「学校、図書館、児童福祉施設等から200メートル以内に暴力団事務所を開設及び運営してはならない」これは東京都の暴力団排除条例第22条。暴力団事務所の開設などを禁止する規定だが、今回、この条例に違反した疑いで暴力団のナンバー2の男らが逮捕された。

保育所のすぐそばに暴力団が

警視庁暴力団対策課に逮捕されたのは、暴力団「東声会」理事長・相馬雄二容疑者(57)と、53歳の韓国籍の運転手の男だ。暴排条例で禁止されているにもかかわらず、東京都の認証保育所からおよそ70メートルの場所に活動拠点を開設した疑いが持たれている。

逮捕された暴力団「東声会」理事長・相馬雄二容疑者(57)(12日 蒲田署)
この記事の画像(18枚)

場所は、JR蒲田駅近くの一角。相馬容疑者は、繁華街の飲食店などに対して、”みかじめ料”を要求するための拠点にしていたとみられる。ところが摘発の対象となったのは、古い木造の建物だった。さびれたシャッターがおろされ、一見、空き家かと見間違える”たたずまい”だ。

駅前の一等地に、ドーンと目立つ事務所を構える。そんな「ヤクザ映画」のような世界とは、ほど遠い雰囲気だ。なぜ、ここを拠点にする必要があったのか。東声会の置かれている現状に一つの答えがある。

とても暴力団の”拠点”とは思えない、さびれた雰囲気だ(12日 東京・大田区)

摘発逃れのため あえて”さびれた”建物

東声会は、構成員二十数人の、非常に規模の小さい暴力団だ。いわゆる”メジャー”どころの山口組、住吉会、稲川会とは違う。実は、捜査関係者によると、東声会は、2018年春ごろ、当時、構えていた事務所を、地域の暴排運動の影響で閉めざるを得なくなったという。

その後、事務所を持てない、言わば「家なき子」状態が続いていた。しかし、さすがに活動拠点が必要と考え、一見、”暴力団事務所”に見えない、さびれた建物を選んだという。外観と同様に、建物の中も、簡素だったとのこと。

暴力団の”拠点”と発覚しないよう、あえて、さびれた建物を選んだという。

調べに対して相馬容疑者は「組事務所ではありません」と容疑を否認しているが、摘発を逃れるために、”内”も”外”も、あえて、暴力団風にはしていなかった可能性があるという。ところが、それが逆に、怪しまれる結果となった。

相馬容疑者は、毎日のように、さびれたシャッターを開けて、活動拠点に出入りしていたようだ。黒塗りの車が、連日、建物の前に止められ、決してガラが良いとは言えない男たちの姿も目撃されていた。次第に、近所では「不審だ」と評判になったそうだ。

当然の展開と言えば、それまでだが、去年夏ごろ、警視庁に情報提供が寄せられ、今回の摘発につながったという。

調べに対して相馬容疑者は「組事務所ではありません」と容疑を否認している。

事務所は新しく作れない "ヤクザ"の現状

警視庁が、暴排条例22条を適用して検挙に至ったのは、今年に入り3件目。ある捜査幹部は「今のヤクザの現状をあわらしている」と指摘する。

暴力団にとって、なかなかシノギが得られない中、家賃が高い物件を借りるのは困難だ。また暴排の機運が高まっているため、新しい事務所を開設するのは難しいという。今回の事件は、暴力団が置かれた”現状”を物語っていると言える。

今回の事件について、ある捜査幹部は「今のヤクザの現状をあわらしている」と指摘する。
社会部
社会部
記事 616