相次ぐクマの出没、その範囲は山間部から市街地に広がっています。
なぜクマは人里まで下りてくるようになったのか。
その背景にはわたしたち人間の行動が深く関わっていました。

のそのそとうろつくクマ、時折辺りを見渡す様子も。
目撃されたのは鳥取県若桜町の集落に近い林道です。
今年度は2件の目撃情報がある若桜町。
鳥取県内有数の「クマ出没エリア」です。
その理由を探るため、取材に向かいました。

(クマと遭遇した・大久保広明さん)
「ちょうどそこのカーブを曲がったあたりで、いきなり現れた。そのとき、クマが立ち上がって「ガオー!」って感じだったので一生懸命逃げました」

クマに遭遇した経験を話す大久保さん。
仕事で山に入ったときに、体長2メートル近いクマと鉢合わせになったといいます。

(再現)「うわ!」走って逃げる大久保広明さん

(記者・質問)時期はいつくらいでした?
「どうだろうねぇ。このくらいの時期だったと思うけどね。」

(記者・質問)6月7月あたり?
「うん」

鳥取県内の過去5年間の月別のクマの目撃件数です。
実は6月が最多で167件、8月にかけての夏場に集中しています。
いったいなぜなのでしょうか?

(鳥取県緑豊かな自然課福田素子係長)
「5月6月はクマの子別れ期で親グマと子グマが別れる時期なので子グマが動き回る。また繁殖期なので若いオスグマが行動範囲を広げる」

オスのクマの活発化。
初夏はクマの繁殖期で、オスグマがメスを探し求めて行動範囲を広げるため、人と遭遇する機会も増えるといいます。

さらに近年は、クマと遭遇する地域に異変も。

(クマと遭遇・大久保広明さん)
「車で走っていたら、クマが道を横断していた。多分車に驚いて、階段を上がって山に帰っていきました」

(記者・質問)山奥だけではなく集落の方でも見られる?
(大久保広明さん)
「昔は山に入ったらクマに遭遇するイメージだったけど、最近は下の方(集落)でも見かける、かな?」

同じような状況は松江市でも。

(竹下記者)
「クマが目撃されたのは住宅団地から100メートルほど離れた裏山です。」

5月23日、松江市の住宅地の近くで目撃されました。
人里にまで下りてくるようになったクマ。
背景には何があるのでしょうか?

(鳥取県緑豊かな自然課・福田素子係長)
「県が保護してきた面があり、かつては絶滅危機に瀕していたツキノワグマの個体数が回復してきた」

個体数の増加、鳥取県内にも生息するツキノワグマは絶滅の恐れがあるとして県が狩猟を禁止するなど保護してきました。

その結果、鳥取、岡山、兵庫の東中国地域で1990年代に150頭ほどだった個体数は今年、その5倍あまりの約800頭にまで回復。

絶滅の恐れがなくなるまでに繁殖し、その結果、縄張りから追い出され、行き場を失ったクマがエサを求めて市街地にまで移動していると見られます。

さらに。

(本田記者)
「手入れが全く行き届いてなくて、草が僕の腰くらいまでのびてますね」

中山間地域の過疎化による耕作放棄地の増加です。

(若桜町農山村整備課・林辰彦さん)
「こうやって手入れが出来ていないと、クマの方も自分の生息ゾーンだと認識してしまう。また、所有者が不明な果実の木にクマが目をつけ食べていくケースもある」

耕作放棄地や管理されていない山林など人間の気配が感じられないエリアをクマは自分の縄張りと認識。

こうした場所が、住宅地近くにも出現するようになったことで、クマの縄張りが広がり、人間と出会う機会も増えていたのでした。

クマが人里に現れる原因をわたしたち人間が自ら作っていたのです。
では、クマと遭遇した場合、どう対処すればよいのでしょうか。

(鳥取県緑豊かな自然課・木山真大さん)
「急いで走ってしまうと逆にクマが追いかけてくる危険がある。音を立てずに後ずさりしていただくのが良い」

人の手が入らない土地が増えたことで人里にも現われるようになったクマ。
その生態をよく理解すれば、共存の道が開けてきそうです。