TOTO株式会社の総合研究所では水まわりの汚れの原因を解明し、きれいで快適な生活をご提供するためさまざまな技術を商品に生かしています。今回ご紹介する「ニオイ」の達人、山本政宏さんは臭いにおいの原因を追い続けて、快適な水まわり商品の開発に挑む研究者です。好奇心とたゆまぬ鼻の訓練でニオイや汚れと向かい合う研究をお届けします。



TOTO株式会社 もの創り技術グループ 総合研究所 素材革新PJ 

主席研究員 山本政宏(やまもとまさひろ)


聞き手:TOTO株式会社 広報部 東京広報グループ 阿部園子


――入社してからトイレのニオイや汚れの原因追求、それらの発生プロセスを解明、対策に携わったそうですね。


山本:入社1年目から「トイレのニオイを嗅がせてください」と言って鉄道会社の駅長さんを訪ねていました。当時は、目がしばしばするような臭気が漂っているパブリックトイレが多く、特に通勤経路にあった駅のトイレは強烈なニオイを放っていました。


私は大学で環境化学を専攻していたこともあり、水まわりの汚れの原因、臭気、有機材料などの化学分析の業務に就くことになりました。それから約30年、特に臭いニオイが発生するメカニズムを解明して対策に携わっています。



<駅舎のトイレでニオイの空気(ガス)を調査している様子(2015年頃)>


――「トイレのニオイを嗅がせてください」というお願いをすることに抵抗はなかったのでしょうか。


山本:私は「悪臭が好き」では決してないのですが、何が原因でこんなにクサいのか知りたい、どの微生物が悪さをしているのか知りたい……と好奇心が勝ってしまうので、入社後すぐでしたが、抵抗はありませんでした。


水まわり空間でのニオイや汚れが発生するメカニズムがわかってくると、こういう商品がいいのではないか、このような素材を使ってはどうか……などアイデアがどんどん湧いてきます。今までの分析ではわからなかったことが明らかになったり、新しい方法が見えてきたりすると本当にワクワクして、好奇心が先に出てしまいます。


原因の解明後はどのような表面だったら汚れにくいのか、こういう素材を作ったらどうか、こういう商品がいいですよと関連部門へ提案したり、プレゼンテーション資料の基になるような情報を提供したりしています。


――駅のトイレでは具体的にどのような調査をしたのですか。


山本:トイレのニオイを収集するんです。利用者のご迷惑にならないように機材を置かせてもらって3時間ぐらいかけて、トイレの空気(ガス)の採集や、自分でも小便器の下や周囲からニオイの元となる空気(ガス)を嗅いだりしていました。

駅舎のトイレに調査機器を設置      トイレ内の空気(ガス)を採集している

(1995年頃)             様子(1995年頃)


私は「クサい」場所には抵抗はないんです。なぜならば、どうしてこんなに汚れるのか、得体のしれないニオイがしているのか理論で解釈しているので抵抗や恐れなど感じないのです。ニオイの原因を突き止めること、ニオイが発生するプロセスを解明して、悪臭を抑える方法を考えることのほうに興味が沸いてきます。


パブリックトイレのニオイは、床などに垂れた尿が腐敗し、尿素などの尿中の無臭の物質が微生物によって分解されてアンモニアやトリメチルアミンといった悪臭物質となることが主な原因です。しかし、その発生メカニズムは場所の環境、設置されている商品によって異なっているので、例えば駅構内のトイレでも駅によってニオイの強さや悪臭物質の種類が大きく異なります。ニオイがどう変化しているのか、現場で何が起きているのか知ることが、重要です。実験室でも環境を再現して、対策を考えてトライする、これを繰り返しています。



――水まわり空間の汚れのもととなっているニオイを嗅ぎわける「鼻」をお持ちだと聞きました。


山本:鼻の訓練は日々続けています。臭気源や悪臭発生のメカニズムを解明するには人間の鼻も大事な分析装置の一つなのです。


私たちが「クサい」と感じる悪臭の原因物質を特定するのはとても難しいです。空気中の数百種類のニオイ成分からクサい成分を見つけるのですが、分析装置が「クサい」というニオイを教えてくれるのではなく、人間がクサいと感じるニオイを分析装置で分析することが必要です。空気中に含まれるニオいの濃度、その中のニオイを一つ一つ分離することは分析装置が行って、臭う成分を探すのが私の鼻です。装置の一部になるにはトレーニングが必要になってきます。総合研究所の冷凍保存庫には数百本の悪臭試薬がストックされています。それを毎日嗅いで訓練していました。訓練を重ねていくと化学式を見ただけでどのようなニオイだったのか生々しく記憶がよみがえってきます。ニオイと記憶は密接に結びついています。ニオイでその時の記憶がよみがえったりしますよね。

嗅いだことのないニオイの原因を解明するのは、仕事とは言え本当に楽しいです。


鼻の訓練以外にはニオイに関する書籍も買って情報を収集しています。香料メーカーさんや専門家が料理のニオイについて書いたものなど多岐にわたります。自宅の本棚にはおよそ50冊並んでいます。



――山本さんの鼻は具体的にどのように活躍しているのでしょうか。


山本:先ほども言いましたが、分析装置は空気中から検出した成分を特定できますが、人間が感じる「クサい」の原因物質は教えてくれません。

そのため、収集した空気(ガス)を私が嗅いで、「ここがクサい」と判断したときに分析装置に発声すると、同時にピークが出た成分が悪臭の原因を特定する、という機械と人間の協業により悪臭の原因が特定されるのです。

人間がクサいと感じる臭気強度は下記の6段階を評価基準としています。

(下記イメージ図)




分析装置と私はこのような協業をしています。

臭気を感じると強度を「4!」や「5!」と発声し、山が高くなった部分のニオイ成分を分析装置で確認することで、臭気の犯人が明らかになります。私の鼻が「ニオイ嗅ぎポート」で臭気強度を判定して、分析装置がその時の臭気成分を教えてくれます。トリメチルアミンやアンモニアは悪臭の主犯格ですが、さまざまな成分が混じりあっているので、それを解明するのも鼻の訓練のたまものです。(下記イメージ図)



――世界中ににおわないトイレを普及させたいとお聞きしました。


山本:私は総合研究所に在籍していてTOTOのニオイ博士としてニオイや汚れが発生しにくい素材や商品の開発やパブリックトイレの設計の提案に携わって来ました。日本のトイレがにおわなくなってきたことに貢献してきたと自負しています。仕事や旅行で海外に行くことが多いのですが、国によってニオイが異なったりしてそれらの発生メカニズムを考えてしまいます。まだまだニオイが強いトイレも多くTOTOの技術を広めて世界中ににおわないトイレを普及させたいと思っています。

また、最近の研究では植物同士で情報交換していると聞きました。野生動物が木の枝を折ったり植物の葉を食べたりすると周辺の植物へ信号を出し、危険を知らせる……ということです。私もいつか、そういう信号を発見して、トイレに発生する微生物に「今はニオイを出さないで」「水に流れて行って」など会話ができるようになったらいいなと思っています。それまでは鼻をさらに鍛錬し、ニオイの分析を続けて行きたいです。



TOTOの総合研究所紹介(第1回)

TOTO商品の「きれいと快適」を支える研究開発の裏側 ~汚れの現場を再現し、原因を徹底分析。「菌」の抑制に挑む研究者~

https://prtimes.jp/story/detail/ZrN3G0co9Zb




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データ提供 PR TIMES
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