富山県の朝日町では、いま、教育現場が大きく変化しています。
キーワードは「教育DX」、そして「地域との連携」です。
県内初、また最先端の「学びの形」を進める朝日町。
その狙いとは…。

朝日町のさみさと小学校。
6年生の理科の授業です。
人の体について、さまざまな臓器の役割を学ぶというのですが、授業の進め方はちょっとユニークです。

*説明する児童「肺の奥にある肺胞と呼ばれる袋にいく、同時に二酸化炭素もとりだす…」

調べたことを、タブレットを使って自由にまとめ、その資料を共有しながら発表し合います。
そして、授業の終盤。

*先生は「では残り10分。今まで学習したところを振り返ります」

一斉に始めたのは、デジタルの教材「AIドリル」です。

デジタル技術を活用する「教育DX」の推進を掲げる朝日町教育員会。
先月から、新たに町内3つの小中学校すべてで「AIドリル」を導入しました。
解いていく中で間違えやすいところをAI、人工知能が分析。
つまずきの元となっている学年の内容までさかのぼるなどして問題を出す、というのが大きな特徴です。

*さみさと小学校 松井和貴子先生「『個別最適化』ということで、自分に合った学習ができるのかなと。Q課題は? 教員の方で、誰がどこが終わっているというのは見る(確認する)ことができるが、子どものつまずきについて、確認したりというところで、どのようにみていけばいいか、もう少し私たちも勉強しなきゃいけないなと」

6年生、野坂都怜亜さんの自宅です。
この「AIドリル」では、小学1年生から中学3年生までの主要な教科の問題を自分で選んで解くことができます。
家庭での自主学習に活用している野坂さんはこんな使い方も…。

*野坂都怜亜さん「中学校の問題はまだやってないけど、試しに今度やってみようかなって。来年中学校(進学)だから、中学校の勉強も知っておきたいなって」

「個別最適」な学びにつながる「AIドリル」ですが、教員の働き方の面でもメリットがあります。

*さみさと小学校 松井和貴子先生「以前は、きょうの授業に合わせたプリントを用意するなどしていたが、丸付けの時間が短縮されて、子ども達と過ごすことなどに時間を使える」

教育現場で深刻な問題となっているのが教員の過重労働。
国の調査では、うつ病などの精神疾患で休職する教員が、ここ数年、毎年およそ5000人いて、高止まりしている状況です。
富山県内でも毎年40人以上が休職に追い込まれています。

文部科学省は2020年(令和2年)、時間外勤務の上限を「月45時間」とする指針を示し、教員の残業の抑制を求めています。
富山県内の公立学校の教員の時間外勤務の状況をみますと、昨年度(2021年度)は、2019年度と比べて、小・中・高校それぞれで減少しています。
ただこれは夏休みなどの時期も含めた1年間の平均のため、さらなる働き方改革が必要です。

*2021年度平均(2019年度比)
小学校42.7時間(-6.7時間)
中学校53.3時間(-12.0時間)
高校41.1時間(-6.6時間)

こうした中、朝日町では、「教育DX」とあわせ、教員の働き方改革に向けて先月から新たな取り組みをスタートさせました。

午後3時半、朝日中学校の3年生の教室で帰りの会が終わりました。
朝日町の3つの小中学校では先月から時間割を見直し、下校時刻を繰り上げました。
この繰り上げこそが、新たな挑戦です。

*朝日中学校 岩崎將展教諭「最初は慣れないので違和感はあったが、下校時間が早くなったので、その分事務作業などが早くできる。教材など研究する時間もあるので、時間的にゆとりは増えたかなと」

今回、朝日中学校では掃除の時間や部活動などを5分から10分短縮するなどして、全体で40分繰り上げました。

この取り組みに生徒も…。

*生徒は「(先生は)以前、すごい忙しそうにしてたが、早く時間が終わることで少しは楽になったんじゃないかなと」「楽しそうに(生徒と)話している。余裕がみえる」

しかし、下校時刻の繰り上げは、地域の協力で運行しているスクールバスを増便するなどの必要もあり、学校だけで判断するわけにはいきません。
今回の実現には、「地域の力」が大きく関わっています。

朝日町では、今年度から町全体で学校運営に取り組む県内初の制度を取り入れました。
それが、学校と地域、保護者が一体となって学校の運営について協議・企画する場を設ける「コミュニティ・スクール」。
そして、部活動や登下校の安全サポートなど、それぞれの分野で地域ボランティアが連携する「地域学校協働本部」で、このふたつを同時に導入しました。

下校時刻の繰り上げは、この形があったからこそスムーズに議論が進んだのです。

*朝日中学校 勝田民PTA会長(4月の学校運営協議会で)「今までの当たり前が、当たり前ではない時代ということで、先生方の働き方改革を家庭からもしっかり応援していく。ただそのときに、親御さんによっては、どうしていいかわからない。家庭の事情で子どもの面倒をみられないことも。そういうところは行政(町)、学校でも支援が必要ではないか」

デジタル技術の活用や地域との連携で進む「持続可能」な学びのモデルづくり。
少子化や過疎化が深刻な朝日町だからこそ、最先端の取り組みを進めることで、それを強みにできると考えています。

朝日町教育委員会 木村博明教育長「朝日町は、今後20年先(の社会)を先取りしている町だと思っている。やがてどの地域も朝日町のような問題が、必ず起こってくるはず。ここをしっかりとクリアして課題を解決することで、これからの富山県、日本に対して『こんなことができる』『こんなことしたらどうですか』と、朝日町型モデルを発信できる可能性をもっている」

富山テレビ
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