8月特集は「“危険な暑さ”から身を守る」。2022年の夏も暑い日が続き、熱中症に注意しなければならないが、熱中症は放置すれば死に直結しかねない。環境省が公開している情報や取材内容を基に、熱中症が疑われる場合の応急処置についてお伝えしていきたい。

熱中症の重症度は3段階に分類

環境省による保健指導のマニュアルによると、「暑熱環境にさらされた」という状況下での体調不良はすべて熱中症の可能性があり、重症度は大きく軽症、中等症、重症に分類されるという。

軽症の症状はめまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直など。軽症であれば、症状が徐々に改善している場合のみ、現場での応急処置と見守りで対応できる。

中等症の症状は、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下など。軽症が改善しない場合や中等症以上の症状が表れた場合は、すぐに医療機関を受診することが求められる。

(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)
(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)
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最も重い重症の症状は、中枢神経症状(意識障害、小脳症状、痙攣発作)、肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、血液凝固異常など。こちらは医療機関への搬送に加えて入院での加療が必要となり、最悪の場合は早期に死亡する場合もあるという。

つまり応急処置のチャートにもあるが、「熱中症を疑う症状があり、呼びかけに応えなかった場合は救急車を呼ぶ」など、いずれも適切な判断と早期の対応が求められる。

発症に備えて覚えたい「応急処置」

それでは、熱中症が疑われる場合はどうすればいいのか。共通しているのは、放置すれば死に直結しかねない、緊急事態であることを認識することだという。応急処置としてできるのは、まずは「涼しい環境への避難」。風通しのよい日陰、可能ならクーラーが効いている室内などに避難させる。ただし、重症など急を要する場合は救護が優先される。

(画像はイメージ)
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次に行うのは「脱衣と冷却」。重症と思われる場合は、熱中症が労作性(暑さに筋肉運動がプラスされて発症)によるものか、非労作性(一般的な暑さで発症)かで対処法が違ってくる。

労作性が疑われる場合は、重症者の体温を早期に下げる必要がある。方法としては、全身を氷水(冷水)に浸ける「氷水浴・冷水浴法」があるほか、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨される。非労作性が疑われる場合は、体の冷却や冷房を効かせた環境で安静にしつつ、早期に医療機関に搬送する必要があるとのことだ。

(画像はイメージ)
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次に軽症、中等症と思われる場合。こちらの応急処置は涼しい場所に移動させて衣服を緩め、飲料などで水分・塩分を補給させる。経口補水液やスポーツドリンクが最適だが、食塩水(水1リットルに1~2グラムの食塩)でも代用できるとのことだ。このほか皮膚を濡らして風を送ったり、氷などで冷やしてもよいという。

こうした対処で症状がよくなれば軽症だったことになるが、最初から症状が強かったり、嘔吐や吐き気などで水分補給できない、処置をしても症状が良くならない場合には、中等症以上が疑われるため、病院に搬送する必要があるという。

(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)
(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)

体を効率よく冷やすためのポイントは?

熱中症を放置してはいけないことは分かったが、予防のためにできること、体を効率的に冷やすためのポイントはあるのだろうか。その他の知識を、環境省の担当者に聞いた。


――熱中症の前触れといえる、サインはあるの?

一般論的なお話になりますが、暑い環境でくらくらしてきた。頭が暑い。このようなことを感じたら、熱中症が疑われることも考えられます。軽症の症状がまず出ると思いますので、涼しい環境への避難などで、悪化させないことが必要です。


――対処の緊急性はどう判断すればいい?

難しいところです。熱中症の見落としは怖いですが、全ての状況で救急車を呼ぶと病院側が混乱してしまうことも考えられます。中等症以上はJCS(意識レベル)で、何かしらの障害が出るのでそのようなことがあれば病院にいくべきです。体温が高い、汗をかかない、ズキンズキンとする頭痛、めまい、吐き気、意識障害。このような症状が表れるなら重症も疑われます。

(画像はイメージ)
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――体を効率よく冷やすには、どこをどう冷やすのがお勧め?

体温を下げるには、太い血管があるところを冷やすのが効果的です。体全体を冷たいプールのようなものに入れるのが望ましいですが、実際は難しいと思います。頸部の両側、鼠径部、脇の下、手のひらなどは血管が多い場所でもあるので、この辺りを冷やすのがいいでしょう。冷却方法で現実的なのは、冷たいペットボトル飲料や氷などを用意して当てること。濡らしたタオルを当てて風を送る方法もあります。個人的な備えですが、外出時は凍らせたペットボトル飲料を持ち歩いています。もしものときは冷やせて、氷が溶けたら飲むこともできます。

(画像はイメージ)
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――重症が疑われたとき、水分補給はさせていいの?

意識障害があるときは、水分を無理やり口に入れると窒息の原因となります。呼びかけに対する反応がおかしいなど、重症が疑われるときには救急車を呼んでいただければと思います。

体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」が予防策

――熱中症の対策として、備えられることはある?

長期(少し前から)では、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」があります。熱中症は体が暑さに慣れていないとかかりやすいので、汗をかきやすい体にすることで、深部体温をあがりにくくするものです。暑熱順化は必ずしも太陽を浴びる必要はなく、スポーツや入浴などで汗をかくことでもできます。

短期(前日や当日)では、自分の体調を把握してお酒を飲みすぎない、寝不足にならないこと。体調の悪さを感じたらその日は無理をしないという判断も大切です。このほか、体を冷やせる道具、水分や塩分を補給できるものを持ち歩くことも、日頃からできることだと思います。

(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)
(出典:熱中症環境保健マニュアル 2022)

――熱中症に関連して伝えたいことは?

熱中症は適切な対応をすれば防げますが、怠ると命に関わる問題にもなります。環境省では「熱中症警戒アラート」も発表しているので、このような情報を参考に、暑いことに気づいてほしいです。そして適切な対策もとっていただくことが大事だと思います。


今年の夏も厳しい暑さが続きそうだ。熱中症は屋内でも起きる可能性はあるので、環境省のアラートも参考にしつつ、まずは予防対策をする。その上で発症しても慌てないように、応急処置も頭に入れておきたいところだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。