在宅でも“ハラスメント”が…上司へのアンケート

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅での勤務が増えている現在。

オンラインサービスを利用したビデオ会議やメールでのやりとりに慣れてきたという人も多いだろうが、そんな中、“リモハラ(リモート・ハラスメント)”なる言葉もさっそく登場している。

SNSには「1時間ごとにメールで進捗状況を確認されて困る」「『サボっているのではないか』と言われた」など様々な声が挙がっているが、上司側はどう感じているのか?そんな中、「テレワークにおけるハラスメントの実態調査」の結果を、ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社が発表した。​

この調査は、テレワーク業務で部下とコミュニケーションを取っている会社員109名を対象としたインターネットリサーチ(5月22~23日の2日間、東京・千葉・神奈川在住の男女が対象)。

回答者は男性84.4%・女性15.6%と男性が多く、年齢の内訳は
30〜39歳:19.3%
40〜49歳:30.3%
50〜59歳:40.4%
60歳以上:10.0%
となっている。


まず、「あなたは現在、リモートでの部下とのコミュニケーションの取り方に悩んでいますか」という質問には「かなり悩んでいる」「少し悩んでいる」が50.5%「あまり悩んでいない」「全く悩んでいない」が49.5%。

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悩んでいる、と回答した人がその理由に最も多く挙げたのが、「部下との距離感(56.4%)」、次いで「部下への指示出しタイミング(49.1%)」、「部下に対する行動管理方法(47.3%)」という結果になった。

質問の選択肢以外でも「部下とのコミュニケーションの取り方に悩んでいる点」として挙がったのが、

・44歳:文字でのやり取りが増えた分、感情が読み取りにくい
・44歳:反応が遅かったり、顔が分からないので状況が分からない
・46歳:顔色がわからない
・53歳:実際の成果を見る以外に、さぼっていないかを確認する手だてがない。
・55歳:コミュニケーションの距離感

など。

そして一方で、悩める上司たちがそんな状況の中で“リモハラ”をしないために努力していることも見えてきた。

「ハラスメントにならないようにどのような点に普段より気を付けているか」という質問には、

・39歳:表情が見えないので、曖昧な表現を避ける
・46歳:強めの言葉を避ける
・47歳:皆に気を配る
・53歳:監視し過ぎるようなコメントは避ける

など、顔が見えなかったり文字でのコミュニケーションが多いリモートワークだからこそ、言葉遣いなどには十分気をつけている、という声もあった。

「パワハラ防止法」の認知度は低い

さらに、仕事をする上で、部下に対するハラスメントを防止するために必要だと思うものについては、「仕事とプライベートの棲み分け(52.3%)」「ハラスメントに関するきちんとした知識の取得(45.0%)」「ハラスメントに関する明確な項目(39.4%)」が上位3つという結果になった。
 

ハラスメントへの意識は高い一方で、6月1日に施行された「パワハラ防止法」については、「詳しく知っている」「ある程度知っている」人は44.0%と、半数以下だった。

慣れないリモートワークの中で「パワハラ防止法」が始まり、部下とのコミュニケーションに悩む上司。

では、どんな言動を避ければ“リモハラ上司”にならずに済むのだろうか。
ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社のハラスメント対策専門家・倉本祐子代表にお話を伺った。

「見て見ぬふり」をすることもリモートワークでは大事

――“リモハラ”は実際に増えてきている?

増えていると感じていますし、相談件数が増えています。


――どんな言動が“リモハラ”に当たる?

・仕事をしているのかどうか、カメラをずっとonにしたままを要求し、席にいないと怒られる
・web会議システムがない会社の場合、仕事をしているかどうか写真を撮って送ってくるよう指示がある
・webMTGの会議で、みんなが参加している前で、長々と怒鳴られる
・休校中の子供が、会議中に声を挙げてうるさくしたため、会議を途中退席したところ、後で上司から電話がかかってきて、怒られた
・残業申請をしたら「自宅で仕事しているのに、そんなにやったのか?」と疑われ、申請を許可してもらえなかった
・家族構成を細かく聞かれ、画像に映して紹介しろと言われた
・「どうせ(自粛で)家にいるんだから、暇でしょ?二人で飲もうよ」と誘われる
・社内のオンライン飲み会で、「かわいいね、その服、全身見せてよ」「部屋の中を見るの初めてだ、なんか新鮮だね」「そのベッドでいつも寝てるの?そうなんだ、俺も寝てみたいな」と酔った上司に言われる
・社内のオンライン飲み会で、「お風呂入ろうかな」と洋服を脱ぎだす

などです。


――では、上司はどんな点に気をつければ良い?

