安倍政権が重要政策の1つに据えている「女性活躍推進」。
女性の就労が増え、共働き世帯も増加するなど「女性活躍」が浸透しつつあるが、その女性の活躍のウラで生じる“ひずみ”も多い。その“ひずみ”の1つとして、「共働きと習い事」がある。

中には「子どもの将来のために...」と教育資金を稼ぐためにフルタイムでがんばるお母さんもいるだろう。しかし、共働きがゆえに、子どもの習い事を断念している現実が見えてくる。働けば働くほど、子どもの習い事で悩む、働くお母さんのジレンマがある。

9割の働く母親が“習い事に”前向き

子どもを持つ共働き夫婦が、成長とともに気になってくるのが「習い事」。
ベビーシッター・家事代行サービス「キッズライン」が実施した、「習い事」に関する調査では、共働きの63.1%が「子どもに習い事をやらせている」、29.8%が「やらせようか検討中」という、結果が出た。
合計すると働く母親の9割以上が、習い事に前向きな姿勢がうかがえる

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しかし、共働き夫婦はどのようにして、子どもを習い事に通わせているのだろうか?
働く母親からは、以下のような悩む声が聞かれた。

「子どもが希望する習い事に通わせたいが、開催日が平日しかなく、親が遠方で送迎を頼れない。休日の習い事がもっと増えたら…」
「プールに通わせたいが、週末のクラスはキャンセル待ちで半年以上かかる」
「子どもは楽しく通っているが、送迎や準備といったサポートをハードに感じる」

3人に1人の親が、習い事を断念

「平日の日中など働いている時間に習い事をやらせていますか?」という質問に対し、「やらせたいけどできていない」と答えたのは3人に1人の34.5%、その理由は、習い事の内容でも日程の問題でもなく、88.4%が「送迎ができない」からと回答。仕事をすることで時間的な余裕がなくなり、葛藤する親の姿が浮かび上がった。

どうすれば、仕事をしながら、子どもに習い事を通わせることができるのだろうか?子どもの習い事の情報サイト「コドモブースター」を運営するセンジュ代表取締役・曽原健太郎さんに聞いた。

5~6歳の80%以上が習い事をしている

ーーどういった習い事が人気? 習い事をしている割合は?

スイミング、音楽、英語が人気です。最近では、プログラミング、そろばんのほかに、すべてのスポーツの基礎となる「ボールの投げ方」など、体の動かし方などを覚える運動教室も目立ってきています。


ーーどれくらいの子どもが習い事をしていますか?

幼稚園の年少相当の年齢で50%、年中相当で70%、年長相当で80%以上が、何らかの習い事をしている調査結果があります。この割合は昔に比べると上がってきています。

しかし、世の中の“習い事”熱が高まる一方で、送迎が両親のみでまかなえずに断念している現状がある。
その問題に対し、どういった解決方法があるだろうか。

共働き世帯が習い事をするためには…

行政サポートの課題

各市区町村の行政のサポートとして、「ファミリーサポートセンター事業」(以下、ファミリーサポート)といったものがある。これは、育児の手助けを必要とする人(利用会員)と、育児の手助けができる人(協力会員)を結びつけ、会員同士の信頼関係に基づく援助活動を通じて、子育て家庭を支援するというもの。

東京・江東区では、ファミリーサポートの活動の半分が、「習い事の送迎」だという。
希望の曜日や時間、場所などがマッチせず、サービスが提供できないこともあるそうだが、親が仕事をしている、していないにかかわらず利用できる。しかし、利用会員が増加しても協力会員が増えないと、サービスは受けられない。協力会員数を増やすため、説明会や登録会の回数を増やすなどの対策はしているものの、なかなか追いついていないのが現状だという。子育て世帯に人気のある世田谷区と杉並区にも確認したが、似たような状況だった。

セキュリティー問題による送迎人の制限

最近では、セキュリティーを重視し、送迎者を原則、保護者に限定したり、顔写真などの事前登録が必要な園もある。前述の曽原健太郎さんによると、「保育園や幼稚園の中には、親以外がお迎えに行くことを禁止しているところもあります。そのため、園の寛容度が改善されないと、ベビーシッターを利用したくとも利用できないという問題が発生します」と、指摘する。

子どもの安全は大切だが、利用者のニーズにあった柔軟な対応が必要な局面になってきたのかもしれない。

2児の子どもを育てながら働く筆者も、4歳の保育園に通う娘から「公文(学習塾)に、わたしも行きたい!」と、懇願されているが、平日の送迎問題から諦めていた。「わが子には豊かな経験をさせたい」と思いつつも、働いていることがネックとなっている。

このように「女性活躍」が言われる中、母親が働くことで子供の習い事を諦めなければいけない現実がある。
しかし、「何かを得るため、何かを失う」といった働き方が改善されなければ、働く母親のジレンマは続き、本当に女性が活躍できる時代にはなっていかないのではないだろうか。

(執筆:清水 智佳子)


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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。