大阪府島本町(しまもとちょう)に、「ジェンダーギャップ」について教師と児童が一緒に考えてきた小学校がある。
議題にあがったのが、登下校の時にかぶる「黄色の帽子」だ。女の子はリボンのついたハット、男の子はキャップ。 性別で分けられ、選ぶことができないのだ。

 帽子は全員一緒とならないのか、あるいは、自由に選ぶことができないのか。身近に存在するジェンダーギャップに向き合った児童と教師の姿を取材した。

なんで違うの?選べないの? 人権教育の授業で生まれた気付き

大阪府の島本町立第一小学校を訪れると、5年生の人権教育の授業で「ジェンダー・性別によるギャップ」について話し合われていた。

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あるグループが注目したのは「男性と女性の賃金の差」だ。

児童:
ちょっと気になる。お金の量が違う(賃金差)と聞いて、調べてみようと思った

先生:
どう思った?

児童:
一緒にしたほうがいいなと

先生:
みんなが大人になった時に差があったらどう?

児童:
嫌だ。お金もらえないと生活も厳しくなるし

先生:
じゃあ、どうしたらいいか、みんななりの考えを書いてみて

一方別のグループでは、身近なことに注目した。登下校の時にかぶる「黄色の帽子」だ。

島本町の児童は入学時に、ライオンズクラブから寄贈された交通安全のための帽子を受け取る。
女の子はリボンのついたハット、男の子はキャップ。性別で分けられ、選ぶことができないことを、ジェンダーギャップと受け止めたようだ。

156カ国中120位…大きな日本の男女差

世界の国々の男女の平等さを示す「ジェンダーギャップ指数」の順位では、日本は156カ国中120位。男女の差がとても大きい状況だ。

子どもの日常にも「女の子は赤やピンク」「男の子は青や黒」などの、性別での決め付けが色濃く残っている。 

人権担当 近藤紗希先生:
社会の課題の中で、偏見や思い込みといった決め付けもたくさんあると思うんです。小学生のうちから、おかしいなって気付ける力を付けていきたいと考えています

児童らが町議会で提案 町長「盲点だったとはっと気づかされた」

2021年12月、5年生の児童たちは、島本町議会の議場にいた。授業で出た帽子についての意見などを町長に提案することになった。

児童たち:
1つ目の提案は、男女で分けるのではなく、全員が同じ帽子をかぶるというものです。2つ目の提案は、現在配布されている帽子を自由に選べるようにするというものです。周りの目を気にして、好きな帽子をかぶることができない人がいるかもしれない。
どんな帽子をかぶっていても受け入れられる社会にしていくことで、このことは解決できると考えています。島本町のジェンダーギャップを少しでもなくすために、ご検討どうぞよろしくお願いします

島本町 山田紘平町長:
自由に選べることは大事なことだと私も考えています。
今の皆さんはいろいろなカラーのランドセルがあったりして、自由に自分で選んでいける。大変素晴らしいことだなと私も考えていますし、逆に黄色の帽子をこのように男女別で配っていたことになかなか気付かなかった。盲点だったとはっと皆さんに気付かされた思いがあります

提案を終えた児童たち。大役を果たしてほっとした笑顔だ。

児童たち:
とっても緊張しました。でも、自分が思っていることとか、みんなのことを代表して言えて良かったと思います。
1年生の頃は帽子が男子と女子で分かれているって当たり前で、逆に見分けやすくていいなとか思っていたけど、いろんなことを知ることによって、いろんなことが見えてくるのかなと思いました

自分で選んだ帽子 “当たり前”を変える第一歩

町議会での提案から4カ月後。小学校の入学式の日を迎えた。

子どもたちの提案がきっかけとなり、島本町の4つの小学校全てで帽子を選べるようになり、第一小学校にはいなかったが、町内では、これまでと違う選択をした新入生が6人いた。

人権担当 近藤紗希先生:
6人が今までの性別で渡されていたものとは逆のものを選んでいる。そう感じていた子もいたんだなっていうのが一番かな。これじゃなくて、違うものを選びたいって思ってた子がいた。今まではそのまま渡していたので、希望を聞くことって大切かなって思いました

新入生の保護者:
同じ環境でいろいろな子がいて、自由に自然に暮らせるのが一番だなと思うので、大歓迎だと思います。自由でいい傾向かなと思いました。
この子はジェンダーとか関係なしに、顔の形でハットタイプの方が似合うかなと思ってたんですけど、(本人が)キャップがいいということで、こっちを。特に抵抗なく選ばせてもらいました

帽子を自分で選ぶこと。小さなことだが、これが子どもたちの生き方を変える、第一歩になるはずだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月25日放送)

関西テレビ
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