小学校講師の女と、交際相手の自営業の男が、営利目的で大麻を所持したとして、警視庁に逮捕された。2人の口からは、薬物漬けの同棲生活の実態が、赤裸々に語られた。

「はい、大麻があります」

自営業の出町恭太郎容疑者(31)と、区立学校の非常勤講師の安部綾香容疑者(28)は、今月20日、同棲している東京・渋谷区東の自宅マンションで、乾燥大麻およそ2グラムを、密売する目的で、所持した疑いが持たれている。

逮捕された出町恭太郎容疑者(31)(23日 板橋署)
逮捕された出町恭太郎容疑者(31)(23日 板橋署)
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逮捕された安部綾香容疑者(28)(23日 板橋署)
逮捕された安部綾香容疑者(28)(23日 板橋署)

この4日前の16日早朝、警視庁板橋署の捜査員らが、現場のマンションに踏み込んでいた。実は、去年末、出町容疑者の大麻所持に関する情報提供が寄せられ、内偵捜査が進められていたという。

「なぜ、警察が来たか分かるか?」との問いに対して、出町容疑者は、観念したのか、「はい、大麻などがあります」と答えたとのこと。

そして始まった家宅捜索。室内からは、”動かぬ証拠”が相次いで発見された。キッチンのコンロ脇には、ラップに巻かれた乾燥大麻が、チャックが付いた袋の中に入っていたという。捜査員に確認を求められると、出町容疑者は「これは大麻です」と認めたそうだ。

MDMA、LSDも所持か

家宅捜索が進められると、大麻を砕く際に使っていたとみられるクラッシャーや計量器、吸引するために使う水パイプや巻紙などが、次々と出てきた。吸引器具は焦げていて、使用した跡が、生々しく残されていた。

押収された吸引器具など(23日 板橋署)
押収された吸引器具など(23日 板橋署)
吸引器具などには、使用された痕跡があった
吸引器具などには、使用された痕跡があった

さらに、大麻以外の”違法薬物”が入った紙袋も見つかった。中には、高揚感や多幸感が得られるとされる合成麻薬「MDMA」とみられるカプセルが35錠、また、幻覚作用をもたらす「LSD」とみられる薬物もあったという。

結局、押収された大麻は、およそ32グラム(逮捕容疑分を含む)=末端価格およそ19万円相当にのぼった。2人は、20日深夜に、大麻取締法違反の疑いで逮捕されたのだった。

”営利目的”を認める2人

板橋署の調べに対して出町容疑者は、「自宅に所持していたのは大麻で、彼女である安部綾香と一緒に使用していた。他人に売ったこともあります」「過去には何度か大麻を仕入れ値より高く売ったことや、知人に渡したこともあります」と供述。

出町容疑者、安部容疑者ともに、営利目的の大麻所持容疑を認めている
出町容疑者、安部容疑者ともに、営利目的の大麻所持容疑を認めている

また、安部容疑者も、「家にあった大麻は私と彼のもので、私も吸っています。彼が他の人にもあげていたようですが、相手が誰なのか、いくらで渡していたのか、詳しいことは知りません」と話しているという。

2人の供述からも、自己使用目的ではなく、より罪の重い、営利目的で、大麻を所持していたことが裏付けられたのだった。その後の調べで、”カレ”と”カノジョ”の薬物漬けの同棲生活が明らかになっていった。

パワハラ、借金、ストレスから大麻を

「私が大麻を始めたキッカケは中学生のころ。地元の先輩や同級生に勧められて使用しました」。取り調べの際に、そう打ち明けた出町容疑者。その後、大学を卒業したものの、就職先でパワハラを受けたり、借金などにより、徐々に、精神的に追いつめられて行ったという。

出町容疑者は、2000年、仙台市内で、大麻事件で逮捕。その後、上京することに。
出町容疑者は、2000年、仙台市内で、大麻事件で逮捕。その後、上京することに。

そして「精神を安定させたい」と思い、大麻に手を出したとのこと。転職を繰り返した出町容疑者だったが、結局、大麻を止めることはできなかったそうだ。「イライラが高まり、自分勝手な理由で、大麻を継続的に使いました」などと当時を振り返っているという。

そんな中、出町容疑者は逮捕される。2020年、仙台市内で、警察官に職務質問を受けた際、所持していた大麻が見つかったのだった。この逮捕をキッカケに、大麻と手を切ろうと誓った出町容疑者は、上京することを決意したという。

合コンで出会い、同棲

上京後、出町容疑者は、個人事業主として、ホームページなどの作成を手がける会社を起こしたとのこと。しかし、新しい生活もうまくいかなかったという。「仕事のストレスや不眠症に悩まされて」、再び大麻の使用を始めたそうだ。

2人が同棲していたマンションに、今月16日早朝、家宅捜索が入った(東京・渋谷区)
2人が同棲していたマンションに、今月16日早朝、家宅捜索が入った(東京・渋谷区)

そんな中、2021年8月、出町容疑者は、安部容疑者と知り合う。出会いの場は、合コンだったという。出町容疑者が、大麻の話題を持ち出すも、安部容疑者は、”拒絶反応”を示さなかったとのこと。

意気投合した2人は、交際を開始。同棲もスタートさせて、大麻などの違法薬物を、一緒に使用するようになったという。

「大麻が好きになった」

「私が大麻を始めたキッカケは22歳ごろ、渋谷のクラブで知り合った人の家に行って、大麻の回し吸いをしたのが初めてです」。自らの”大麻経験”をそう告白した安部容疑者。出町容疑者と知り合ってから、さらに違法薬物にのめり込んでいったとみられている。

安倍容疑者は、出町容疑者と出会い、違法薬物にのめり込んでいったという
安倍容疑者は、出町容疑者と出会い、違法薬物にのめり込んでいったという

取り調べに対しても、「現在の同棲相手である出町くんと付き合うようになって、一緒に大麻を吸うようになると、リラックスしたり、眠くなったり、食欲が増える感覚を覚えて、大麻が好きになった」と打ち明けているとのこと。

安部容疑者は、現在、区立小学校に非常勤講師として勤務。障害のある児童や学習の遅れが目立つ子どもの支援・ケアを担当しているという。そんな安部容疑者は、違法薬物の使用頻度について、「1週間に2~3回から4回、彼と大麻を吸っています」と供述しているという。

調べに対して出町容疑者は、「MDMAもLSDも、彼女と一緒に使用していました」と話している。このカップルは、”ゲートウェイドラッグ”とも呼ばれる大麻から、麻薬へと手を染めていったのか。板橋署は、今後、MDMA・LSDについても鑑定を進め、余罪として立件するとともに、入手経路を捜査する方針だ。

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社会部
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