トランプは魔法使い!

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「今夜はとてつもない成功だ。みんな、ありがとう!」
“Tremendous success tonight. Thank you all!” 

6日のアメリカの中間選挙(連邦議会・州知事選挙)で、与党・共和党が上院で議席を伸ばして過半数を維持したことなどを受け、その日の夜、トランプ大統領はツイートし、このように選挙を振り返った。
そして、とある評論家の以下のような言葉を臆面もなく引用して自画自賛した。 

「トランプは魔法使いだ。全米のメディアが彼を敵視し連日攻撃したにも関わらず、彼は上院で議席を伸ばすという重大な勝利を引き寄せた。」
“Trump is the magic man. Incredible, he’s got the entire media against him, attacking him every day, and he pulls out these enormous wins.” 

トランプ大統領が応援に力を入れた幾つかの州の上院議員選挙で勝利を引き寄せたのは紛れもない事実である。これらの州ではトランプ・マジックは確かに健在だった。
しかし、野党・民主党が下院で過半数を奪還したのには、それが戦前の予想通りだったとはいえ、相当腹を立てていたようだ。

翌日の記者会見では今や”宿敵”となっているCNNのホワイトハウス担当記者らに、質問の仕方やその内容が気に入らないと言って不満をぶちまけ、その後、難癖をつけてCNN記者の記者証を取り上げるという前代未聞の嫌がらせに出た。

さらに、返す刀でセッションズ司法長官を解任した。
モラー特別検察官のロシア疑惑捜査に対するコントロールを放棄した等としてトランプ大統領は以前からセッションズ司法長官を批判し続けてきた。なので更迭自体は時間の問題というのが大方の見方だった。
しかし、選挙翌日の電光石火の解任は多くを驚かせたし、一部報道によれば、せめて今週一杯、金曜日までその職に留まらせて欲しいというセッションズ氏の願いを一顧だにしなかったらしい。

筆者にはいずれも下院選敗北の八つ当たりをしているようにしか見えない。
今さらトランプ大統領を大人げないと批判しても誰も驚かないだろうが、やはり大人げない。駄々っ子のようだ。中間選挙で現職大統領の与党が苦戦するのは珍しいことではない。しかも、これが必ず次の大統領選挙を左右するというものでもない。次の選挙は2020年、2年も先だ。が、この際、鬼に笑ってもらうことにした。

注目すべきは“白人女性”と“若者”票

6日のアメリカの中間選挙(連邦議会・州知事選挙)では、若者の投票率が増加し、白人女性の共和党支持が減少した。

CNNと調査会社が実施した出口調査やそれを基にした現地報道などをみると、大雑把に言って前回中間選挙では有権者の3人に1人強しか投票しなかったのが、今回はほぼ2人に1人に増加したと推定されるいう。

投票率に関する正確なデータはまだ無いのだが、投票率アップの理由は若者の増加と各地で伝えられている。そして、その29歳以下の若い有権者のほぼ3人に2人が民主党候補に投票したと出口調査は伝えている。

トランプ候補が勝利した2016年の大統領選挙では、民主党の左派を支持する若者の相当数がヒラリー・クリントン候補を嫌い棄権したと言われている。これがクリントン候補の敗因の一つになった。しかし、次回大統領選挙で、今回のように若者の投票率が上がれば、トランプ大統領には脅威になる。 

また、出口調査によれば今回中間選挙での白人女性の投票先が共和党49%vs民主党49%と拮抗した。16年大統領選挙では、クリントン陣営の期待に反し、白人女性の6割強がトランプ候補に投票し、その勝利に貢献したのだが、今回は白人女性の共和党離れが起き始めていると見ることもできる。民主党が各地で女性候補を数多く擁立した効果もあると思われるが、次回大統領選挙でも同様の現象が続くとトランプ大統領には痛い。

史上初の女性候補、ヒラリー・クリントン氏を16年には見捨てた層が再び民主党支持に回帰し始めていると出口調査が示しているとすれば、トランプ再選に黄信号が灯る。トランプ大統領には今なお固い支持基盤である白人男性層は頼りの味方になるが、それだけでは足りない。
当然、トランプ大統領はなりふりかまわず実績作りに力を入れることになる。

これからが“正念場”

下院を民主党に牛耳られると予算措置などが思うように行かなくなる。ロシア疑惑やトランプ一家の税務対策問題等の追及も強まる。内政は難しくなる。勢い、通商問題や安全保障問題で性急に成果を求め始める恐れが強い。

長年の宿敵・イランや今や一大対抗勢力となった中国に対する圧力に比べれば、日本へのそれは大したものではないが、トランプ大統領は記者の質問に応え
「安倍総理にはいつも日本はアメリカを交易で公平に扱っていないと言っている。」
“I tell him all the time that Japan does not treat the United States fairly on trade.”
と述べ、今後要求を強める構えを見せている。

安倍政権としては、自動車や牛肉問題などでいつどのような妥協案を提示し、トランプ大統領に花を持たせるか、難しい判断を迫られるだろう。 

北朝鮮の核問題に関しては「急がない。制裁は続ける。」
 ”I’m in no rush. The sanctions are on.”

と依然、基本姿勢を変えるそぶりはない。しかし、これがいつまでもつのか不安は消えない。 

次回大統領選挙に向けた予備選挙があと1年余りで始まることを考えるとトランプ大統領にとって次の1年~1年半は正念場になる。この間、痺れを切らして性急な行動に出る危うさが常に付き纏う。


(執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎)