東南アジア・タイでは4月24日現在、一日の新規感染者数は20人以下に抑えられ、新型コロナウイルスの抑制に成功しつつあるようにみえます。一方で経済への打撃は深刻です。タイは貧富の格差が大きく、最近では仕事を失い、貧困やストレスで追い詰められた人たちの自殺が相次いでいます。タイは今どのような現状かを解説します。

タイではここ最近、新規感染者が20人前後で推移し、累積の感染者数を3千人以下に抑え込んでいます。この成果は、タイ政府が感染拡大抑制のために打ち出した厳しい制限の賜物です。首都バンコクでは職場や工場などの閉鎖命令は出ていないものの、3月末から、食料品店や薬局など生活に必要不可欠な店を除く商業施設やマッサージ店、理髪店やパブやバーなど人が集まる場所を閉鎖し、レストランでの飲食も禁じています。また非常事態宣言を発令し、夜10時から朝4時までの夜間外出禁止令も罰則付きで厳しく適用しています。

こうした経済や社会活動を大幅に制約する内容は、感染抑制には大きな効果を発揮した一方、タイの低所得者層を直撃しています。タイは世界で最も貧富の格差がある国の一つといわれ、経済界からは一連の対策がこのまま続けば、1000万人の失業者が出るとの報告が上がっています。そして最近では精神的に追い詰められた人が自殺するケースも出てきています。

バンコク北部のアユタヤ県では4月19日、県内を流れるパーサック川で40歳の男性と5歳の娘の水死体が見つかりました。男性は建設関係の仕事をしていましたが、新型コロナウイルスの影響で先月から仕事が無く、亡くなる直前にはお寺の敷地内で娘と生活していました。

地元メディアによりますと、川の近くに住む人が、男性が飛び込んだと見られる音を聞いていて、その後、娘が「私を置いていかないで」と泣き叫んでいたことから、娘も後を追って飛び込んだとみられています。

タイ政府は対策として非正規労働者や自営業者などに1人あたり月5000バーツ、日本円で約1万6000円を支給する支援案を打ち出しました。対象者は900万人に上り、一部には支援金が支払われましたが、支給対象から外れた人が困窮して自殺するケースもありました。こうした新型コロナに関連する自殺で、3月20日以降、少なくとも22人が死亡したとの報告も出ています。

バンコク市内では、経済難に苦しむ低所得者層に対する支援の動きが広がっています。王宮に近い配給所を訪問すると、35度を超える炎天下の中、配り始める30分前に、既に数百人もの人たちが列をなしていました。話を聞くと、並んでいる人たちは、つい最近まで、普通に生活をしていた人たちでした。

アヌソンさん:
「物が2ヶ月売れません。小物などを売っているのですが」
「前は1日200-300バーツ売上がありましたが、2ヶ月売れてない。お金が全くありません。」「こんな経験するとは思っていなかった。なぜこうなったか困惑しています。」

並んでいた女性:
「パッタイを売っています。」
「主に夜に売ってたので(パッタイを)売るのを止めた。昼も夜も…お客がいません。政府の指示で家にいるからです。」
「1番大変なのは家賃、それと食事。貯金がないのですから。」

タイ政府は今、規制をどう緩めていくのか、頭を悩ませています。
経済回復のためには規制を緩める必要がありますが、それが感染拡大の第2波を引き起こす恐れがあります。もしクラスターと呼ばれる集団感染が再び起きれば、対策はやり直しとなり、元の木阿弥になってしまいます。

政府は感染者が出ていない県から、理容室や飲食店などに条件付きで営業再開を許可し、徐々に緩和の方法を探り、成功すれば、政治経済の中心である首都バンコクでも6月上旬から規制を緩和していきたい考えです。

感染拡大を防ぎながら、経済活動の制約を徐々に解除するという、ウイルスとの難しい闘いはまだ始まったばかりです。

【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】