「お酒じゃない、あなたの失敗」 ポスターに共感の声
今年も残すところあとわずかとなり、忘年会シーズンも本番。
連日、お酒の席をはしご…という人もいるかもしれないが、そんな中、飲酒にまつわるこんなポスターが話題になっている。

「お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。」
拳を振り上げる人物のシルエットが描かれたこのポスターは、駅や列車内での駅員への暴力行為・乗客同士のトラブル防止を呼び掛けるもので、12月10日からJR東日本などをはじめ各地の鉄道会社86社局で貼り出されている。
インパクトのあるキャッチコピーを全面に押し出したデザインが目を引くが、他にも
「平成29年度の鉄道係員に対する暴力行為は656件(全国34社局)」
「そのうち59%は飲酒した加害者によるもの」
「毎年12月に事件が多発」
などの情報が盛り込まれている。
「暴力は犯罪。酔っていたでは決してすまされない行為です」という強いメッセージで締めくくられるポスターに、SNSからは「本当にそう思う、共感しかない」「お酒は免罪符じゃない」と絶賛の声があがっているのだ。
「12月」「飲酒」というキーワードに忘年会シーズン真っただ中の人は、ドキッとするキャッチコピーのこのポスター。企画した日本民営鉄道協会にお話を伺った。
暴力行為自体は年々減っているものの…
――今回、このようなデザインにした理由は?
広告会社から提案があったものの中から、各鉄道会社が選考しました。
以前は「STOP暴力」などのフレーズとともに、赤や黄色の目立つ色使いで訴えてきましたが、今回はシンプルなデザインで、より目を引くキャッチコピーで訴えるものを選びました。

毎年7月と12月に、このような駅係員への暴力防止を訴えるポスターを発表しているという日本民営鉄道協会。
たとえば2017年は「見逃しません!その暴力、犯罪です!」、2016年は「その暴力犯罪です!」のキャッチコピーで、赤や黄色の警戒色を押し出したデザインにしていたが、今年はシンプルな色使いとデザインの中に大胆なキャッチコピーを配置して、より目を引くポスターに仕上げたという。
日本民営鉄道協会が大手34社局を対象に実施している調査によると、駅員への暴力件数は2011年の911件をピークに、年々減少傾向にあるという。

――駅員への暴力行為が減っている理由は?
ポスターでの呼びかけのほか、従業員の教育、防犯カメラの設置といったセキュリティー強化など、ハード・ソフト両面からの取り組みが影響していると思います。
6割が「飲酒して暴力」 忘年会シーズンは多発
鉄道会社の取り組みによって、年々減りつつある暴力行為だが、毎年似たような傾向がある。
それが、ポスターにもあった「12月に暴力行為が多発する」というものだ。


日本民営鉄道協会のデータによると、2017年の11月には48件だった暴力行為は、12月では66件となっている。
さらに、時間別に見てみると、2017年に起きた656件の暴力行為のうち5~9時に起きたものが70件、9~17時に134件、17~22時に196件、22時~翌朝5時に256件と、深夜の時間帯が最も多い。
2015年、2016年も同様で、12月・深夜の暴力行為が多い傾向にある。
――12月に暴力行為が多い理由は?
やはり忘年会など、お酒を飲む機会が多いことが挙げられると思います。

そして、年齢や飲酒の有無のデータを見ると、加害者の年齢層はばらつきがあるが、去年のデータではその58.7%は「飲酒あり」。
酒の席の帰り、気が大きくなって暴力を振るってしまう、というケースが多いのだろう。
――どんな暴力行為がある?
胸ぐらを掴む、殴る、噛みつく…などがあります。
お客さま対応をする中から発展するパターンもありますが、中には突然背中から蹴られるなど、理由のない暴力行為もあります。
――これからの忘年会シーズンに呼びかけたいことは?
お酒を飲む前にこのポスターを見て、行動を意識していただきたいと思います。
また、ポスターの中にもありますが、「暴力は犯罪」ということを意識していただければと思います。
我々が以前取り上げたJR東日本の暴力防止講習会の記事でも、駅員が「壁に打ちつけられる」「いきなり頬を殴られる」などの信じられないような暴力を受けている、という事例があった。(「目覚めた客が駅員を殴打、電車遅延に『ジム代を払え!』・・・あきれた暴力行為の数々 酔客急増のシーズンに警戒」)
本人からしたら「ちょっとしたトラブル」のつもりなのかもしれないが、暴力は犯罪ということを忘れてはいけない。
お酒に縁がある今の時期、このインパクトのあるキャッチコピーをもう一度胸に刻んでほしい。