近頃いたるところで使われるようになったAI技術によって、これから希望の保育園に通える子供が増えるかもしれない。
富士通は11月12日、今まで10日以上かかることもあった自治体の保育所入所選考を、AIを使ってわずか数秒で行うソフトウェアの提供を始めた。

出典:富士通

認定保育所の入所申請は、自治体によって時期や規模などさまざま。
そして申込書には、保育所の第一・第二希望だけでなく「きょうだいを同じ保育所にしてほしい」「上の子が入れなければ下の子優先で」「きょうだいが一緒に入れなければ辞退する」など細かな要望を書くケースもある。
これをもとに、どの子をどの施設にいれるのか決めるのだが、人口20万人を超える都市の場合、入所希望児童は数千人規模になり、選考作業はのべ約1,000時間かかっていたという。

富士通が開発した、AI搭載のソフトウエア「FUJITSU 公共ソリューション MICJET MISALIO 子ども子育て支援V1 保育所AI入所選考」は、このような多様な要望が出来るだけ多く叶うよう、千人規模の児童の保育所割り当てを数秒で行うという。

いったいどういう仕組みなのか?富士通の担当者に聞いてみた。

――そもそも、なぜAIを使って保育所の入所選考をしようと思ったのか?

私どものグループ会社である富士通研究所は、以前から九州大学と共同研究を行っていました。
その研究員が「兄弟が別の保育園に入所したため保護者が苦労している」という新聞記事を見て、自分たちの研究分野で解決できないかと取り組みをはじめました。

「ゲーム理論」を活用

2017年1月、富士通はさいたま市のデータを用いて共同実証実験に乗り出した。
それまで さいたま市は、約8000人の児童を311施設に割り当てるため、20~30人の職員が多くの日数をかけて選考していたという。
そこで、AIが「ゲーム理論」という数理手法を用いて「全員の希望を可能な限り叶える」割り当て方法を自動的に判断するマッチング技術を開発。
すでに選考が終わった約8000人の匿名化データを入力し、AIの処理結果と人手による結果を照合して精度を高めていったという。

「ゲーム理論」を用いた入所判定 出典:富士通

「ゲーム理論」とは、利害が異なる人々の関係を合理的に解決するための方法。
例えば、定員2名の保育所A・Bに、2組のきょうだいを割り当てるパターンは上図のように6通りある。

このとき「全員保育所Aへの入所を希望」「きょうだいが別々の保育所に入るよりは2人同時に保育所Bに入ることを希望」していた場合、子どもの優先順位と希望を最大限満たすというルールを守ると、最適なパターンは3番目となる。

たった4人なら簡単かもしれないが、さいたま市のように例えば8,000人の子供がそれぞれ第5希望まで出すと「5の8,000乗」通りの組み合わせとなる。人間がやると膨大な時間がかかり、精度にも問題が出てくるのは容易に想像がつくが、このAIを使えばわずか数秒で“最適”な割り当てを行うことができるというのだ。

――AIを使うことのメリットは?

AIではない普通のシステムを使った場合は、全ての組み合わせを検索することになるので、時間がかかったり答えが出ない場合もあります。
今回は、AIを使ったことによって数秒で解決できるようになりました。

――実証実験を、さいたま市と共同で行ったのはなぜか?

さいたま市 様は、とてもきめ細かい入所選考を行っておられて、非常に規模も大きいからです。
この実証実験で有効性が認められれば汎用性の担保になると考えました。

出典:さいたま市

担当者の言葉通り、さいたま市では兄弟姉妹を保育所に通わせる時の希望を「同じ保育所に入所させる」「別々に利用可能な施設がある場合、上の子を優先」など8種類に分類している。

それまでは、申請書類をエクセルなどに入力して手作業でマッチングさせていたというさいたま市だが、従来のやり方とAIの結果を比べると、「保育所に入所できた子ども」「同じ保育所に入った兄弟」いずれもAIの方が高い数字を出している。
待機児童問題の解消にもつながるこの「入所選考」ソフトは現在30以上の自治体で実証が行われており、今年度中に滋賀県草津市が導入を予定し、東京都港区も2019年度中の導入を検討しているという。

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