出る仕組みだ。

ドラムセット左端にあるのが「ハイハット」
ドラムセット左端にあるのが「ハイハット」

6月1日にこの消毒液スタンドの販売が告知されると、SNSではたちまち「面白すぎる」「ナイスアイディア」の声が挙がり、また、ボトルに触らずに消毒液を出せることで「なんとなく触れるのをためらっていたから嬉しい」「仕方なく肘や手首で押してたから助かります」の声も寄せられた。

この人気からか、当初7月の販売に向け数量限定の予約販売としていたところ、6月3日には予定数に到達。受付を終了していたが、翌日4日には販売の継続が決定した。

インパクトのある見た目と、気になる接触を防げるこのアイテムだが、一体なぜ、楽器メーカーが消毒液スタンド開発に乗り出したのだろうか。

パール楽器製造の担当者にお話を伺った。

何千回と踏み込むドラムがベース 耐久性はお墨付き

――今回「ペダル式消毒液スタンド」を販売したきっかけは?

ドラムセットを使った「ペダル式消毒液スタンド」は我々が0から生み出したアイデアではなく、以前からSNSなどで一般の方が作ったりと、その面白さが話題になっていました。

そんな中、話題となっている「ペダル式消毒液スタンド」を我々が製品化すれば、一般の方に手に取ってもらえる機会が増え、消毒や二次感染を予防する意識を高めることにつながるのでは、と考えたことがきっかけです。

楽器メーカーとして少しでも社会に貢献ができれば、音楽や楽器を通じてよいイメージを作っていければ、と考えています。
 

パール楽器によると、そもそもハイハットスタンドを活用した消毒液スタンドは、一般ユーザーや楽器店が独自に作ったものをSNSなどにアップした動画が話題となっていたという。そのアイデアをもとに、自社製品をアレンジして完成したのがこの「ペダル式消毒液スタンド」だった。

スタンドに使われているパーツは通常のドラムセットに使われているものと同じだが、唯一今回のために開発されたのが、ボトルをプッシュする「スライドプレート」というパーツで、様々な形状のボトルに対応できるよう、位置を調節できる仕組みになっている。

新しく開発した「スライドプレート」
新しく開発した「スライドプレート」

――どんな場面で役立つ?

楽器がベースとなっているのでライブハウスやリハーサルスタジオなどがすぐに思い浮かぶかと思いますが、折りたたんで持ち運ぶことができ、三脚がついているのでどこにでも設置できるということを活かして、たとえば野外でのドラマ撮影現場、建設現場などで使っていただくこともできます。

「ペダル式消毒液スタンド」が広まり、思いがけない場所で使っていただければと思います。

――ドラムセットだからこその“強み”はある?

ドラムセットは何年も使い続け、何千回と踏み込まれるものですので、やはり耐久性の面では自信があります。また、すべて楽器のパーツでできているので、ネジなどを交換したいときはすぐに手に入れることができるなど、アフターサービスにも対応できますので、ぜひ長く愛用していただきたいと思います。

「コロナが終息しないと音楽は始まらない」

右足でペダルを踏む解説動画に「ハイハットだから左足で踏んでほしかった」など、思わずクスリと笑ってしまうような声も寄せられるなど、大きな話題となった「ペダル式消毒液スタンド」。

そのユニークな見た目から、ジョークグッズのように見えた人もいるかもしれないが、発売には厳しい状況に置かれている音楽業界の再生への願いが込められているという。


――非常に大きな反響がありましたが、感想は…

現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アーティストの方々が活動できなかったり、またライブハウス自体もクラスター発生などマイナスイメージがあり、音楽業界全体が厳しい状況にあります。

今回、この商品を発表することで「新型コロナウイルスの感染拡大に“便乗”しているのでは」と思われてしまうのではないかなど、大きな不安がありました。しかし、音楽業界だけでなく、あらゆる業界が打撃を受けている中で、「まずはコロナが終息しないと音楽は始まらない」という意識があり、音楽業界の再生のため、何かしらの形で社会貢献がしたいと思い発売に踏み切りました。

発表後は温かいお言葉・反響をいただき、安心しています。楽器に触れたことがない方からも、「ペダルを踏みたい!」という声をいただいています。「ペダル式消毒液スタンド」が消毒の意識づけ、二次感染予防に役立ってくれればと思います。

もちろん左足で踏み込んでもOK(Youtubeより)
もちろん左足で踏み込んでもOK(Youtubeより)

「ペダル式消毒液スタンド」は一台15,000円(税抜)。「お求めの際は、お近くのパール製品取扱いの『楽器店』まで、お問い合わせください」とのことだ。

新型コロナウイルスとの闘いはまだ続きそうだが、まずはできるところから「新しい生活様式」を始めていくことが大切。ついつい踏みたくなるペダルと消毒スタンドの組み合わせが、音楽業界の再生にもつながっていくことを願いたい。
 

【関連記事】
重さ1.6キロ…“鬼師”が本気で作る「鬼瓦ティッシュケース」がインパクト大! 製作者に聞いてみた
仏具の「チーン!」が自転車のベルに…京都のおりん職人が作り出す“こだわりの音色”が心地いい

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。