数週間のサイクルで再発を繰り返す

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いつの間にか出来ていた、手のひらや足の裏に出来たブツブツ。
手のひらの水ぶくれが気になって、手作業がツラい…。
しかも、何か所にも出来ている…。
足の裏にあるから水虫なのか? でも、ウミが出てくるし、何だろう…?
その症状は、「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」かもしれません。
一般にはほとんど認知されていない皮膚病のため、治療が遅れてしまい、長く症状に苦しむ患者さんもいる疾患です。

「掌蹠膿疱症」は、手のひらや足の裏にウミが溜まった水ぶくれ(膿疱)が、次々と左右対称に数多く出現し、かゆみや痛みを伴うことが多い、慢性の皮膚疾患です最初は、手のひらや土踏まず、かかとなどに赤みが生じ、次に膿疱ができます。しばらくすると茶色っぽいかさぶたになり、ガサガサになって皮がむけますが、2~4週間のサイクルで別の場所に再発を繰り返します。初めて「掌蹠膿疱症」を患った患者さんは、水虫が悪化したと勘違いして受診することが多くあります。膝や肘などに赤みができたり(掌蹠外皮疹)、爪が変形したり、はがれて浮いてくることもあります。

女性に多く、重症のケースも!

ひどくなると、手のひらや足の裏全体の皮膚が赤みを帯び、うす皮がむけてヒビ割れて、痛みを伴います。手のひらの皮がむけると、買い物でお金を出すときや、握手をする時に躊躇したり、料理や洗い物といった家事が出来なくてつらい…など、患者さんの生活の質が下がってしまいます。

また、患者さんの約10%に、胸骨と鎖骨、肋軟骨などの関節や骨に炎症が起こり、痛みが生じます。重症になった患者さんの中には、皮膚や関節の症状のため、思い通りに動くことが難しいと言うケースもあります。

男性よりも、女性に2~3倍ほど多く発症するといわれており、40歳代から50歳代に多く認められています。
日本における罹病率は0.12%で、患者数は約13万人と報告されています。実はこれは、欧米における罹病率0.01~0.05%の数倍となっています。

“歯の治療”が原因?!

「掌蹠膿疱症」の原因は、未だにはっきりとはしていません。ただし、歯科領域における感染症や扁桃炎、金属アレルギーなどが原因の一つになりうることは分かっています。また喫煙も原因の一つと考えられています。

「皮膚病なのに、歯の治療は関係するの?」と意外に感じるかもしれません。
海外での報告は少ないのですが、日本では歯科金属(パラジウムなど)に対するアレルギーが引き金となり、「掌蹠膿疱症」が発症した事例が多く報告されています。 これが、欧米より日本での症例が多い理由の1つかもしれません。
「自分には虫歯はない」と言う患者さんでも、歯科でのレントゲン検査等によって、感染症などが見つかることがあります。

口の中から金属を一掃

なぜ歯の治療や感染が影響するのか。
1つには、銀歯など歯科材料が皮膚に接触することでおこります。また、汗によって金属がイオン化して溶けたり、皮膚の常在菌と金属がくっついてタンパク質をつくることが原因にもなります。誤った歯磨きで出来た傷が、アレルゲンの侵入経路となる場合もあります。

歯科関連や扁桃炎などが原因と判明した場合には、扁桃摘出や歯科治療により劇的によくなる例がしばしばあります。金属アレルギーの場合は、口の中の銀歯や金歯を除去してノンメタル状況にし、さらにキレーションという重金属排出のための処置を行います。

新たな治療の選択肢が!

ただ、患者さんのうち7~8割は検査をおこなっても原因を突き止めることができず、皮膚科的な治療を行います。軽症の場合、患部にビタミンD3外用薬やステロイド外用薬を塗ります。これで治らない場合は、長波長紫外線を照射する光線療法やビタミン剤などの内服・注射、といった治療を行います。

しかし、これでも効果不十分な症例や難治例があるのです。これまでは、そうしたケースはなかなか症状が改善せず、患者さんにとって心身の大きな負担になっていました。

ところが、最近、朗報がありました!
11月に、「掌蹠膿疱症」治療薬として、日本では初の生物学的製剤『トレムフィア』が承認されたのです。生物学的製剤とは、化学的に合成した医薬品ではなく、生物が合成する物質(タンパク質)を応用して作られた治療薬。『トレムフィア』は、「乾癬」や「掌蹠膿疱症」の病態形成に関与する因子を選択的に阻害する注射薬です。専門的に言うと、病態に深く関わるIL-23p19という体内物質の働きを特異的に阻害します。

成人には、一般名「グセルクマブ」(遺伝子組換え)として、初回とその4週後、それ以降は8週間隔で、1回100mgを皮下投与します。薬価が高いので、自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」の対象になります。これで、既存治療では効果不十分な患者さんに、新たな治療の選択肢が産まれました。

また、「掌蹠膿疱症」の約80%の人が喫煙者です。 禁煙しても、多くの場合は治りやすくなることはありませんが、これを機に禁煙するのもいいかもしれません。

ヒトには感染しない!

皮膚病で皆さん気になるのは、ヒトにうつるのかどうか。

「掌蹠膿疱症」のウミの中には、細菌はいません。したがって、他の人に感染しません。手足から体のほかの部位に感染することもありません。遺伝に関しても、日本では家族で発症したという症例は稀です。

治癒にかかる時間は患者さんによって違いますが、平均で3年から7年とされています。その間は、対症療法を行って、症状をコントロールすることが大切です。しかし、なかなか病名がわからず、治療が遅れるケースもあります。
手のひらや足裏の水泡に不安を感じたら、早目に皮膚科クリニックを受診して下さい。

千春皮フ科クリニック 院長
渡邊 千春(医学博士)

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