「女優になりたい」。そんな女性の夢や希望を食い物にする、悪質な犯行が繰り返されていた可能性がある。吉岡康成容疑者(53)は、プロデューサーを名乗って、映画のオーディションを開催。それを受けに来た40代の女性に、わいせつな行為をした疑いがもたれている。
レンタルルームで映画のオーディション
警視庁捜査一課によると、吉岡容疑者は、自称・映画プロデューサーとして、自主制作映画の出演者をインターネット上で募集。今年1月、東京・池袋のレンタルルームで、応募してきた女性に対する、オーディションを企画したという。

ここまで書くと、まるっきり”詐欺話”のように見えるが、実際、この自主制作映画は存在していた。キックボクシングのトレーニングを通じて主人公が成長していくというストーリーで、タイトルは「WILD」(仮題)。脚本家や助監督、カメラマンも手配済みだった。確かに、吉岡容疑者も映画制作に関わっていた節はある。映画の脚本もあったようだ。
用意された台本にはキスシーンが
ところが、オーディションには”疑惑”の台本が用意されていた。タイトルは「教室」。内容には男女のキスシーンが盛り込まれていた。会場には、吉岡容疑者と、オーディションを受けに来た被害女性の2人だけ。台本の一場面を演じることになった。

~台本「教室」から抜粋~
茜「遅いよ・・」
淳「えっ・・」
茜「ずっと好きだったのに・・、淳のこと」
見つめ合う二人。二人は激しくキスをする。
「淳」役を演じる吉岡容疑者。シナリオに沿って、「茜」役の被害女性にキスをして、そして、胸を触るなどしたというのだ。

このオーディションは、もともと吉岡容疑者が相手役を演じるとの想定で開かれていた。ただ、実際に企画されていた自主制作映画「WILD」の脚本には、このような男女の”絡み”は一切ないという。
「教室」というタイトルの台本が、わいせつ目的で作られたものかどうかは分かっていない。ただ、吉岡容疑者が、その内容に便乗して、わいせつ行為に及んだことは間違いなさそうだ。
オーディション参加の女性20人以上 余罪追及へ
調べによると、被害女性は「自身の演技力を見るために、これらの行為が行われているかもしれない」と思い込んでいたという。このため捜査一課は、女性が抵抗できない、いわゆる“抗拒不能の状態”だったと判断し、準強制わいせつ容疑で、吉岡容疑者の逮捕に踏み切った。
準強制わいせつ容疑と言えば、例えば、酒に酔って抵抗できない状態や、医師が、診察と偽って、患者にわいせつな行為に及ぶケースなどで適用されることが多い。

吉岡容疑者は、同じオーディションで、別の20代女性に対して、わいせつな行為をしたとして、今年2月に逮捕、翌3月に起訴されている。逮捕は今回が2回目だ。
一方で、このオーディションは、今年1月10日、25日、27日の3日間に渡って行われ、合わせて20人以上が受けたとみられている。全員がわいせつ被害に遭っている訳ではないという。しかし、すでに、他にも数件、同じような被害が確認されているとのこと。
調べに対して「私は一切黙秘します」と供述している吉岡容疑者。捜査一課は余罪についても調べを進めている。

(フジテレビ社会部 警視庁捜査一課担当 石竹爽馬)