ワシの耳ってどこにあるの?

これまでに編集部は、「どう見てもエビに見えないムギワラエビ」、「ラッパみたいなムカデメリベ」など、様々な生き物の奥深さを伝えてきた。そして、今回は「ワシ」だ。

保全医学をテーマとして、北海道・釧路市を拠点に希少猛禽類の保護や研究活動を行っている、野生動物専門の動物病院「猛禽類医学研究所」の代表、齊藤慶輔さんがTwitterに投稿した、ワシに関するとあるツイートが7日現在、約2万のいいねがつき、話題になっている。

それは「ワシの耳ってどんな形?」というもの。
考えたことがなかった人も多いと思うが、その答えがこちら!




ワシの耳ってどこにあるの?とよく聞かれます。はい、ここにあります!
(猛禽類医学研究所・齊藤慶輔さんTwitterより)

ワシの目の近くの体毛をかき分けてみると、耳というよりかは、少し大きめな“穴”があり、人間の耳とは違い、耳介(外に出ている耳の部分)がなく、瞳孔と同じくらいの大きさをした空間がある印象だ。

Twitter上では、初めて目にしたワシの耳に、驚いた声が多く投稿されていた。

・穴が大きくて心配…ワシも中耳炎になったら痛かろう…
・わー、大きい!ひそひそ話も聞かれちゃうなあ。
・頭の大きさに比べて大きなお耳!!


撮影した同研究所の代表であり、獣医師でもある齊藤さんによると、今回の写真も、決して興味本位で撮影したものではなく、啓発活動に利用するため、傷病個体の診療時に撮影したもので、外部寄生虫のシラミバエが発生していないかの身体検査を行っていたそうだ。耳孔の中に入り込んでいる可能性があるため、必ず診る必要があるとのこと。

そして、このワシは「オジロワシ」という種類で、文化財保護法により天然記念物に指定されている、絶滅危惧種とのことだ。

それにしても、本当に大きな耳だ。さぞかし、遠くまでよく聞こえるのではないか。齊藤さんに、お話を伺ってみた。

「200~300メートルは聞こえていると思います」

ーーとても大きな耳だが、ワシの聴覚はどれくらい?狩りをする際、役立つ?

ワシの聴覚についての研究はされていないと思われます。音声の到達距離は気象条件にもよりますからね。観察をしてみての実感としましては、200~300メートルは聞こえていると思いますが、科学的な根拠はありません。

また、ワシは聴覚ではなく、視覚をメインに狩りなどの行動を行っております。レントゲンを撮影してみると判るのですが、頭部の半分から3分の2くらいは、眼球で占められています。

オジロワシ(提供:齊藤慶輔さん)
この記事の画像(5枚)

ーー耳に異物や垢がたまった場合は、どのように手入れをする?ツイートで寄せられていたが、中耳炎になったりは?

耳の穴は普段、羽毛の下に隠れておりまして、羽毛は水をはじくため、雨に濡れても羽毛が耳を守っているかと思います。また、水の中に潜る種でもありません。
ちなみに、オジロワシ含め、鳥類は一般的に耳の手入れはしません。ツイートで指摘されている、いわゆる中耳炎になった鳥類は見たことがありません。

フクロウの耳は見たことありますか?

ーーワシ以外の鳥の耳は?

身近な鳥類でもあります、スズメやハトに関して言いますと、耳の位置関係はワシと同様で、目のやや後ろ側にあります。しかし、明らかに大きさも形も違うのが、フクロウです。

フクロウの耳(齊藤慶輔さんTwitterより)

こちらは「フクロウ」という種名の右耳です。聴覚を頼りに狩りをするフクロウは、こんなに大きな耳を持っているんです。聴覚を頼りにしてネズミ類などを狩るフクロウ類では、耳が良く発達しています。

また、耳に蓋(イヤーフラップ)がある種もいます。希少種で、魚を餌とする「シマフクロウ」は、耳が発達しておりませんので、小さな耳孔をしています。水の中を泳ぐ魚類を、聴覚で狩ることはできませんので。
シマフクロウは北海道に160羽程しか生息していない、絶滅危惧種です。翼を広げると160~180cmにもなる世界最大級のフクロウ類です。



写真がアップで少しわかりづらいかもしれないが、写真左上がクチバシの方向で、鳥は仰向けの状態。目のすぐ横に耳があり、フクロウのつぶらな瞳と比べると、ずいぶんと耳が大きいことが分かる。
また、ワシとは違い耳孔だけではなく、穴の周囲には広がった耳介状の羽毛があり、耳孔を覆っている。

世界最大級のフクロウ類「シマフクロウ」

ーー猛禽類医学研究所は、希少猛禽類の保護や研究活動を行っているとのことだが、現在すすめている研究は?

私達は、傷ついた希少猛禽類を治療し、野生に返す試みを中心に活動しています(環境省委託事業)。北海道に生息するオオワシ・オジロワシ・シマフクロウに対する保全活動の一環として、「環境治療」をテーマに、事故対策や各種研究・啓発活動を行い、彼らとの共生を目指しています。また、野生動物の生態や現状の多くは未だ解明されておりません。自然界で起きている異変をいち早く把握し、生息環境の保全に繋げることも、私たちの大切な仕事です。


今回の取材では、鳥の耳についていろいろと発見があった。
さらに齊藤さんは希少猛禽類の保護についても、車や列車との衝突事故・発電用の風車への衝突・感電、被弾したシカを食べることなどで起きる鉛弾による鉛中毒など、私たちの暮らしの一部が、希少猛禽類への脅威となっていると語った。運び込まれてくる個体の死亡傷病原因のほとんどは、人間によるものだとし、同研究所では特に、「鉛中毒の根絶」に力を入れているという。

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