雑草や害虫の発生、災害時の危険性の高まり、野生動物の行動圏の拡大など、耕作放棄地の増加が、今社会問題となっています。耕作放棄地とは、過去1年以上作物を栽培せず、近いうちに栽培予定もない、放置された農地のことです。高齢化や農業の後継者不足などが、この問題を引き起こしています。農林水産省によると、2017年時点では、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達しています。


この問題に農福連携で取り組むのが、滋賀県東近江市にある有限会社永源寺マルベリーです。2004年に建設会社社長で、市議会議員をしていた吉澤克美さんが61歳のころ立ち上げました。


桑の葉や明日葉の栽培を手掛け、この18年の間に再生した耕作放棄地の面積を約10haにまで広げてきました。高齢者や障害を持つ方を雇用する“ユニバーサル農業”にも力を入れており、最高齢の方は今年92歳を迎えます。


健康食品・化粧品の通販ブランド“ていねい通販”を運営する私たち、生活総合サービス(以下ていねい通販)は永源寺マルベリーさんとともに、今年の6月28日にこれまで捨てられていた栄養豊富な明日葉の茎と根までを使ったアップサイクル青汁「boco to deco(以下:ボコとデコ)」を販売開始。


「ボコとデコ」は、体をいたわる習慣からやさしい循環が生まれることをコンセプトにした青汁。耕作放棄地の利活用を行っている永源寺マルベリーさんは、まさにピッタリのパートナーでした。永源寺マルベリーさんが耕作放棄地の利活用を始めたきっかけやともに「ボコとデコ」を作ることになった背景などを、永源寺マルベリーで生産管理を努める上田さんに伺いました。

私財を投じて、400㎡の開墾からスタート

戸田:そもそも、永源寺マルベリーさんが耕作放棄地の利活用を手がけ始めたきっかけを教えてください。


(左:永源寺マルベリー 上田さん 右:ていねい通販 戸田)


上田:当時、東近江市の市議会議員だった吉澤が地域復興のために約400㎡の耕作放棄地を私財で開墾したことがきっかけです。吉澤が耕作放棄地の利活用を進める前、今永源寺マルベリーが管理している土地は地元の農家が補助金を利用してお茶畑として活用する計画が進んでいました。


唯一、吉澤だけがそれに反対していました。後継者問題などで、数年後に耕作放棄地になるからやめた方が良いと。しかし、当時の吉澤は農家ではなく、地方議員の一人。周りに意見を聞いてくれる人はいませんでした。


数年後、吉澤が危惧していたように、お茶畑の働き手はほとんど辞めてしまいました。「言わんこっちゃない」と思ったそうですが、吉澤も使われなくなってしまった土地で何をしたらいいか答えを持っているわけではありません。


そこで、永源寺マルベリー周辺と似た特性を持つ地域で作物の栽培に成功している事例を探し、実際に見学へ訪れることを繰り返しました。そこで目をつけたのが桑の葉でした。


今後、血糖値の問題がより深刻になり、糖尿病の患者が増えるだろうから、それに寄与すると言われている桑なら需要があると考えたんですね。そして、手探りでの耕作放棄地の利活用が始まりました。



戸田:耕作放棄地を利活用する上で何が1番大変だったのでしょうか。


上田:1番は、収支のバランスをとる目処を立たせることですね。耕作放棄地を普通の作物が栽培できるようにするためには、酸性の土壌をアルカリ性に変えたり、放置されている什器や廃材を捨てたりと初期コストがかかります。加えて、桑の葉の売り先を見つけなければならない。桑自体は育てるのがそこまで難しい作物ではないのですが、売上を立てて投資回収をするのが大変でした。5年くらいかかりましたよ。


