美しすぎる “削りカス”
多くの人が小学生の頃から使い慣れている鉛筆。
だが、成長するにつれてシャープペンやボールペンを使うようになり、鉛筆を使う機会は少なくなったのではないだろうか。
仕事の必需品といえばパソコンで、メモを取る際にもペンではなくタブレットやスマホを活用する人も珍しくない。
しかし、鉛筆特有の紙を滑るサラサラとした書き味や筆圧によって変化する線の太さと濃淡は、タブレット用のペン先の感覚にも採用されるほど、心地いいものだ。
そんな鉛筆の魅力はそのままに、華やかさが加わった鉛筆ファン必見のユニークな商品が11月1日に発売された。
その名も「花色鉛筆 Christmas edition」!

クリスマスムード満点の緑・金・赤の3本と太軸用鉛筆削りのセットで、価格は1,200円(税別)。
一見すると普通の色鉛筆だが、それぞれの断面には色にマッチしたクリスマスモチーフの装飾が施され、緑は「ツリー」、金は「スノーフレイク(雪の結晶)」、赤はクリスマスフラワーとも呼ばれる「ポインセチア」の可愛らしいデザインとなっている。軸部分には、木材の代わりに廃棄古紙を主原料とする新素材を活用した環境に優しい設計だ。
そして、「花色鉛筆」最大の特徴は、鉛筆を使う前に必ず行う“削り”の作業で発揮される。
なんと、削りカスが花びらになるのだ。
付属の鉛筆削りにしっかりと押し込みながら回すと、削られた軸部分がリンゴの皮むきのように繋がり、まるで本物の花びらのように美しい立体的な削りカスが生まれる。

削りカスは、従来通りに可燃ゴミとして処分することが可能だというが、押し花のように取っておきたくなる可愛らしさはもはやゴミには見えない。
こんな鉛筆なら、削るのにも夢中になってしまいそうだ。
実はこの「花色鉛筆」、日本を代表する伝統的な花の形と色を表現した5種類を2016年11月に発売していて、今回のクリスマスエディションはその第3弾。
デザイナーとコラボした商品開発を展開する「TRINUS(トリナス)」が販売している。
冬らしいモチーフの断面だけでなく、削りカスまで楽しむことができる「花色鉛筆」開発の裏側と、美しすぎる削りカスのおすすめ活用法を広報担当者に聞いた。
柔らかい新素材を活用し、削りカスまで楽しい鉛筆を実現
ーー「花色鉛筆」の第3弾として、クリスマスエディションを発売した理由は?
花色鉛筆は国内外でご好評頂いており、発売から約1年間で1万セット以上を売り上げたヒット商品となっています。
ギフト用としてお求め頂くケースも多く、今回発売した「花色鉛筆クリスマスエディション」は、クリスマスギフトとしてお贈り頂けることも想定して開発いたしました。
鉛筆削りもセットにしておりますので、その日からお使い頂けるようになっています。

ーー「削りカスが花びらになる」というアイデアはどこから?
弊社では、世の中に存在する面白い技術をインターネット上で特集して、その技術を活用した商品の企画やデザインをコンペ形式でクリエイターから募集しています。
登録デザイナーは4000人以上いて、国内外から多様な企画が集まってきます。
企画案をユーザーが自由に評価し、ブラッシュアップした上で商品化していくという流れで商品開発を行っています。
花色鉛筆もプラスチック原料に廃棄古紙を原料とした微細な紙パウダーを混成させて生まれたメイドインジャパンの新素材「MAPKA(マプカ)」という技術の活用案を募集し、集まってきた企画の中から商品化されました。
通常の鉛筆は、製造時に木材の多くがロスとなってしまうといいますが、これを鉛筆の素材として活用することで、リサイクルであると同時に素材のロスも出しません。
「花色鉛筆」の企画案を採用されたデザイナーの大友敏弘さんによると、廃棄古紙を主原料とした素材がプラスチックのように成形でき、カッターで簡単に削れるくらい柔らかい素材であったことから、形のバリエーションが少ない色鉛筆をデザインの対象として選んだとのことです。
そして、「家紋」「日本の伝統色」「花びらになる削りカス」の3つのデザイン要素を組み合わせ、第1弾の花色鉛筆の提案を行ったといいます。
「ついたくさん削ってしまう」花びらはカードの装飾にも

ーー削りカスの他にはどのような特徴がある?
「花色鉛筆」は形と色にこわだっています。
断面による独特の形状のかわいらしさだけでなく、その形状により持ちやすく滑りにくい機能性も兼ね備えています。
軸の素材は、通常の鉛筆と比較して少し硬めです。
廃棄古紙を原料にしたMAPKAを使うことによって、独特の柔らかな色合いに仕上がり、カリカリといった心地の削りやすさを両立しています。
次々と花びらの形になって出てくるので、ついたくさん削ってしまいます。
鉛筆の芯には国産の上質な色芯を用いているので、書き味も心地よく楽しめます。
ーー「花色鉛筆」開発で特に苦労した点は?
廃棄古紙を原料にしたMAPKAは白く、さまざまな色に染めることができますが、柔らかな色合いに仕上がります。
そのため、クリスマスエディションの「ポインセチア」で鮮やかな赤の発色のために成形テストを繰り返し、完成までには数ヵ月ほどかかりました。

従来どおりに可燃ごみとして処分できるという削りカスだが、こんなにキレイな花びらを捨てるのはもったいない!
どうにか手元に残すことはできないものか、おすすめの活用法を聞くと「メッセージカードと一緒に添えて頂くと、華やかな印象をプラスすることができます。封筒の中から、カラフルな花びらが次々と出てきたら、きっと受け取った方に驚きを与えられるのではないでしょうか」というアドバイスをもらった。
クリスマス当日まで1ヵ月を切り、いつでも出荷できるように準備しているというが、海外からの人気も高く、お土産としてまとめて購入するケースが多いため、商品説明には英語での表記もされているそうだ。
家族や友人へのギフトにもぴったりだが、花色鉛筆でメッセージを書き、削りカスを押し花のようにして彩ったクリスマスカードを贈っても喜ばれそうだ。
