「老後に2000万円が必要と聞き、将来への不安があった」犯罪に手を染めた理由をこう述べた佐藤凜果被告(22)。犯行当時20歳という若さで詐欺グループに加わった女に何があったのか注目の裁判を追っていきたい。

法廷に現れたポニーテールの女

元不動産会社社員の佐藤凜果被告はおととし、仲間と共謀し新型コロナの影響で収入が減ったと嘘の申請をして国の持続化給付金あわせて200万円をだまし取った罪に問われている。

佐藤被告が加わっていた詐欺グループは、持続化給付金を2億円近くだまし取ったとされている。この事件をめぐっては、主犯格とされドバイに逃亡していた松江大樹 被告(31)や東京国税局職員の塚本晃平 被告(24)らあわせて8人が逮捕されている。

詐欺の罪に問われている佐藤凜果被告(22)(6月 目白署)
詐欺の罪に問われている佐藤凜果被告(22)(6月 目白署)
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8月23日に東京地裁で行われた初公判に、黒スーツに白シャツ、ポニーテール姿で出廷した佐藤被告は、裁判官から起訴内容に間違いがないか問われると「ありません」と短くはっきりと答え、起訴内容を認めた。

不正受給は数十件 報酬60万円

検察側の冒頭陳述などによると、佐藤被告は大学時代の友人を介して詐欺グループの中心メンバーである元大和証券社員の中峯竜晟被告(28) と知り合い、金融に関する知識がある中峯被告に投資の相談をするなどしていた。被告人質問の中で、佐藤被告は詐欺グループに参加した経緯を次のように答えた。

弁護人:中峯さんと知り合ったきっかけは?
佐藤被告:私自身、副業や投資に興味があって、中峯さんが講師だったビジネスコンサルタントのセミナーで受付をしていたのがきっかけで知り合いました。
弁護人:中峯さんから誘われた?
佐藤被告:はい。
弁護人:どういった内容で?
佐藤被告:持続化給付金の申請に関する事務作業を手伝ってほしいと。

佐藤被告は、「事務作業を手伝って欲しい」と言われ、詐欺グループに加担したという。
佐藤被告は、「事務作業を手伝って欲しい」と言われ、詐欺グループに加担したという。
佐藤被告は、友人を介して元証券マンの中峯竜晟被告(28)を紹介されたという。
佐藤被告は、友人を介して元証券マンの中峯竜晟被告(28)を紹介されたという。

佐藤被告は詐欺グループの中で、“給付金の申請”を担当。専門的な知識が要らない事務作業を任されていたという。

弁護人:不正なことをするとは言われていた?
佐藤被告:そういう認識はありました。不正な数字を入力するとは聞いていました。
弁護人:どう不正するのか?
佐藤被告:申告書の作成の時に数字を操作すると言っていたので数字が虚偽なんだと。
弁護人:あなたは申請を何件くらいやった?
佐藤被告:数十件くらい。
弁護人:報酬はどれくらい?
佐藤被告:60万円ほど。

法廷では、佐藤被告が、不正受給の報酬としておよそ60万円を受け取っていたことが明らかにされた。
法廷では、佐藤被告が、不正受給の報酬としておよそ60万円を受け取っていたことが明らかにされた。

警視庁の調べに対しては「申請には関わったが不正受給だとは知らなかった。報酬は一切受け取っていない」と供述していた佐藤被告。しかし法廷では自分がやっていることが犯罪行為だと認識していたと述べた。それでもなぜやめなかったのか、佐藤被告の口からは、意外な”動機”が明らかにされた。

「老後の不安」のため犯罪に加担

検察官:罪が発覚するとは思わなかった?
佐藤被告:考えたりはしましたが、当時はお金が欲しかったのでやめられなかった。
検察官:どうしてお金が欲しかった?
佐藤被告:老後に2000万円が必要だと聞き、将来への不安がありました。
検察官:不正をするということを認識していたということだが、そのことを今まで(捜査段階で)述べたことはあった?
佐藤被告:ないです。
検察官:どうして?
佐藤被告:自分の記憶が曖昧だったので。
検察官:今はどうして思い出した?
佐藤被告:(中峯被告との)LINEのやりとりを復元したのを見たりして思い出しました。

佐藤被告は、給付金詐欺に加担した動機について「老後の不安」を挙げた。
佐藤被告は、給付金詐欺に加担した動機について「老後の不安」を挙げた。

証言台に立った佐藤被告は、供述を一転させた理由について、こう述べるにとどめた。しかし、犯行の動機については「将来への不安」を挙げた。犯行当時、20歳だったにもかかわらずだ。真偽のほどは、法廷では明らかになっていないが、報酬で得た60万円は「貯蓄」に充てたという。

この”60万円”は返還すると述べた佐藤被告。検察官から、今後また”不安”になって罪を犯さないか問われると「そのようなことはありません」と述べた上で、「貯蓄や『つみたてNISA』を活用してコツコツ貯めていきたい」などと心の内を明らかにした。

父親の”言葉”に涙ぐむ被告

裁判には情状証人として佐藤被告の父親が出廷。「しっかりしているが故に、放任主義的な教育方針であったので、コミュニケーション不足があった」などと反省する父親の言葉を聞き、佐藤被告は「もっと頼ればよかった」と涙ぐみながら話す場面もあった。

一方で、検察官から事件の共犯者との今後の関係をどうするか問われたときには「今は考えていない」と答えるのみだった。

裁判官:共犯者との今後の関係を考えていないということだが、関係を絶とうとは考えていないのか?
佐藤被告:関係を絶ってもいいと思いますが、何かの縁で知り合ったので、あえて絶縁するまでは考えていません。

法廷では、佐藤被告が、情状証人として出廷した父親の”言葉”に涙ぐむ場面もあった。
法廷では、佐藤被告が、情状証人として出廷した父親の”言葉”に涙ぐむ場面もあった。

裁判官からの「関係を切らないとしても、今回のようなことは、今後しないか」という最後の問いに、「はい」と力強く答えた佐藤被告。論告求刑公判は10月に行われる予定だ。

この詐欺グループをめぐっては、今後東京国税局職員の塚本晃平被告が9月15日、主犯格とされる松江大樹被告が10月7日に、それぞれ初公判が予定されている。200人近くを不正受給に勧誘し、およそ2億円の給付金をだまし取ったとされる事件の全容が解明されることを期待したい。

(フジテレビ社会部・司法クラブ 高沢一輝)