戸田:5年はかなり長いですね。それまではどうやって継続をされてたんですか。


上田:吉澤が自分の私財をずっとつぎ込んでいました。


戸田:そうだったんですね。


上田:転機が訪れたのは、ていねい通販さんを紹介してくださった食品の受託製造会社、王子食品さんとの出会いです。王子食品さん経由で少しずつ売れ行きの目処が立ち、素材として使いたいという企業も増えていきました。


戸田:その後、明日葉の栽培も始められたのは何がきっかけだったのでしょう。


上田:明日葉だけでなく、新しく栽培する植物を模索していたんです。明日葉に決めたのは、栽培地域が限られていることから高い希少性を持った商品にできると思ったからです。


明日葉は八丈島や三宅島では自生する植物ですが、人工的に栽培しようとするとなかなか上手くいかないんです。理由は大きく2つあって、1つは島から苗を取り寄せる過程で苗が傷んでしまうこと。もう1つは、島の気候と他の地域の気候が違うために条件を色々試さないといけないこと。しかも、明日葉はタネを植えてから収穫できるようになるまで2年はかかるので、年間の試行錯誤の回数も限られる。


だから、明日葉の栽培は途中で諦められることが多いんです。私たちも栽培が上手くいくまで4年かかっています。毎年100万円分くらいの苗を買っていたので、本当に根性でやりきったなと思います。最近は滋賀のメディアに取り上げていただくことも増えてきて、周りの人に反対されていた18年前と比べると名実ともに育ってきたんだと実感します。


平等に接するというユニバーサル農業

戸田:耕作放棄地の利活用を始められて18年が経ちますが、今どれくらいの広さの農地を経営しているのでしょうか。


上田:約10haですね。私たちが薬用植物と呼んでいる桑や明日葉などを有機栽培している面積は、近畿地方では最大規模になります。


戸田:ちなみに広げようと思ったら、10ha以上は広げられるのでしょうか。


上田:全国的な課題ですが、耕作放棄地は毎年増加しているため、私たちの元に活用の依頼がきます。農地を広げるのは可能ですが、生産と販売のバランスが取れるように、調整をしながら活動しています。


戸田:永源寺マルベリーの耕作放棄地の利活用を語る上で欠かせないのが、農福連携のためのユニバーサル農業です。地域の就労支援事業所と連携し、障害のある方や高齢者の方と一緒に農園づくりに取り組んでいますよね。ユニバーサル農業に取り組み始めたきっかけについて教えてください。


上田:ただ耕作放棄地を利活用するだけではなく、他にも地域のためになることができたらという思いで、開墾当時からユニバーサル農業には取り組んでいます。一緒に働く方にはとても助けられていますよ。機械の操作ができなくても、手作業が得意であれば、除草作業や堆肥作業を手伝っていただいたり。特に私たちは有機栽培が中心のため、ユニバーサル農業とは非常に相性が良いと思います。



戸田:ユニバーサル農業に取り組む上で、障害のある方や高齢者の方が働きやすいように何か意識されていることはありますか。


上田:障害を持っている方もそうでない方も、年齢が何歳だろうと全員永源寺マルベリーのメンバーだと捉えています。食事も休憩も一緒にしますし、注意するときは注意します。もちろん、伝え方には気をつけないといけないので、施設の職員の方を通じてですが。やっぱり、特別扱いすると続かないと思うんですよ。施設の方だからしょうがないという風になると、歪みが生まれると思うんです。あくまで私たちはそうやっているという話ですが、普通に接しているからこそ、今までもこれからも続くんじゃないかと思うんです。​

コンセプトファーストだからこその出会い

戸田:永源寺マルベリーさんと出会ったのは、王子食品さんの紹介がきっかけでしたね。


上田:実は、ていねい通販さんと出会う前から、明日葉を丸ごと使いたいということをずっと王子食品さんに伝えていたんです。茎や根は混ぜると、色が悪くなってしまうからという理由でなかなか使ってもらうことができず、それをなんとかしたいと思っていました。そしたら、フードロス問題やSDGsの問題に向き合いながら青汁を作りたいと言っている会社があると教えていただいて、ぜひ一緒に組みたいとお伝えしました。



