福島県では、県内の移動の緩和はされつつも、以前の日常に戻ったわけではない。

心理学が専門の福島大学・筒井雄二教授に新型コロナウイルス、そして新しい生活様式への私たちの向き合いについてお話を伺う。

《Q:今後、私たちの行動がどう変わっていく?》

福島大学・筒井雄二教授

「緊急事態宣言のもとでの私たちの行動はすでに変わってきている。

私たちの心の働きの1つに【心理的リアクタンス】というのがある。

それは『やってはいけない』と言われると益々やりたくなる心理。

緊急事態宣言で私たちは色々な行動を我慢している。我慢してきている行動が益々やりたくなってきてしまって自粛解除後には街に繰り出す人が増えるのではないかと予測される」

《Q:外出するにしても今後私たちに求められる「新しい生活様式」 実現可能?》

福島大学・筒井雄二教授

「新しい生活様式は『感染予防の行動』と言え、マスク着用・手洗い・距離の確保などは、すでに私たちはかなり身に付けてきている。

どのように身に付けてきたかというと…『恐怖に基づく回避学習』と言って、新型コロナウイルスへの感染の恐怖が根底にあって、それを回避するために身に付けた行動。

実は、『恐怖に基づく回避学習』というのはとっても強力な学習で長期間にわたって定着するのが特徴。

ただ一方で心配なのが子どもたち。

確かに子どもたちも感染予防の行動を身に付けてきたのですが、子どもたちの場合は大人と同じように『恐怖に基づく回避学習』をしたかというとそうではない。

したがって、今後はいかに子どもたちの感染予防の行動を生活の中で定着させていくのかが大きな課題になるかと思う」

《筒井教授は原発事故後の福島県民のストレスについても研究 新型コロナウイルスへのストレスと重なる部分は?》

福島大学・筒井雄二教授

「新型コロナウイルスも1つの災害と考えると、【災害場面では意外にも子どもの心はストレスから守られている】という研究が多い。

なぜかというと、親が子どもたちのストレスを上手く調節する。それによって子どもたちが守られているというデータがあるのです。

しかし、【原発事故後の福島県ではそれが上手くいかなかった】

福島県で暮らす幼稚園児・小学生が抱えるストレスをはかったデータでは、他県の子どもたちに比べ年月が経つほど減ってきているが2015年でもまだ高い状態。

どういう事かというと、【この時は親自身も深く傷ついてしまって子どもたちのストレスを上手く調節することができなかった】と考えられる。

今回の新型コロナの問題で政府が様々な対策を送り出しているが、子どもたちを守るために、まずは親を守る対策をしっかり打ち出していただきたい」

《感染者が出ていない岩手県・達増拓也知事が「感染者第1号になっても県はその人を責めない」と話した。福島県も感染者ゼロが続いている中、この記録を崩したくないという思いで病院へ行かないという人がいたら…》

福島大学・筒井雄二教授

「もし岩手県で第一号が出ればその方は注目されるし、福島県でも久しぶりに感染者が出たとすれば格好のマスコミの餌食になってしまうわけですね。

これまでの例を考えると、ひどいバッシングにあったり個人情報までさらされたりするという状況にあるわけです。

だから感染したとしても言いにくいような社会状況になっていると思う。

その布石を打ったのがまさに岩手県知事だったと思う。

『明日は我が身』で感染した可能性があれば安心して申し出られる状況にしていく必要があるのでは」

《最後に…》

福島大学・筒井雄二教授

「福島県は9年前に原発事故を経験しました。

その時には、ステイホームしていても常に被ばくの影響を心配してきたわけです。

今回の場合、ステイホームしたり自粛することで感染拡大が抑えられる・コントロールできるというのが原発事故の時とは随分違う。

何よりも治療薬ができたりワクチンが開発されれば事態は大きく好転するはず。

ですから、この災害には必ず出口がある。

今は新型コロナウイルスのニュースばかり目が行ってしまうと思うが、できれば少しの時間でもいいので、新型コロナウイルスのニュースから自分を切り離して、自分のまわりで起きているハッピーなことに目を向けてみるとストレスの問題については少し軽くなるのかもしれない。

こういう状況でも優しい気持ちになれるということを忘れずにいたいと思う」