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これは5月8日に撮影された映像。走行車線を猛スピードで走る黒い車のすぐ後ろをピッタリと付いて走る別の黒い車。後ろの車が車線変更すると、前の車もすかさず車線変更。

すると、後続車の目の前で衝突。後ろの車は左の壁にぶつかった後、右側の壁までバウンドし、ようやく停止しました。

東名高速で5年前、あおり運転をされた末に夫婦が死亡した事故をきっかけに、「あおり運転」は厳罰化。ドライブレコーダーを搭載する車も増える中、なぜ「あおり運転」はなくらないのでしょうか。「あおり運転」をしてしまう人の心のメカニズムを、めざまし8がわかるまで解説します。

「厳罰化」でもあおり運転なぜ減らない?心のメカニズム

罰則を厳しくしても、減ることのない「あおり運転」。なぜ、止めることができないのか、「心のメカニズム」について見ていきます。こうしたテーマを研究する分野を「交通心理学」といいます。めざまし8は交通心理学に詳しい、九州大学の志堂寺和則教授に話を聞きました。

まず、「交通心理学」とはどんな学問なのでしょうか。

九州大学 志堂寺和則教授:
いろんなものがあるんですけれども、基本的には交通事故をなくす、減らすということを目的として、ドライバーや、歩行者もそうなんですけれども、交通に関わる人たちの行動や心理を分析するという研究分野です。

あおり運転が社会問題になったのは、2017年東名高速道路での死亡事故でした。この事故で、懲役18年が求刑され、6月に判決が下されます。
これを契機に2020年からあおり運転そのものに対する「妨害運転罪」が創設されました。
例えば、車間距離の不保持や、他の車両の通行を妨害する目的での急ブレーキなどを行うと、一発で免許が取り消されたり、最大で懲役5年という重い罰則が罰則が科されます。
また、ドライブレコーダーの普及で、危険な運転をすると映像という動かぬ証拠が残る可能性が高まりました。

しかし、チューリッヒ保険の調べによると「 ”厳罰化”であおり運転は減少すると思うか?」という問いに対し、「減少すると思わない」という人がまだ一定数いることがわかります。

志堂寺教授によると、あおり運転には2つの種類があるといいます。1つ目が「道具的あおり」。これは前の車を車線変更させるなど、目的を達成するためにあおってしまう行為。この「道具的あおり」は厳罰化やドライブレコーダーの普及で減ってきています。
やっかいなのが2つ目、「衝動的あおり」。怒りやイライラ、感情にまかせて、ついあおり運転をしてしまうというもので、こちらは減らすのが難しいといいます。

九州大学 志堂寺和則教授:
「衝動的あおり運転」は、感情が関わっているというのが難しいところですね。運転場面だけでなく、日常の場面でもカーッと頭に血が上って、いらないことを言ってしまって「失敗した…」って反省することがあるんじゃないかと思います。
それと同じで、特に車の運転場面は、渋滞などでイライラすることもありますので、そういった感情を抑えることが難しい。それで今のような状況になってるのかなと思います。

では、どんな人があおり運転をしてしまうのでしょうか。

「あおり運転」をしてしまう人の傾向を分析

元々短気、気性が荒いという特徴がある人。また、データ上では男性の方が多いそうです。
普段温厚な人であっても、「時間に間に合わない」とか「ペースを乱された」という状況下では、少しの要因であおってしまうケースがあるそうです。

あおった人が乗っていた車の価格帯を調べてみると、最も多かったのは、500万円以上で、約4割。車の値段が下がっていくと、あおる割合は少なくなっていくという調査結果があります。
また、明星大学の藤井靖准教授の調査によると、400万円以上の車を運転する人は400万円未満の車を運転する人に比べて、あおり行為をする人が6.38倍増えるということです。

