3月5日、韓国の文在寅大統領の特使として北朝鮮の金正恩委員長と会談し、6日帰国した鄭義溶・国家安保室長は、来月末に軍事境界線にある板門店の韓国側施設『平和の家』で、11年ぶり3回目となる南北首脳会談を開くこと。南北首脳間のホットラインを設置し事前に電話会談を行うことで合意したと発表。

また、北朝鮮側は、朝鮮半島の非核化の意志を明確にし、軍事的威嚇が解消され、体制が保障されるならば、核保有の理由はないと明言し「南北対話が続く限り、核・ミサイル実験は行わない」と確約したという。

これを北朝鮮の譲歩と見るか、それとも、結局は時間稼ぎと見るかは、見解が分かれるところだろう。

米の北朝鮮専門研究機関38NORTHは、3月5日、最近の衛星画像の解析から、寧辺の原子炉稼働の兆候があるとの分析結果を発表しているが、これが核弾頭の材料となるプルトニウム生産に繋がるなら、北朝鮮は核弾頭について、必要な数を確保するまで、南北対話を続けるとみる向きもあるかもしれない。

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また、北朝鮮は、昨年11月に試験発射を行った火星15型大陸間弾道ミサイル(参照:上写真)の弾頭部は、大気圏再突入に耐えられなかったと見られており、その技術的完成を目指すなら、時間が必要であるはずだ。

いずれにせよ、南北首脳会談を4月末に設定するのなら、北朝鮮にとっては、まず、1か月余の時間を確保出来たということかもしれない。

穿った見方をするなら、北朝鮮が、もっと時間を必要とする状況になれば、ホットラインで韓国を揺さぶりつつ、首脳会談を先延ばし、または、2回目の南北首脳会談の設定を試みるかもしれない。

さらなる課題は、米韓合同軍事演習だ。

例年、米韓は合同で指揮系統の演習「キー・リゾルブ」を3月に、部隊を実際に動かす合同野外機動演習「フォール・イーグル」を4月に行い、米軍からは1万人以上、韓国からは30万人余りの参加規模となる。

だが今年は、平昌オリンピック・パラリンピック開催ということで、演習は4月からとなる見通し。金委員長は「例年の水準なら受け入れる」と理解を示し、韓国政府は「米朝対話が始められる環境が出来た」と評価したという。

だが、この『例年の水準』という言葉は何を指すのだろうか。

昨年は、空母「カール・ヴィンソン(参照:上写真)」を中心とする空母打撃群やB-1B爆撃機、それにF-22A、F-35Bステルス戦闘機も参加した過去最大規模の演習だったとされる。

だが今年は、質の面で、昨年を上回るかもしれない。

3月5日、本格的な展開を前に、東シナ海を試験航海中だった強襲揚陸艦WASP。

山口県・岩国基地に配備されている米海兵隊のF-35Bステルス戦闘機が日本配備後、初めて、WASP艦上で発着艦したのだ(参照:上写真)。

フォールイーグルでは、米韓合同の上陸演習が実施される。

米海軍・海兵隊は、上陸する米海兵隊員を運び、空・海から支援する部隊として強襲揚陸艦、ドック型揚陸艦を中心にイージス艦、攻撃機、ヘリを加えて「遠征打撃群」を構成してきた。

だが、佐世保を事実上の母港とする強襲揚陸艦、WASPは、F-35Bの運用能力を持ったことで、米海軍唯一の「強化型遠征打撃群」を構成することになっている。

ステルスとして敵軍上空に進入しうるF-35Bの優れたセンサーが捉えた地上の画像を米空母から発進するF/A-18戦闘攻撃機や、他の強襲揚陸艦から発進するAV-8B攻撃機に送付することで、航空機からの地上攻撃は格段に強化される。

数の面ではともかく、質、能力の面では格段に強化されることになる。

米韓合同軍事演習にWASP強化型遠征打撃群が参加するかどうかは分からないが、もし参加するなら、その参加を金正恩委員長は「例年の水準」と見做すかどうか。恣意的に解釈されれば、今年の米韓演習を受け入れられないとする口実にされてしまうかもしれない。

韓国政府は、今回の特使派遣で、米朝対話の「環境が出来た」としているようだが、評価は慎重に見定める必要がありそうだ。