広島の「がんばる」を応援するシリーズ企画。
今回は、コーヒーの豆ではなく「実」に注目します。国産のコーヒーの木を育成し、その実をいかしたスイーツを作り上げた情熱を取材しました。
広島市東区に本店をかまえる「ニシナ屋珈琲」。創業89年、地元の人に愛されるコーヒー豆の販売店です。70年間使い続けた焙煎機。慣れた手つきで扱うのは、社長の新谷隆一さんです。
(ニシナ屋珈琲・新谷隆一社長)
「デジタルな世の中だが一番最後はやはりアナログ。その人が持っている感性が分かれ道になる。時間があるときには一流に接するのが大事。音楽でもスポーツでも。最後にコーヒーにはねかえってくる」
新谷さんが東広島市にある島、大芝島で去年から取り組んでいるのが国産のコーヒーの木の栽培。育てている場所は、かつてビワを栽培していたという耕作放棄地です。
コーヒーの業界をとりまく状況には、いま大きな変化が訪れようとしています。世界規模の気温上昇により主な産地の生産力が落ちるとされている「2050年問題」です。
だからこそ、新谷さんはこの瀬戸内にコーヒー豆の産地としての可能性を感じているといいます。
(新谷さん)
「いまから15年ほど前に瀬戸内海コーヒーアイランド構想というのを私なりにぶち上げた。2050年問題で生産国の生産量が落ちてくるので、逆にこれは我々にとってはビジネスチャンスだ。コーヒーを日本で瀬戸内で作って逆にいえば海外にも輸出できると。メイドインジャパンのコーヒーを海外の方に飲んでもらうのはこれはもう究極の夢だ」
コーヒーの木に成った努力の結晶ともいえる実です。
(西名さん・金田アナ)
「実は果物なんで、食べられる」
「なるほど」
「摘んで食べてみて」
「確かに少し柔らかくて果実の感じがある」
「意外と苦みがある」
コーヒーの実の種の部分、これを加工・焙煎すると普段目にするコーヒー豆になります。一方でコーヒーの実の食べることができる部分の多くは廃棄されてきました。そして大量に廃棄されたコーヒーの実が腐敗し、環境問題になっている国もあるといいます。廃棄される部分を無駄にしたくない。新谷さんは思いを新たにします。
(新谷さん)
「(コーヒーの)果実を使ったスイーツというのもひとつの方法。それをなんとか商品化できたら面白いなということで、いま実は取り組んでいる最中だ」
今月、江田島で行われたコーヒーの実を使ったスイーツの発表会。会場には、商品開発に携わった関係者が集まりました。
完成したのはコーヒーチェリーと呼ばれる実の部分をいかして作った「コーヒーチェリーアイス」です。
このアイスを手掛けたのが発表会の会場にもなった高級ホテル・江田島荘の小竹隼也シェフ。フランスのミシュランガイド2つ星レストランで修行したすご腕シェフです。
今回のアイスの発表会もフランス流で行われ、アートのような盛り付けで参加者を驚かせました。
(江田島荘・小竹隼也総料理長)
「(コーヒーの実は)すごくフレッシュでフルーティーなので、どうしても合わせた食材に負けがちでちょっと喧嘩してしまう。それを防ぐというかコーヒーチェリーをいかすためにはいまの層にして口の中に入れたときに一番はじめにコーヒーの今回のメインのチェリーの風味と味がくる構成にした」
(金田アナ)
「コーヒーの実の青さ、苦みが残っている。ミルクアイスの甘みと相まって絶妙なバランスです」
実は、このアイスが作られているのは江田島市にある就労支援事業所。この日も障がいのある人たちが抹茶アイスを作っていました。将来的には、アイスの製造だけでなくコーヒーの実の摘み取りから参加してもらうなど、「農福連携」も考えています。
夢である瀬戸内でのコーヒーの栽培。「耕作放棄地を活用」して「捨てられていたコーヒーの実を活かした」「スイーツ作り」。
そして「障がいのある人の支援」につなげるため地道な努力が、きょうも続けられています。
(新谷さん)
「コーヒーを通して地域を元気に」