当然、車好きの人は高い車を、大切に乗ってはいるはずです。どんな人でも安全運転を心がけているとは思いますが、5月9日にこんな事故が起きてしまいました。

名古屋高速でのあおり運転の映像です。2台の車が車間距離を取らずに走行。後ろの車が追い越そうと車線変更をするも、前の車が進路をふさぎ、事故になってしまいました。この事故を起こした2台の車をよく見てみると、高級車のようにも見えます。車の価格と運転する人の心理には何か関係があるのでしょうか。

高級車が性格に影響?「攻撃性」に繋がる可能性も

”高級車”に乗ると性格に何か影響があるのか、カナダの研究によると、若い男性39人に2台の車を運転してもらいました。1つは一般的なファミリーカー。
もう1つはポルシェのオープンカー。すると、ポルシェの方が男性ホルモンの一種、テストステロンの値が高く出たのです。テストステロンは人間の攻撃性に関係していることが知られています。直接事故に繋がるかというとそうではありませんが、実際に高級車に乗っている方の声、本音を聞いてみると、

国産高級車所有者:
性能が良いから加速を見せたい、目立ちたいのかな

SUV所有者:
逆に高級車に乗っているのに、一般車にあおられて驚いた

高級車所有者:
他の車になめられたくない

車の種類や値段によって交通心理学的な影響はあるのでしょうか。

九州大学 志堂寺和則教授:
あると思います。いろんな車に乗られている方はわかるかもしれませんが、どういう車に乗るかによって、気持ちの高まりとか、そういったものが違ってくるんですね。あと、心理学一般で言われている話なんですけれども、例えば服装ですね。どんな服装にするかによってその時の気分、そういったものが変わってくる。心理学では「ドレス効果」っていうふうに言います。
車の場合も同じ事が起こっていて、どんな車を運転するかによってドライバーさんの気持ちが変わってくる。そういう影響が出てくると思います。

他にも、あおられる車の特徴というものが実はあるそうです。

「小さな車」や「白い車」はあおられやすい?

車種は軽自動車、コンパクトカーなど、半数以上が小さい車。色も特徴があります。ホワイト、シルバーなど白系が多い。なぜなのかというと、志堂寺教授曰く「”弱い”という印象を与えてしまうためあおり運転にあいやすい」ということです。

さらに「ハンドルを握ると人が変わる」などという言い方をすることがありますが、これには2つの特性があります。

1つは”匿名性”。車に乗っていると顔が見えないので大胆な行動に出やすい。2つ目は”武器効果”。攻撃を連想させるもの=車が手近にある、これがとっさのあおり運転に繋がってしまうのではないかということです。

なぜ、あおり運転をやめられないのでしょうか。

共同通信社によると、警察庁の調査で加害者は「進行を妨害された」、「割り込まれた」など被害者側の行為が原因であおってしまった、と主張する人が非常に多いのですが、実際に調べてみたところ、本当にあおった人が被害に遭っていたケースは半分にも満たないといいます。

九州大学 志堂寺和則教授:
あおり運転は自分が絶対正しいっていうふうに多くの方が思っているので減ることはないと思います

では、あおり運転はどうしたらなくせるのでしょうか。

専門家「きっかけ」を作らないことが大切 

日々進歩している技術。藤井准教授によると、運転手の感情の変化をAIが感知し、あおり運転を予防するシステムの研究が進んでいます。
イライラしているなと思った人に対しては色で示してくれる、落ち着く香りが出る、音楽が流れてくる、そういった技術も研究されているということです。

あおり運転に遭遇してしまったときの対処法はどうしたらよいのでしょうか。

九州大学 志堂寺和則教授:
まず、遭わないっていうのが大事だと思います。それはきっかけをつくらないということです。しっかりと周りを見て運転するということなんですけれども、それがまず大事です。どうしても遭ってしまったら、そういう状況からどうやったら脱出できるかを考える。状況次第なんですけれども、道路の端に寄るとか、人通りのあるところで駐車するとかそういう運転がいいと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」5月13日放送)

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