「はやぶさ2」は、小惑星「りゅうぐう」に着陸したあと地表や地下の物質を地球に持ち帰り、生命誕生の謎などを調査する目的で2014年12月に打ち上げられた。その後、3年半に及ぶ航海の果てに2018年6月、無事、りゅうぐうにたどり着いた。12月末までは、はやぶさ2とりゅうぐうは太陽をはさんで地球とちょうど真反対にあり、太陽の電波の影響を受けるため通信状況がよくない。そのため早ければ、条件が改善され、着陸に向けたデータが出そろうであろう来年1月末にもりゅうぐうに着陸を試みる予定だ。
世界が注目する壮大なプロジェクト。その指令を出す管制室ってどんなところ?実際にいってみた。
都心から電車をのりつぎ1時間強 町は盛り上がっていた
JR横浜線の淵野辺駅(神奈川県相模原市)が最寄り駅。都心よりいくぶん気温が低い(気がする)。日本の最先端科学がつめこまれた小惑星探査機の管制室がある場所なのだから、霞が関、とか、よく知られている「筑波宇宙センター」など物々しい雰囲気の場所にあるのかと思いきや、学生さんらしき若者たちが多く行きかう普通の地方の駅。
しかし、改札を抜けるとそこにはドドーンと銀河鉄道999!松本零士先生による巨大な「はやぶさ2応援看板」だ。町をあげて盛り上げている。

ここから車で5分ほど、JAXA相模原キャンパス内にその管制室がある。
道中は撮影禁止 場所は絶対に秘密
JAXA相模原キャンパスはごくごく普通の大学のような雰囲気。入り口に警備員はいるが、特に車止めがあるわけでもなく、なんとものどかな感じだ。木々がうっそうと生い茂るこのキャンパスのなかに、何億キロもはなれたはやぶさ2へ指令を出す管制室があるとは。

ちなみに、このキャンパス内の宇宙科学探査交流棟は見学自由。実物大の人工衛星や観測衛星の模型の数々のほか、先輩「はやぶさ」が実際に持ち帰ったカプセル(撮影禁止・残念!)が間近で見られる。


ここから歩ける距離に管制室があるのだが、撮影しっぱなしで行こうとしたらセキュリティ上の理由から「道中は撮影禁止」。随所に監視カメラが配置されているため、撮影は管制室に入ってから。そりゃそうだ。ということで、管制室にたどりついてみると…
普通な感じのデスクのパソコンで指示を出す
広さはなんとなく筆者の想定の範囲内。特別広くもなければ狭くもない。20人くらいが作業しても苦にならないであろう広さ。
特徴的なのはデスクの配置。前(大型モニター)に向かって逆Vの字の配置。席に座るひとたちが全員、室内の様子をみることができるよう工夫されている。
気になるのはみなお揃いの“ジャンパー”。これは制服?と思いきや、プロジェクトメンバーみんなが自腹で「高校の文化祭」のノリで製作したそうだ。なんとも楽しいチーム。ちなみに、服装は自由。

前方の大型モニターには現在のはやぶさ2の位置を示すデータが。左端の白い点がりゅうぐう。右側にふたつある点がはやぶさ2。横軸は距離で、この日のはやぶさ2はりゅうぐうから103kmの位置にいた。はやぶさ2の場所を示す点が2つあるのは、本来3次元の位置関係を、2次元のデータにしたため。

そのはやぶさ2に最終的な指示を出すパソコンは、前列中央。「万が一があってはならぬ」と、筆者が入ったこの日は電源が落とされていたが、座らせてもらえた。普通のデスクと普通のキーボード…難しい装置があるわけではない…ここから世界中が注目する探査機の位置がいじれる…言い知れぬワクワク感。この日は電源が落とされていることに納得だ。

室内の後部にはおおきな掲示板が。伝言とおぼしきメッセージの数々は、専門用語の嵐で、なにが重要で何を伝えようとしているのか素人には意味不明。ただ、インフルエンザの予防注射の案内や、メッセージ性のあるまんがの切り抜きなどが貼られている様子からは、チームが一体となり和気あいあいとミッションに臨んでいる姿が想像できた。

24時間いるときといないとき
チームはおよそ20人のシフト制。筆者が訪れた12月頭は通信状況が良好でないため、この時はいうならば「いったん休止」状態。2人~4人で状況を見守る。24時間常に人がいるわけではない。
常に気が張った状態で何人ものスタッフがモニターを見守っているとの想像は、筆者がこれまでに危機的なシチュエーション満載のNASAを舞台にしたハリウッド映画を見すぎたためであったと思われる。

ただ、本格運用が再開されれば、24時間体制となり、空気はがらっと変わるという。
太陽の影響から抜けるのは、12月末。本格運用の再開だ。
みなさんがこの記事を目にしてくださっているいま、まさに管制室は「本格運用モード」に切り替わったところだ。
そして、早ければいよいよ年明け1月末に着陸予定。
この管制室から指示が出されている姿を想像しながら推移を見守りたい。
(執筆:フジテレビ プライムオンラインデスク 森下知哉)