25日の閉会式まで数日となった平昌五輪。北朝鮮は、女性ばかりの三池淵(サムジヨン)管弦楽団や応援団を韓国に送り、一部の競技で南北統一チームを実現。韓国に対する"微笑路線"を世界に印象付けた。

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北朝鮮の金正恩委員長の実妹で、朝鮮労働党中央委員会政治局員候補兼中央委員会宣伝扇動部第1副部長である金与正氏(参照:上写真左)が、平昌五輪開会式の9日、金正恩委員長の特使として親書を携えて、空路、訪韓した。

10日には金与正氏は、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長等とともに文在寅・韓国大統領はと会談。文大統領に早期の訪朝を要請した。

文大統領は、訪朝の「条件が整うよう努力する」と述べたが、北朝鮮の核・ミサイル問題、それに五輪期間中、延期された米韓合同演習に関する話は出なかったという。何故なのか。

北朝鮮は今年1月、健軍記念日を従来の4月25日から、唐突に2月8日に変更し、軍のパレードを実施。火星15型、14型等ICBM級弾道ミサイルの他に、新型の短距離弾道ミサイル6両、12発の姿もあった。
まるで、平昌五輪開会式の前にこれらのミサイルや装備を見せたかったかのようである。

韓国の有力紙、朝鮮日報によると、韓国の野党議員が20日、議会の非公開の会議でソン・ヨンム国防長官に五輪開会式前日の北朝鮮のパレードに出た新型弾道ミサイルについて質したところ、ソン長官は玄武2を開発した「韓国・国防科学技術研究所で玄武の技術流出の可能性について討議したが、ハッキングされたわけではない」と答えたという。

 米研究機関38NORTHによると、このミサイルはサイズや外観から、ロシアのイスカンデルを基礎に開発していると考えられるものの、韓国の玄武2型弾道ミサイル(参照:上写真)とも多くの特徴が一致する。
ソン長官も「北朝鮮のミサイルは、玄武の形をしているが誘導方法などは異なる」と答えたということで、韓国の防衛担当閣僚も「かたちは同じ」と認めたことになる。

朝鮮日報の記事は、玄武2型の原型に挙げられるロシアのイスカンデルのコピーの可能性も取り上げているが、韓国にとって玄武2型弾道ミサイルは、北朝鮮弾道ミサイルへの対抗策の切り札。昨年は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると、そのたびに6分以内に玄武2型を発射するということを繰り返し、いざという場合には北朝鮮の弾道ミサイルに反撃するための練度向上はもちろん、北朝鮮のミサイル発射前に発射装置を玄武2型で破壊する能力を示唆してきた。 

北朝鮮の新型ミサイルのベースがイスカンデル(参照:上写真)ならば、イスカンデルは、高度50㎞以下に抑えるデプレスド軌道で飛ばすことが出来る。これだと軌道が低いので、防御側のレーダーによる捕捉が容易ではなくなり、弾着までの時間も短くなる。飛距離も短くなるがソウルは38度線から40㎞から60㎞だから、十分、届く指呼の距離。

また、朝鮮日報の記事でソン長官は「ハッキングはない」と答弁したようだが、スパイ等、他の手段で盗まれたかどうかは、この記事からは分からない。もしも、そうなら、北朝鮮に筒抜けになっているのは玄武2型だけではないかもしれない。

韓国が平昌五輪で魅せられていたのは、『氷の微笑』だったのかもしれない。