これはハラスメント対策として、いつも伝えていることですが、

人づきあいの注意点について…
(1)理由もなくプライベートの質問をしない
(2)相手を見下した言い方をしないように、自分の言動に気を付けること
(3)自分の価値観を押し付けないこと。

例:私は家事もして、夜中まで働いている、あなたは独身で時間あるのに、なんでもっとやらないの?等のような、自分基準で自分の価値観を押し付けないこと。
 
オンラインでは、特に注意するべきこと…
(1)画面上、気になることがあったとしても、見て見ぬふりをすること。
(2)リアルで会うよりも意思の疎通が難しいことを前提にして、配慮ある言動を心がける
(3)相手の状況を推し量り、無理難題を言わない。


子育て中の人、介護中の人、一人暮らしと言いつつ同棲している人、色んな人がいます。
その人なりの事情があるかもしれないので、自分基準で物事を考えないことです。

様々な環境を想定することが“リモハラ”防止につながる(イメージ)
様々な環境を想定することが“リモハラ”防止につながる(イメージ)

実際に相談件数が増えているという“リモハラ”。

直接部下の様子を確認できなくなったことで「ちゃんと仕事できているのか?」と不安に思ったり、普段とは違う状況で気になる発見があってつい口にしてしまったり…というのも理解できなくはないが、たとえば毎日決まった時刻に進捗状況を確認するなど、過干渉と思われない範囲での管理方法を決めることがひとつの解決策になるだろう。

また、必要なのが想定外の出来事が起こりうることを承知しておくことだという。
たとえば「子どもがオンライン会議中に声をかけてくる」など、会社の中では起こりえないイレギュラーな事態が発生することもあるが、このような状況を非難したり「絶対に子どもが邪魔をしない環境を作れ」などの無理難題を押し付けるのはNG。
可能な限りで解決策を探し、また、部下も起こりうるイレギュラーな事態を事前に伝えておくことが大切になってくるだろう。

そして、ちょっとしたコミュニケーションのつもりであっても、プライベートには踏み込まないと決めておくのがスムーズなやりとりに繋がるだろう。

すべての社員が「パワハラと指導の境界を知るべき」

一方の部下も「果たしてこれは“ハラスメント”と捉えるべきなのか?」と考えることが必要。倉本氏はすべての社員が「パワハラと指導の境界線を知る」ことが大切だと話す。


――今後、パワハラに関する知識を身につけていくにはどのようなことが必要?

(1)まずは、社内研修、管理職だけではなくすべての社員が知るべきです。なぜなら、若手がなんでもかんでも「それ、パワハラですね」と言ってくる事例が非常に増えました。管理職としては、そう言われると何も言えないため、「若手と話したくない」と指導に対して後ろ向きになります。

「自分の嫌な仕事を頼まれたから、パワハラだ」
「遅刻を人前で叱られたから、パワハラだ」
「全国転勤ありと言われて就職したのに、本社から地方へ転勤を命じられ、パワハラだ」

と、相談窓口に相談に来る人が多々あると良く耳にします。以上の理由から、管理職だけではなくすべての社員が、パワハラと指導の境界線を知るべきです。


(2)社内窓口を整備し、誰もが使えるようにする。
「うちの会社には、そういう相談はありません、だからハラスメントは起こっていません」というのは、相談窓口が知られていないのと同じです。または、「相談しても、会社は何も変わらない」と思えば、相談することはありません。ですので、改めて相談窓口があることの啓発、誰もが使えること、どんな話でも聞けることを強調すべきです。

(3)上記の上で、行為者も被害者のプライバシーを守ることを約束すべきです。
例えば、「うちでパワハラが遭ったので、研修してください」と言われて研修に伺うと、ある特定の人を、役員の方がずっと視線を送り監視していました。研修が終わって、担当者に「もしかすると、あの席に座っていた(監視されていた)方がパワハラをされましたか?」と尋ねると、そうでした。
パワハラをしたからといっても、改善するために研修を受けているはずなので、そこまであからさまにするのは、新たなハラスメントを作ってしまいます。行為者であっても、プライバシー、尊厳を守る必要があると考えます。

(4)上司と部下で話し合う機会を増やすこと。不安や不満は、怒りを増やしたり、心が安定しないものです。1on1のような、お互いの意見交換をする機会をこまめにとって、適切なコミュニケーションをとることが必要になると考えます。


注目されつつある“リモハラ”。
今回の調査では上司も悩んでいることがわかったが、在宅勤務の機会が増えていくことで次第に解決していくものかもしれない。そのために上司・部下ともに適度なコミュニケーションをとるよう努力することが重要なようだ。

(グラフ画像:ハラスメント対策の研修を専門にしているダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社調べ)

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プライムオンライン編集部
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