JOCアスリート委員会の呼びかけにアスリートが即レス

新型コロナウイルス感染拡大により社会全体に閉塞感が漂うなか、JOC=日本オリンピック委員会のアスリート委員会が呼びかけに応えたアスリートによるSNSを使った応援メッセージが話題を呼んでいる。

JOCによると、今月17日から始まった応援メッセージは3日間で47競技230以上の投稿があり、なかでも男子フィギュアスケートの羽生結弦選手のメッセージは、ツイッター上で約59万1千再生(27日時点)まで伸びるなど、アスリートの言葉に勇気をもらった人も多い。

(JOCアスリート委員会の呼びかけでコメントする羽生結弦選手)

〝仕掛け人″は39歳現役アスリート、澤野大地アスリート委員長

この企画の“仕掛け人”はJOCのアスリート委員会。

JOCアスリート委員会とは、夏季冬季大会のオリンピアンを中心に構成されている組織でアスリートの支援活動などをサポートし、各競技団体にも存在するアスリート委員会とJOC理事会との連携役を担うなどJOCの中でも特にアスリートと密接な関係にある組織だ。

現在のアスリート委員長には陸上・棒高跳び リオ五輪7位入賞で39歳の今なお現役の澤野大地選手。

そのほか、委員としてリオ・ロンドンなど4度の五輪を経験してる競泳、松田丈志氏、ロンドン五輪銀メダリスト、フェンシングの千田健太氏などがメンバーに入っている。

澤野大地委員長はフジテレビの取材に応じ、「今はスポーツ界も社会の一員として収束に協力することが最優先であり、JOCアスリート委員会が今できることを検討しました。

人と人とが直接会うことが難しい現状を考えると、SNSでの発信が一番現実的という結論になりました」と企画の発端を語った。

SNSでの直接発信によりスピード感ある対応が可能に

きっかけになったのが3月末。澤野委員長が、IOC=国際オリンピック委員会と世界各国のアスリート委員会の集うテレビ会議に参加した際、他国のアスリートからも「SNSを通じたメッセージ発信で協力したい」という意見が出ていたことだという。

澤野大地アスリート委員長
澤野大地アスリート委員長
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その後4月中旬に各競技団体のアスリート委員会やJPC=日本パラリンピック委員会のアスリート委員会とも連携。

4月17日から5月6日までアスリートに投稿を呼びかけることが決まった。

アスリート委員会によると、アスリートには投稿テーマとして、トレーニングやリフレッシュなど、アスリートの得意分野を投稿する「Stayhealty」。医療従事者や生活インフラを支える人々に感謝と応援を伝える「Thanks」。感染拡大防止のための呼びかけを訴える「Stayhome」。の3点を踏まえてもらい、自主的な投稿を呼びかけたという。

呼びかけ当初は「アスリートによって抱える事情は様々」と澤野委員長が話すようにあくまでSNSへは主体的な投稿としていた。

ある競技団体の幹部は「今の時代はネットで何か話したら、いつ足元をすくわれるかわからない」と協会を通さないアスリートのSNS発信に不快感を示す人もいた中、アスリート委員会はスピード感を重視し、わずか約1週間でこの企画を実行に移した。

今回アスリート同士は垣根を超え、タイミングを合わせ医療関係者や生活インフラ関係者への感謝を表明し大きな反響を呼んだ。

澤野委員長は「競技の枠を越え、日頃たくさんの応援を受けている多くのアスリートが今回の趣旨に賛同し、社会の一員としてメッセージを発信してくれたことを大変嬉しく思います。

協力いただいたアスリート、関係者の皆様にお礼を申し上げます」と呼びかけに協力した各アスリートに感謝の言葉を述べた。

(澤野大地アスリート委員長ツイッター)

これまで、多くのアスリートは各競技団体や所属先を通じてコメントする形が主流だったが、JOCアスリート委員会が呼びかけ、SNSを使いダイレクトに選手の声を届ける形ができたことは民間企業や自治体とは違うスピード感を持ち、今後のアスリートの情報発信における大きな契機になった。

「メッセージに対する皆様のコメントを拝見し、改めてスポーツには力があると感じました。引き続きアスリートたちと共に、いまスポーツにできることを考えていきたいと思います(澤野委員長)」。

もちろん、コロナウイルス流行の状況下でスポーツ競技の再開の目処は立たず「いまの日本にスポーツをする、スポーツを見る余裕はない」「現在の状況でオリンピックをする意味があるのか」とスポーツ競技、五輪に対するネガティブな意見があるのは間違いない。

それでも東京五輪に向けて努力してきたアスリートたちが、1年の延期が決まって先が見通せない中でも投稿するポジティブなメッセージは、多くの国民に届いていると信じたい。

(フジテレビ報道スポーツ部・川崎健太郎)

川崎健太郎
川崎健太郎