自宅待機中に2人死亡、埼玉県は死亡経緯発表せず

埼玉県で4月に入り自宅で療養をしていた人が亡くなる事態が相次いでいたことが明らかになった。

県では新型コロナウイルスの感染者が入院できる病院のベッド数が逼迫しており、現在250人を超える軽症者(4月29日時点)が入院できずに自宅で待機している状態となっている。

埼玉県は県内で確認された新たな陽性者の人数や死亡した患者に関して、毎日記者会見を行っているが、これまで死亡した患者について病院に入院していたのか、それとも自宅待機中だったのかを含む死亡に至る経緯について、遺族の意向などを理由に明らかにしてこなかった

埼玉県の会見 4月23日
この記事の画像(6枚)

これに対して、私を含む埼玉県政記者クラブに所属する記者は、個人のプライバシーに最大限配慮することは「県と同じように必要と思っている」と伝えた上で、死亡した患者が病院で治療中だったのか、自宅待機中だったのかを明らかにしてくれなければ、県がこれまで軽症者に対して行っている自宅待機という対応が正しいのかどうかを検証することができず、県民に対して正しい情報を伝えることができないと申し入れをしてきた。

そのような中で、自宅待機中だった50代の男性が死亡していたという事実が、県の発表ではない形で明らかになった。

白岡市に住む50代の会社員男性は1人暮らしをしており、4月16日に感染が確認されたものの入院の調整がつかなかったことから自宅待機となっていた。しかし20日に容態が急変し翌日21日に死亡が確認された。

自宅待機中の患者には保健所の職員などが原則1日1回、経過観察の為に連絡をとるようになっている。

50代の男性は死亡する前日の夜、保健所の担当者と電話で会話している際に体調不良を訴え、翌日の午前中に病院へ入院することが決まった。しかし、その電話の後に容態が急変し、翌朝連絡が取れないことを不審に思った親族に発見され、すぐに病院へ搬送されたが死亡が確認された。

さらに50代男性の死亡以前に、東松山市に住む70代の男性が死亡していたことも県の発表ではない形で明らかになった。

70代の男性は4月4日に咳などの症状が出始め9日に陽性が確認された。症状が軽症ということで自宅待機となっていたが5日後の14日に容態が急変し死亡した。

いずれのケースも毎日行われている記者会見では、「軽症で自宅待機中だった」という事実は公表されていなかった。

私が記者として思うことは、70代男性が自宅待機中に死亡したことを県が公表していれば、感染者の対応をしている保健所を始め関係各所の担当者のみならず、当事者である患者や、それを支える家族、そして県民の認識にも働きかけることができたのではないだろうかということだ。

今回の新型コロナウイルスで起きている感染拡大は、前例がないことから対応については議論、改善がなされている段階である。だからこそ現在起きている状況を一部の関係者だけでなく全員が正しく共有し、同じ事が繰り返されないように、それぞれの判断や行動が必要になってくると思う。

4月14日の時点で県が「70代の男性が自宅療養中に容態が急変し死亡した」という事実を明らかにしていれば、21日に死亡した50代の男性は、前日の保健所職員とのやりとりの中で入院を1日待つこと無く病院へ入院し、その後、容態が急変していても人工呼吸器などの処置ができ一命を取り留めた可能性があったのではないかということだ。

埼玉県大野知事「我々の責任は重い」

埼玉県の大野知事は、これを受けて24日朝の登庁前に記者の取材に対して次のように述べた。

埼玉県大野知事:
このような事態に至ったのですから、我々の責任は重いと考えており、その対応方針について変更をするための検証をしたい。

4月24日午前8時頃に記者対応する埼玉県・大野元裕知事

さらに、同日の午後に行われた記者会見でも大野知事に対して記者からいくつか質問が出た。

記者:
自宅待機中に亡くなったかどうかは必ずしもプライバシーの問題では無い。正確な情報を提供してもらえないと、政策・医療体制が正しいか検証が後からできなくなる。

大野知事:
その通りだと思います。しっかりやる必要があると思います。そこについては協力したい。(死亡した患者の情報について遺族から)了承を得られた限りにおいてはきちんとやらせて頂きたいが、他方でご遺族の気持ちと亡くなられた方の尊厳については、私は重く受け止めたいと思っています。

4月24日午後会見する埼玉県・大野元裕知事

大野知事は、個人のプライバシーにはこれまで同様、配慮していく必要があると話しながらもできる限りの情報の公表についてはしていきたいと話した。

今後自宅待機患者はホテルへ

大野知事はまた、これまで行っていた軽症者の自宅待機という対応に関して、今後は埼玉県内のホテルを借り上げ1000室のベッドを確保し、ゴールデンウィーク明けまでに自宅待機の患者をできる限り宿泊療養へとすると明らかにした。

ホテルには医師と24時間体制で看護師が常駐することから、今後は感染者の容態が急変した際に迅速な対応がとれることになる。

「アパホテルさいたま新都心北」に陽性者が入る様子 4月15日

私は埼玉県内で陽性となった患者や新型コロナウイルスの対応に携わる医師や看護師を始めとする医療従事者、それを周りで支える方々、そして陣頭指揮を執っている大野知事、県職員の方々、自粛要請を受け入れている県民の方々、この新型コロナウイルスの対応に関わる全ての人たちにとって意味のある、そして役に立つ報道をしていきたいと思っている。

(フジテレビ報道局・社会部所属 埼玉県政担当 河村忠徳)