政府は29日、国や社会に貢献した人を表彰する令和2年春の叙勲受章者4181人を発表した。様々な分野で優れた功績をおさめた人に贈られる「旭日章」のうち、旭日大綬章は、経団連元会長の榊原定征さん(77)、米・マイクロソフト創業者で、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の共同議長を務めるビル・ゲイツさん(64)らが受章し、旭日小綬章は、長編小説「流転の海」シリーズなどを手掛けた芥川賞作家の宮本輝さん(73)らが受章した。

新型コロナウイルス禍の中、各受章者がこの難局をどう捉え、何を思うのか。緊急事態宣言下で感染拡大を防止する観点から直接の取材は叶わなかったが、寄せられたコメントを紹介する。

作家 宮本輝さん “世界的なコロナウイルス禍…芸術は答えをもたらす力をもつ”

芥川賞作家・宮本輝さん(73)は、広告代理店等を経て、1977年に「泥の河」で太宰治賞を、翌年1978年に「螢川」で芥川賞を受賞した。その後、結核を患い約2年の療養生活を送るが、回復後も執筆活動を続け、数々の作品を世に送り出した。2010年に紫綬褒章を受章し、2018年には37年かけて自伝的大河小説「流転の海」シリーズ全9部を完結させた。生涯を執筆活動に捧げた宮本さんは受章の喜びをこのように綴った。

「27歳のときから46年間も小説を書き続けてきて、このたび旭日小綬章を賜ることになりました。とても光栄なこととして、ありがたく感謝いたしております。折から、世界的なウィルス禍によって、人々は生命の危機に直面していますが、人間、自然、環境、人生といったものに、あらためて深い視線を向けるときが到来したのかもしれません。文学にかぎらず、芸術はそれに答えをもたらす力をもっていると信じています。このたびの栄誉に背を押されて、再び原点に戻り、さらに努力して、新たな小説を書き続けていこうと思っています」

経団連・榊原名誉会長“未来の展望失わず日本の再生目指し努力”

東レ出身で経団連の名誉会長・榊原定征さんは、「今回の感染症拡大は、これまでに経験したことのない世界規模の危機ですが、国内での危機克服と同時に必ず貢献できると確信しています。危機を乗り越えるだけではなく、ポストコロナの時代には『Society5.0 for SDGs』に向けて新しい社会づくりが加速することを期待したい」と強調し、下記のようにコメントを寄せた。

「この度は受章の栄に浴し、身に余る光栄に存じます。これもひとえに、経済界はもとより、各界各層の皆さまのご指導とご支援をいただきながら、共に歩みを進めてこられた結果です。経団連会長在任中に注力いたしました“Society 5.0”のプロジェクトが、未来を切り拓く鍵として広く浸透し始めたこの時期の受章は、望外の喜びでございます。現下の困難な状況の中で、未来の展望を失わずに豊かで活力ある日本の再生を目指して、引き続き、微力ながら努力して参る所存でございます」

コロナ治療薬を支援・ゲイツさん“人類はパンデミックに打ち勝つことができる”

米・マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさん(64)は、自身が妻・メリンダさんと創設した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が保健分野における日本の国際貢献の向上に寄与したとして、旭日大綬章を受章した。ゲイツ財団は2000年に設立され、アフリカなどの発展途上国の感染症予防に取り組んでいるほか、同年の九州沖縄サミットを機に日本政府が肝いりで立ち上げた「グローバルヘルス技術振興基金」に出資するなどしてきた。

そしてゲイツ財団は今回の新型コロナウイルスをめぐり、治療薬やワクチン開発を加速化させるため、2億5000万ドル(約270億円)を超える資金を拠出している。今後は、感染症の抑制、極貧状態の根絶といった中核的取り組みにも注力していくと表明した。

Gates Notes LLC.

また、ゲイツさんは2015年に世界的な感染症の発生を予言し、感染症が起きた場合に何をすべきかについて問題提起するなど、感染症の怖さをかねてから訴え続けてきた。現在は、財団としての治療薬開発の支援にとどまらず、自身のSNSでコロナウイルスに関する情報発信を積極的に行うなど、言わばライフワーク的な形で感染症対応にあたっている。

「質問にこたえます」とSNSで質問を募集するビルゲイツさん ツイッターより

叙勲受章にあたり、ゲイツさんは以下のコメントを綴った。

「このたびは叙勲の栄に浴し、日本に感謝申し上げます。また、直接受章することが叶うならばと思います。マイクロソフト社で働いていた40年前に日本に出張するようになり、日本のコンピューター・プログラマーやエンジニアの皆様の革新的な仕事ぶりに感銘を受けました。今日、私は日本の科学者と医学研究者の方々に対して同様の敬意を表します。彼らは、私たちビル&メリンダ・ゲイツ財団と協力し、これまで致命的な病気と戦うため新しい技術を開発してきました。 その革新の精神こそが、人類がこのパンデミックに打ち勝つことができると確信する理由です。私と、日本を愛するすべての人が再び日本に戻れる日が来ることを祈っております」

叙勲の受章者から寄せられたコメントには、「コロナウイルス」「世界規模の危機」「パンデミック」といった言葉が浮かびあがる。長年の功績がたたえられても尚、世界的な危機を乗り越えるために「今、できることは何か」足を止めることなく模索し続けている彼らからのメッセージに今後も耳を傾けたい。

(フジテレビ政治部 官邸クラブ 阿部桃子)