戸田:私たちも「ボコとデコ」の素材パートナーについて王子食品さんに相談してから、こんなに早くコンセプトに合致した企業様に出会えるとは思っていなかったので、驚きました。お話を聞いて、1週間後には永源寺マルベリーさんを訪れさせてもらっていました。初回から前のめりでお話をしていたので、怪しまれていないか心配でしたね(笑)


上田:どの会社さんであっても、すぐに信用するということはないです(笑)。信頼関係は徐々に作られていくものじゃないですか。でも、ていねい通販さんは何度も足しげく通ってくださって…。本気で商品化されようとしているのが伝わってきました。


戸田:元々、何度も通える場所にある農家さんとやりたいと思っていたんです。僕たちは大阪にある会社なので、関西圏であることは必須でした。その中でも、すでに知名度のある京野菜などではなく、まだ世の中に知れ渡っていないけど、本当に良いものを使おうと思っていました。「ボコとデコ」のコンセプトは、自分をいたわることが、社会を良くすることに自然とつながる循環を作ること。「ボコとデコ」という名前も「誰かのあまりものが誰かのギフトになる」という思いからつけたんです。だから耕作放棄地生まれかつ、フードロス問題にもつながる永源寺の明日葉はまさに、あまっていたものが誰かのギフトになっているという点でピッタリだったんです。



上田:今回の青汁は、植物由来の成分のみ使用して作っているじゃないですか。明日葉はセリ科の植物なので、甘味料などを入れず、毎日飲んでもらう青汁にするのは難しいと思っていたのですが、全然苦味を感じず、飲みやすい青汁になったのには驚きました。


戸田:さつまいもでんぷんのおかげですね。随分と飲みやすいものになりました。それに水にも溶けやすくなって、毎日続けやすくなったのではと思っています。


上田:そういえば「ボコとデコ」は、パッケージにおいてもアップサイクルの材料を利用していますよね。


戸田:サトウキビを製造する過程で捨てられていたバガスと呼ばれるクズを利用していたり、ベジタブルオイルインキという環境にやさしいインクを利用しています。これらの素材も永源寺マルベリーさんと同じように、コンセプトを周りに伝えていく中で、紹介いただいたものです。「ボコとデコ」は青汁なんですが、それはアウトプットの1つにすぎなくて「ボコとデコ」が持つ思想や哲学を広めていくことが目的なんです。だから永源寺マルベリーさんとも、ただ素材をいただくだけの関係というより、永源寺マルベリーさんや滋賀のこと自体をもっと知っていただくための取り組みをしたいと思っています。

「ボコとデコ」を通じて、耕作放棄地の利活用を広めたい

戸田:永源寺マルベリーさんは、今後「ボコとデコ」 に対してどんな期待をされていますか。


上田:私たちの元には、耕作放棄地をなんとかして欲しいという依頼がたくさんくるんです。でも、先ほども申し上げたように開墾してもビジネスとして成り立たなかったら継続できない。だから「ボコとデコ」がどんどん広まっていって、明日葉の需要が増えて欲しいですね。また、私たちが直接支援し続けるだけでは限界があるので、それぞれの地主さんたちが自分たちで耕作放棄地をなんとかできるように、ノウハウを伝えるということもしたいです。


戸田:​​正直、大阪の会社である僕たちはよそものだと思っているんです。だから、滋賀を盛り上げるための活動を地に足つけてやっていきたい。「ボコとデコ」のメディア試飲会にきてくださった方から「東近江市を盛り上げてくれてありがとう」と言っていただいたのですが、そういう近くにいる人からちゃんと喜ばれるような活動を行っていきたいですね。そして僕たちの活動を見て、自分も何か小さくてもいいからやってみようと思う人が増えたら嬉しいですね。そしたら、地域や社会が少しずつ変わっていくと思うんです。





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