ここ最近、テレビ番組でも取り上げられることが増え、やたらと耳にするようになった「ふるさと納税」。

なんとなくオトクということは知っていても、具体的な仕組みや何をすればいいのかわからず、手を出していない人は少なくないはず。

ふるさと納税を始めるのは、非常に簡単。しかも、今年のうちに行っておくと、来年の税金がオトクに。つまり、まさにいまが年内最後のチャンス、というわけだ。

今回、そんなふるさと納税について教えてくれたのは、税理士の永沼智子さん。

ふるさと納税ビギナーにいろいろ教えてもらった。

そもそも「ふるさと納税」ってどんな制度?

税理士・永沼智子さん
税理士・永沼智子さん
この記事の画像(5枚)

そもそも、ふるさと納税ってどんな制度なのだろうか。

「地方から都市部へ出てきたビジネスパーソンたちに対して、生まれ育った土地に還元をしてあげましょう、ということから生まれた制度なんです。具体的には、任意の自治体に寄付をすることで、返礼品として地域の特産品をもらうことができます。5、6年前くらいからにわかにブームになり始めていて、各自治体も趣向を凝らした返礼品を提案するようになりました」(永沼先生、以下同)

この「返礼品」もよく耳にするワードだ。肉や海産物、野菜、フルーツなどの食べ物はもちろん、なかにはインテリア雑貨や体験型イベントを返礼品としている自治体もある。

寄付をして、特産品をもらう。だからオトクということ?

image
image

「いえ、オトクだとされている理由は、寄付した金額から“2千円”を引いた金額が、翌年の住民税より控除されるから。つまり、今年のうちにふるさと納税を行っておくと、来年の住民税を抑えることができるうえに、一律2千円で地域の名産品が手に入るということなんです。

ちなみに、その年の所得税の還付を受けることもできますが、これには確定申告をする必要があります。会社勤めをしているビジネスパーソンにとって、確定申告はちょっと面倒ですよね? それであれば、“ワンストップ特例制度”というものを利用しましょう。この制度を使えば所得税の還付はないものの、住民税の控除を受けることはできますから」

このワンストップ制度とは、確定申告をする必要のない人たちを対象にした制度のこと。「ふるさと納税を行った」という申告書を各自治体に提出することで、確定申告の手続きをスキップして控除が受けられるようになる。

「ただし、1月1日~12月31日までの1年間で、寄付先が5自治体以下の方に限られます。それ以上寄付をした場合は、確定申告を行う義務が生じるので注意が必要です」

限度額を超えた寄付金は“自腹”に

ふるさと納税がオトクであることはわかった。では、早速やってみよう!…というわけにもいかないらしい。

「ふるさと納税をオトクに利用するためには、寄付の限度額を知る必要があります。その限度額というのは、所得に応じて異なるもの。うっかりオーバーして寄付をしてしまうと、そっくりそのまま自腹を切ることになってしまうんです」

なるほど。賢く利用するためには、自分の限度額を前もって調べておくことが大切だという。

「ふるさと納税の限度額は、今年の所得に対して定められます。手元にある源泉徴収票をチェックすれば、計算式で割り出すことができるんです。ただ、ちょっとややこしい計算が必要なので、まずはふるさと納税サイトでシミュレーションをしてみるのがいいかもしれません」

サイト上でシミュレーションする場合は、源泉徴収票に記載されている「総収入金額」「各種所得控除額」の2点がわかればOK。それらをフォーマットに入力すれば、限度額が導き出せるという。

ちなみに、計算式は以下の通り。

【ふるさと納税の限度額】
(住民税の所得割額× 20%)÷(90% - 所得税率×1.021)+ 2,000円


「とはいえ、シミュレーターで出せるのは、あくまでも概算でしかありません。医療費控除や住宅ローン控除がある人はそれを踏まえて計算をしないと、結局、ふるさと納税を自腹で行ったなんてことにもなりかねません。特に住宅ローンで住民税が全額控除されてしまっている人は、ふるさと納税を利用しても1円もオトクにならないんです」

自身の納税限度額を調べたら、あとは好きな自治体に寄付をするだけ!

と、その前に、最後にひとつ注意点があるそう。

「このふるさと納税ブームに便乗して、利用者から寄付金を騙し取ろうとする詐欺サイトが横行しているんです。自治体が運営する本物のサイトをそのままコピーして使っているような巧みなものもあるので、気になる場合は自治体に直接電話をかけて確認した方が安心でしょう。万が一騙されてしまった場合は、返礼品や控除といった特典が受けられないどころか、支払いに利用したカード情報が抜き取られてしまうおそれもありますから」

目先の利益に釣られて安易に飛びつくのは危険。しっかり見定めることが肝心なのだ。

「そして、オトクであることばかり説明してきましたが、大切なのは自治体に貢献したいというやさしい気持ちです。自己負担ばかりが大きくならない範囲で、まずは気軽に始めてみてもいいかもしれません」

物は試し。生まれ育った故郷、あるいは気になる市町村へ、温かい気持ちで寄付をしてみよう!

取材・文=五十嵐 大
取材協力=永沼智子

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。