韓国・ソウルの繁華街・梨泰院で10月29日、日本人2人を含む150人以上の死者を出した転倒事故。ハロウィーン直前の週末に起きたこの大惨事、「めざまし8」は事故直前の映像を独自入手。当時の状況が見えてきました。

動画が撮影されたのは、事故が起こる約10分前。
周囲から「痛い、痛い」という悲痛な声が上がるなか、撮影者の男性も身動きができず、苦悶の表情を浮かべています。

映像からは、周囲からの圧力でバランスを崩したように、撮影者の男性とその周辺の人々が、倒れそうになっている様子もうかがえます。

この男性はその後、身の危険が迫っていると感じて撮影をやめ、その場を離れたため、大きなけがをすることはありませんでした。

事故前の映像から見えてくる「異変」…1時間前には既に異様な光景が

時間をさかのぼり、事故が起きる1時間前の現場周辺でとられた映像。

その映像からは、悲鳴があがるなか突然進めなくなり、前にも後ろにも動けない状態になっていることが分かります。「ゴーバック!」と下がるよう叫ぶ男性や、道路脇には、積まれたケースに押し付けられ身動きがとれない女性の姿も映っていました。

現場に居合わせた日本人男性に、その時の様子を聞くと…

韓国に10年在住・現場に居合わせた日本人男性:
やっぱり後ろから来る人は知らずに突っ込んできますので、胃なのか助骨なのかわかんないですけど、締め付けられて。転んだらちょっと本当にまずいなっていう。たまにちょっと足が浮いたりしたんですけど、ひとり倒れたらたぶんドカドカっといくなと思って…
事故1時間前の時点で、撮影した男性が「転んだらまずい」と恐怖感をおぼえるほど、危険な状況だったといいます。
20分前 3方向から人が押し寄せ身動き取れず…“うねる”ような動き

時間は進み、事故が起きる約20分前。

午後9時40分ごろ、現場にあるT字路を建物の上からとらえた映像では、3方向から人が押し寄せ、身動きが取れなくなっている様子が確認できます。
さらに、密集した人たちが、“うねるような動き”を見せる場面も…

そして、その10分後。
事故発生の約10分前、身動きがとれずバランスを崩して倒れそうになるなど、いつ事故が起きてもおかしくない状況になっていました。

専門家が語る「群衆雪崩」の恐怖

「群集安全学」を専門とする関西大学の川口寿裕教授は、密集した人々が雪崩を打つように転倒する「群衆雪崩」が発生したと指摘します。
「群集雪崩」は、なぜ起きるのでしょうか?

関西大学・川口寿裕 教授:
人がものすごい密度で入っている状態で「群集密度」っていうのがひとつ指標になります。
1㎡あたり大体10人程度以上入っていると群集雪崩の危険があるって言われているのですけども、今回間違いなくそれ以上の密度になっていますので

集まった大勢の人で、路地は「危険な密度」に。
さらに…

関西大学・川口寿裕 教授:
一定の勾配の坂道であればまだ良いのですけども、合流する部分で下り坂からちょっと平らなところに合流するということになると、そこでちょっと傾斜が変わりますよね。
あれだけの人が集まっている、足元が見えない状況ですので、誰かがつまずいてしまうとそれをきっかけに転倒が起きるっていう可能性は十分にありますね

路地を確認すると、通りの脇にも段差があり、人込みで足下が見えない中でつまづく危険性があるように見えます。さらに、ハロウィーンで賑わった29日は、散乱するゴミでさらに足元が危険な状態でした。
関西大学・川口寿裕 教授:
一方通行になっている方が、群衆事故は起りにくいですね。
例えば、ある程度までの人の混雑具合ならば、渋谷の交差点でもそうですが、人ってうまく前の人について行ってレーンを作ってうまく交差して行くのですけれども、ある程度の密度を超えてしまうと、それが上手くいかなくて、正面衝突をするような形で人がぶつかりあって混雑が発生します
(めざまし8 10月31日放送)